29-98 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 上層部の動きは速い
そして、その日の夜はそのまま会社の仮眠室に泊まり、時美さんとリサイクル工場に戻ることにした。そして・・・緊迫のダンジョン出張が終わり、あの山奥の工場が、懐かしく感じてしまった。
「でもまあ…帰ってこれた。お土産も持ってこれたし、」
「…あんたが羨ましいよ。レベルアップできる人間はね。」
ついでに会社からは私が来るまで運転してきた。が、社長は念入りに盗聴のチェックをしていたのを覚えている。色々警戒しているようだ。
「でもまあ…。どうなりますかね?」
「むしろダンジョンで強い人間ができれば、自衛隊に対策ができるかもしれん、今の自衛隊もダンジョン庁も行動に理解ができない。ダンジョン庁の責任解体もね。だから…しばらくそっちの事はそっちに任せる。私はマークされてると思う。後は頼んだ。」
そう言うと時美さんを地方局の近くのアパートに。そして私は工場に帰ってきた。
「おかえり、出張。どうだったよ。」
「色々壮絶で、エルマさんは?」
「隠し部屋で待ってる。なんか昨日あったらしく、緊張していた。」
私と楢原、トッシーがダンジョンに入ると、隠し部屋のドアが開いていて私が入るとエルマさんが緊張した顔で椅子に座っていた。
『聞いたぞ。これが上層部の手紙だ。今、上層部は激動だ。』
『こちらをダンジョンでお受け取り下さい。』
私は時美さんに言われてもって来た、例の翻訳ボックスと後は手紙だ。
『分かった、届ける。』
エルマさんが受け取ると、そのまま部屋の片隅に置いた。
「あれについて何か知ってるのか?」
『上層部の連絡によると、君たちが行った確か”向島ダンジョン”だったかな。あそこはあの箱を作ったダンジョンマスターだ。しかもあれはその最高幹部だ。言うなら、魔王がそこにいたんだ。』
その言葉に私は背筋が凍る思いだった。
『そして、この件で上層部では会議が行われることになり、今後の体制に変更が加えられる。そして聞いた。かなり高額な物を献上したと。』
「そう思いますが…。」
というか、あの時の聴き取れないどちらかの何かだった?って事?世界は狭いな。
『分かっている。無理は言わない。そして、現在上層部では和平を進めるものと闘争を進めるもので2分化されている。私の所は無理だが向島は決めかねるという判断になった。』
「どういう事だ?」
流石に、口から言葉が漏れてしまう。
『普通のダンジョンを運営にするには攻略させるのが一番だ。しかもダンマスは顔を見せない方がいい。だが、今回の報告書に会った”核爆弾”とやらの爆発は勇者のレーザーをしのぐほどの威力があるという。そうなると、ダンジョンは多大な損失が免れない。それを躊躇なく行うなら攻略させるよりダンジョンを消滅させる方向にかじを切りかねない。そう考えたわけだ。』
多大な損失…核兵器でもそう言える何かがあるのか?ダンジョンには
「って事は。あんたらも人間を殺す口か?」
「おい!楢原!」
あまりの物言いに私はつい…。
『いや、それは関係ない。私たちが君たちを切れば大方私たちダンジョンは何もできないまま餓死するだろうよ。意外と脆弱なんだよ。ダンジョンは。だからこそ…君たちとの絆を大切にしたい。』
「そう言えば聞きたかった。何でダンジョンでは戦闘や人間が必要で、そう言うのならタダで物を交換してもいいんじゃねえのか?」
『それは違う。私達にもモンスターやダンジョンの壁、そして宝箱やドロップ品は全て君たち挑戦者が来てくれたことによる力を使って作っている。だから来てくれないと少ない物資で賄わねばならず戦闘や魔法
ごみなど、様々な人間の行為の過程で捨てられるものがダンジョンの栄養となる。それにだ、今までもらった数多くの貢ぎ物は、モンスターの数にして数万…いや数十万体以上の価値がある。そして私達はそれを直接交換できる立場にある。という事だ。』
そうなると、ダンジョンに挑んで戦闘とかしない限りダンジョンが深くまで行かないのか。
「こうしてみると俺達は何か、人類の敵に思えてきたぜ。そう思わないか?ダンジョンを育ててるんだぜ?」
「ガチそう思ったわ。」
そう、私達のやっている事はもしかして…大破壊の予兆かもしれない。だけど…私達は世相がもう…裏切れば死という状況になってしまったのだ。引き返すことはもうできないのだろう。




