29-71 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 信頼の肩書き
その日の夜時美さんと、隣の家にあいさつに向かった。そしてダンジョン庁であること、そしてあれが”認知されているが、公開されていないダンジョン”で出来れば支援して欲しい。という話だ。旦那と奥さんの二人はなやんでいた。
「急に言われても、確かダンジョンって危険やろ?」
「ですけどというよりだからこそ。せめて危険性を知っていただきたいのです。高林さん。」
「危険性。」
流石時美さんは口がとてもうまかった。
「で、現在秘密裏に防衛施設を建設しています。」
「防衛施設ですか?」
「ですが、ほら、ニュースでもやってるダンジョン開放ってあれ。」
テレビ含めメディアはダンジョンを一般開放する方向に世論を操作していた。それを聞いた高林夫妻の顔が曇る。
「今は…未公開じゃろ?」
「はい。どちらに傾くか、政府で検討中でして。」
「ここまでの道路を作っての開拓はきついじゃろ。」
「ですね。ですので、ここはどちらにしろ、公開しない方向でまとめるつもりです。」
「だとすると、兄貴の家にもいかないといけないのか。」
「お兄さんは確かマタギですよね。」
「そうだな。」
「出来れば一緒に行きませんか?」
「あ、ああ、行こう、話してもらう。色々な。」
時美さんと高林夫妻は私達を置いてもう一件に行ってしまった。
「でもあれ何の意味?開拓はきついって?」
残った楢原を私は家に帰って、麦茶を入れて飲んでいた。この辺湧水がかなり美味しくて麦茶作ると市販よりうまい、後料理もうまくなるけど、面倒でめったに作ってない。材料が無いんだ。
「ああ、俺なんか趣味でツーリングするからよ。よく山奥行くんだ。んで、そこで謎の博物館とかそう言うのがあるんだ、山奥に。村おこし用の箱モノって奴だ。」
「ふむ。」
「で、大抵そう言うのってハズレというか、人気のなさでダメなんだけどよ。そこに行く道路だけ立派で…人が年間数人しか通らないなんて結構あるんだよ。」
「そうなんだ。」
「かといって、道路が広くなっても何もないから、ここのダンジョンに道路通しても…大体車で1,2時間?こねぇだろ?って事だ。」
「あ、」
「ここを住宅開発するには…大方田んぼも畑も斜面なうえに現在の土地の所有者分かんねえから無理に近いと思う、だからダンジョンで人を集めるのは無理って言ってるんだ。」
「あ、そういう。」
グイッと楢原は麦茶をあおる。
「で、向こうも大方…先祖代々の土地だ。離れたくないだろう。どういう結論にも取っていくにしても、ダンジョンがある事はいずれ話さないと騒動だったんだろう。」
「だろうね、私でも聞いたら逃げるわ。普通。」
だってモンスターは怖いからね。




