29-68 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 元からここはやばかった。
それからの三日間、私達は仕事をする気が無くなった。いや、死ぬかもと言われて怖いだけで、頭が追い付かない。一応隠し部屋は見に行った。手紙も無かったからだ。
「大丈夫です?」
「バレなきゃいいとは考えますけど…話が大きすぎて…気晴らしでこれやってるんですよ。」
と言っていつもの作業をするんだけど…本気で、どうしたらいいの?これ。そして遠目から車の音が聞こえてきて、いつのも車の音だから楢原だ。
「よぉ…いろいろ受け取ってきたぞ。んで、今夜早速行くから。」
「あんたはガチ怖くないの?」
「…西川は違うかもしれねえが、科学者って…意外と死ぬぞ。すぐに。」
「え?」
「まあ交通事故よりは死なねぇが、利権もうるさいし、そうでないなら、一生棒に振ることも多い。特に相場ケミカルは結構法律すれすれの駆け込み寺だからよ。そう言うので脅してくる馬鹿多いんだわ。」
相場ケミカルの仕事は法人向けの化学物質の販売である。表向きは、いや、裏も一緒なんだが企業の多くは急に○○が高額になったり○○が手に入らないなんて、結構起きる。そこでうちらに電話がかかり、その物質を調達や作成をして一時的にギリギリの高額で売る。それが仕事だ。その為にうちの研究員は特許関連の解析を行い、ぎりぎりのラインで物質を組み立て、最悪工場まで組み替えて建築して売る。特に公共事業とかの”一回しかやらない仕事”への必要化学物質の受注とかそう言いう特殊受注のスペシャリストだ。但し、時限の形にしているし結構恨まれる。もっと安く売ってくれればとか、もっと前からあんたらが
やればよかったとかだ。だが元々この会社は”大学教授”などへの実験用化学物質の生成販売などをメインにしようとした社長の会社だ。だが、非常に恨まれる。当然相手先はこっちが知らないと思って詐欺もガンガン仕掛けてくる。法人向けは常に儲けが大きい分”知識も知恵も必要で、決定までが非常に遅い”だ。そこで出てくるのが楢原みたいな科学知識のある営業だ。基本学者は交渉とかが苦手で楢原はそう言う意味では
会社のエースだ。それをここに置いているだけ、社長がいかにここに力を入れているか分かる。
「だからよ、こういう事はいつか起こると思った。この会社ならな。」
「あんた、ガチおかしくない?」
「そのつもりはない。まあ、それがこの件だったって事だ。」
「でもさ、ま、いいか。」
混乱で頭を振る。
「それは。あっちのお偉いさんの方が覚悟してると思うぜ。出向組で地位が低いらしいからな。ダンジョン庁自身は相当人数も予算もない。がさらにダンジョン庁はなぜかいまは総務省傘下でしかも防衛省がポストを握っている。」
この裏には当然警察庁なども関わる。そう言う…場所だ。結構今はダンジョンの危機が無いとはいえ一度は国家肝いりで作った省庁なので、お情けで残った感じだ。そしてこのダンジョン騒動である。急に降ってわいた仕事にサボり癖のある上層部は慌てた。そして何より10か所以上のダンジョンに、そして海外にもダンジョンができたことによりダンジョンの動向は国際問題化したらしい。但し、危険地帯のダンジョンは駆逐された…事になっている。そしてそれを”ダンジョン側”が対策を建てたうえで次に挑むことは時美さんだけが知っているが、10年のダンジョン庁での生え抜きの職員は数少なく時美のその数少ない一人だが、今後は
分からない。最悪ダンジョン庁長官は急に降ってわいたスキャンダルで挿げ替えられるかもしれないというのが…現在のダンジョン庁の噂だった、特に生え抜きダンジョン庁の職員の最大が中央のダンジョン対策本部の部長でそれ以上は他の省庁からのスパイだ。そして、福岡ダンジョンみたいな利権のある会社にしかダンジョンの権利を渡さないのは目に見えている。
「でもさ、警備会社でしょ、安全じゃないの?」
「問題は、警備会社って…○○派とかって多いんだと。明言は避けたけど外国とかな。情報は統制してたけど大阪とかかなり危険だったらしい。特にスパイ関連が。だから、警備会社でもちゃんと全部チェックしたらしい。その上で通す、通さないだ。だが、大きい所はノーチェックとで通さざる負えないって事になっていろいろ苦労したと上司から聞いたんだと。んで、ダンジョン庁の官僚はその綱引きで忙しいらしい。ダンジョンの利権って奴だ。何より前も国民に開放せよって声が大きかったからな。そうなると、何処の地元を開放させ、何処を潰すかとか調整がいくらやってもまとまらないそうだ。大阪のあれを思い出した奴が多いからな。」
大阪のダンジョンは周囲にダンジョン観光地ができダンジョン関連だけで相当な利益が出た。
「が、そんな中でも、交通の悪い箇所は潰す案が出ているそうだ。ダンジョンは海外で潰せたって話だからな。一番奥のボスを…大方あのエルフを倒せればダンジョンは潰せる。そんな状態でこんな山奥のダンジョンどう考えても潰す一択になるだろ。」
「あ・・・。」
「交渉可能に価値を見出す…と考えているのは馬鹿だと言っていた。敵にいてくれた方が、ごみを捨てるでもちょうどいいと考える奴は多い。が、問題は…俺も気が付かなかったが、ダンジョンが”消滅させたものを
作る機能があるなら、銃の弾丸や銃は致命的になりうる。ダンジョン同士の横のつながりはないがその代わりに連中は”魔法”という武器もある。携行必要のない銃だ。はっきり言って失踪者のいるダンジョンが出た以上そのダンジョンは銃を持って襲ってくるとみているらしい。そしてステータスのギミックが分かると、ステータスが育てばそいつには”銃は効かなくなる”恐れがある。…いずれ自衛隊はステータスを育てないと全滅しうる。がそれを公表するかは…プライドの高いあの連中では無理で、もっと上の判断が欲しい。だからここを公開すれば…暗にダンジョンを破壊されて終わる可能性がある。が、物を作れるというダンジョンを放置するのは利益が無い。」
「現状ガチ悪くない?」
「時々あるんだ、他の状況がこっちに不味いって時がな。それが今回だ。ダンジョン利権とダンジョン町おこし…それを目論む国家。最悪だな。」
…確かに可能性あるわ。 でも問題もある、それがこの件、いやな話犯罪に手を貸してくれって近所に頼むようなものだ。
「私たちが説得しても無駄じゃない?なんていえば説得できる?」
「そう言う事か?」
現代人のボッチ気質をガチ舐めないでほしい。98%失敗するわ。2%手土産持って行って運が良ければかな。
「確かに連絡は…後でしておく。じゃ、どうする?」
「回答待ち。そして…今後の体制次第だな。」




