29-66 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 家に来る?
「あたしの人脈だとここは手に余る。むしろ隠した方がいい。そしてあとで私の方も質問状…今から書くわ。んで、その間に対価用意しといて。」
「あ、はい。」
かなり言葉使いが荒いが。それでもこっちな
「おかん。」
「いや、あんたが一番厄ネタだから。そればれたら、ガチでダンジョンの見方変る。そして馬鹿が押し寄せるから。」
トッシー相手でさえ時美さんは冷たく当たっているが…元々こういう人なんだろうな。その間に私は楢原と車で出かけることになった。いや…。
「あたしも付いていく。出す物みたい。この書き方だと大方…ダンジョン内に捨てたものを”コピー”する力がダンジョンにある。だから査察しないと不味い。最悪あんたら、ゴブリンに銃殺されるぞ。」
「え?じゃあ、武器も?」
「数とか条件揃えば武装するぞこれ。だから一緒に行くわ。後ろ乗るから。」
「あ、はい。」
本当にこの人、ガチで行動力在り過ぎるわ。
本来楢原と作戦会議したいところではあるが、時美さんのせいで、お互い無言で車を走らせた。
「ほんと書類良くできてるわ。あんたら部下に欲しいくらいだわ。家に来る?」
唐突に言われてびっくりした。
「いや、できるんですか?」
「ダンジョン庁には民間人雇用権限あるんよ。本来は事務職とかだけだけど、ダンジョン庁は備えるとかいう程度のお飾りだから地方局にいるのは課長と部長と局長合わせて7人だけよ。」
すくな!
「ここまでのレポ書けるなら十分高給で雇うよ。」
「いや、」
「分かる、今考えてる、色々作戦を、今回は運命の転機で…一歩間違えれば死ぬから。」
「・・・え?」
「だって、ばれれば逮捕…じゃなくてグサッてくるかもしれん案件よ、どうしようもない環境以外なら。…絶対非公開だから。これ。」
「そんなにですか?」
「味方は最低でもいないから。私は中央に入れないほどのドロップ組よ。上からすれば人権ないから。私のね。」
「…怖いですね。」
流石にこの言い方されると怖い。ガチ深淵を見てる気分だ。
「派閥でも地方に落ちた奴拾う馬鹿いないし、利権あっても奪う事しか考えないから。」
「怖いですね」
そのこと以外思いつかなかった。
「だから考える。どうするか。あのお東陶がうまく立ち回ってくれて助かったけど、大方こっちに素直に知らせても、あそこは潰すべく自衛隊送って終わりだわ。事実知らんままね。」
「…最悪ですね。」
「かといって、今はいいけど規模が大きくなると、大方このレポートだと”維持費”がいつか払えなくなる。そのカーブに当たったら最後…向こうが牙をむくことだけは確実だわ。」
「…え?」
「今は友好的でも信用しちゃいけない。そう思わないと…営業なんてできないよ。」
「でも、そんなんなら交渉できるあそこだけ残すとか考えません?」
「いや、それもない。この書き方だと何らかで、お互いのダンジョンがどうなったか分かってる。そして対策を建ててくる。どんどん手ごわくなる。って事だ。そして言葉が分かる奴がいる限りこっちの言語秘匿性の優位はない。最悪だ。じゃあ潰さないというのもまずい。取捨択一で動くしかない。この質問状でいいか。で、おたからはどうするの?」
「リサイクルショップでジャンク品買うつもりです。まえにうちのごみ渡したら好評だったので、」
「まいっか、適当に買って帰ろ?」
「は、はい。」
これ、私たちが思ったより危険な橋を渡ったのは理解できた。死ぬかもしれないとは…考えなかった。




