29-44 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 死ぬかそれをやるかしか選択肢はない
おばあちゃんはこっちに気を使ってくれているのか。痛い顔をしながら
「すいませんねぇ。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「でも、お仕事中でしょ?」
「一週間に一度来るか来ないかの場所ですよ。それに…町でダンジョン出来たでしょ、だから…」
「なんかあったの?」
「リサイクル工場はなくなりそうなんです。今はまだ存続していますけど、」
「ダンジョンねぇ…あの事は凄かったけど今回は大量なんでしょ、怖いわ。」
「スタンピード怖いですね。」
そう言ってもおばあちゃん、近くにダンジョンありますよとは言えない。
「そう考えると息子夫婦にこっちに来る話をした方がいいかねぇ‥。」
「来てくれますか?」
「分からないねぇ。」
私なら…大方利便性天秤にかけて…死ぬ直前までそこにいると思う。それ位山奥って人も居なけりゃ全部自分でやらないといけないのが負担なんだ。燃料も、何もかも、私達は太陽光発電パネルとか雨水タンク、後は沢の水を浄化装置で浄化して軽減しているけど、ここでな最低でも職業選択の自由なんてない。やらなきゃ死ぬ。そんな環境だ。それに比べ、たとえスタンピードでモンスターに襲われる可能性を考えても…きっとあらゆる自由がある都会の方が生きやすい。実際おばあちゃんも病院に向かうに車で2時間はかかる山奥なんだ。利便性を天秤に抱えて、ここに住むことは無いと思う。きっと。
「でもねえ…来て欲しいと思うよ。ここはいい土地だからね。」
「でも…。」
「西川ちゃんは悪くないと思うよ。でもね、ちょっと前の家主さんが…おじいちゃんは…羨ましかったんだよ、だから…許せなかった。」
「何でです?」
「山奥の生活は…そして徐々に都会に去っていく皆を…”逃げた”って思うんだ。」
「逃げた…ですか?」
「ああ、良くも悪くも何もないから…人がいなくなればどんどん不自由になる。だから…逃げた隣のおじいちゃんが羨ましいのさ。」
「なら…おばあちゃんも都会に引っ越せば?」
「…それはきっとしないね。だって…息子が生活した、息子たちがいたあの家は捨てられないよ。」
そこで言葉が止まってしまった。愛着…私には縁のない言葉だった。




