6-42 ナッツバトル VSオーガ
それからの日々は凄い濃密だった。ナオが去った後すぐに、本当は誰もこれないはずの魔界の入り口から3人の女性が現れナオの名前を叫んでいた。で、その傍らではヨミ猫に化け…。こっそり
俺の使い魔の猫を取り込んでいた。なぜかその時だけは、猫が俺の命令を聞かなかったが…姿は一緒だった。そして、南の所に戻ると、王たちは捕まり…。ギルマスの人質の解放と条件で”偉業制度”は廃止され、銀級は試験。金級は今までの偉業カウントの一個分でよくなって、ついでに王様かギルマスのうち二人の推薦状でもOKとなった。しかも、魔王に挑む基準は金が一人いれば良いに変更された。これに伴い、魔王軍と聖女は和解不可侵条約を結んだ。流石にここまでの騒ぎを起こして即魔王軍入りではおかしいとなったのだ。がこれに伴い”南”は魔王軍に遊びに来れる立場となったのだ。そして俺たちは。
「まさか本当の条件が”魔王を倒した後”国王”と”勇者”がパレードを行い、”神像”の前で祈りを捧げてから”寝る”とは思わなかった。そりゃあ、偉業制度じゃ重すぎる。本来よりひどい。」
「だなあ…でもさ…。最近解放されたんだろ?ここ、運がいいぜ…。」
今のシャラは”神の牛乳効果”でしゃべれる状態だが、まあ分からんでもない。あの後モートリアの王は即座に聖王国に降伏。そのまま国を全部売り飛ばした。勇者ごと。というのもモートリア
王は勇者をかき集めたものの、やる気の関係で使い物にならず、しかも数だけが増え、市場買い付けの負債が国を圧迫していた。そして、それ立て直し不可の領域まで来てたらしい。で、名案を
探していたところ出てきたのが聖王国だったらしい。その為即座に売却され、モートリア王配置領地を担保されただけの閑職に追いやられ、その国政を終えた。そしてそこにいた勇者14名は聖女
”の勇者解放令でそのまま市民として、聖王国に住むことになった。場合によっては”貴族”で抱えるという。当然貴族がある、
「しゅべて、あの魔王の手の平ってりゃつ。」
そして、もう一つ変わったのがギルドだ。強硬派だったカラムがこの騒ぎで失脚し、姿を消した。そして副ギルマスだったパリムがその地位に就いた。この人は温厚で、…あまり騒動を好まないらしい…。まあ、あの過激なやつよりはましだろう。ただ、混乱は続くとみてる。後、聞いた話だと、魔王軍はこの騒動に”声明文”を出し、聖女と条約を結んで、和解した事。また、ダンマス弾圧のつもりはなかった事。そして、ランキング妨害の要因である。楽園を従属合併し、ランキングを活性化させたこと。それに伴い謝罪のセール(通称詫びセール)を行い、SNSを正常化させた。らしい…何か生々しいな…。
「で、ここでいいのか。」
アリの巣上に張り巡らせた鉱山ダンジョンの奥に行くと、人が全くよらない部屋が…そこにあった。
「まあね、あたしも担当たったからわかる。扉は必ず同じになってる。出ないとわからなくなる。が、各自、試練となる程度には隠してある。」
ヨミはそう言うと、扉を開く。そこには巨大なオーガと、ゴブリンの群れがいた。通用”モンハウ部屋”である。
「そうか。」
「だけどね、それは私には効かないのさ。探せるからね…。でも戦闘は流石に私が出ると場違いになる。任せた。」
「おうよ!」
その言葉に俺はハーリス設計の南製作の”聖銃シングルプリッツ”をぶっ放す。これは、ハーリスが銃がこの世界に無いのに銃技があるのはおかしいといって作った設計図を俺と、ハーリスが設計。そして、それを南が”魔力変換(聖のコイン入り)”で作ったものだ。ついでに設計は普通の物理弾だ。…魔法の風を圧縮して打つタイプの銃で弾はダークボックス経由でシリンダー内に即座に転送される。で、ちゃんとライフリング処理とかを入れ火力を増すようになっている…コルトパイソン張りの大型銃だ。このブリッツは…こいつに玉が一発しか入らない事という意味だ。ただ、魔法で弾込めする前提の銃なので、シリンダーに継ぎ目がなく本来は少しは減衰するはずの威力が全く損なわれないという意味ではスナイパーライフルもしのぐ威力となっている、本来ならすさまじい反動があるはずなのだが、スキル持ちの俺にはまったく感じない。その為…撃つと火薬の爆発音はしないが、空気のすさまじい炸裂音がする。ついでに銃身には聖属性が付いており、というかこれ聖属性なるものはこの世界に無いので”魔法に対抗可能”という付属効果らしい。怖い事に反動さえほぼないならこれ…連射可能なのだ、弾さえあれば。で、それは俺が”魔力変換”で作ってぶっ放してる。その轟音が連続で部屋に響き渡り…。それが終わるころにはオーガを含むすべては砕け散っていた。
「すげえな…。」
「実際おっさんもつええな…。」
実際ナオが去った後…南の先生という”教授”に戦闘のコツを教わり、ついでに酒も一緒に飲み…でここにいる。その時南に魔法を教わっていたのがシャラだった。
すぐ寝て、すぐ食べでを繰り返しつつ、空いた時間に魔法訓練。そして、暇があれば座学と少しの期間だがかなりの成長を遂げた。今現在世界最強の3歳児ではあると思う。
「いや、修行の成果って奴だ。」
実際ヨミに聞いたところによると、あの使い魔、今までの研究をもとに作られた”世界最強”製造できる強さだったらしく。で、それで育った俺とシャラはあり得ない強さになっていたらしい、らしいが重なるのは、実感がわかないからださて、このモンハウ部屋を片付けて…。
「これでラストか?」
「だな…。さて…。」
全員が、がさがさと、この部屋と探索していく。この部屋の奥こそ、魔王部屋への通路なのだ。ただ、一応礼儀で、お互い入場条件は知らない。但し入れないというのはダメになっている。
勝たせる必要があるからなんだが…。
「どう見てもこの部屋…洞窟なんだよな…。」
そう、この鉱山から降りる道にできた部屋はまるで詰所であり、ただ洞窟を掘っただけである。その中に不自然に固まってゴブリンとオーガがいたのである。これの情報自体は実は”この鉱山で魔石発掘していた勇者たち”から聞いたもので…・この部屋だけモンスターが固定で枠うえに鉱石がないので、まずい部屋として認識されていた。当然”魔王”がここにいる、ってわかっていれば…。ん?
「ちょっと思ったことがあってさ、いいかな。」
と言うと、南からもらってきた”ダミーコア”を掲げる。ついでに魔王城入場条件は”ダミーコアでいいので、コアをドアの窪地にはめる”である、これも実はギルド提示内容より相当優しく、本来ダンジョンを討伐する必要性もない。まあ、ギルドはやり過ぎたんだと思うがな…。で…この球を持ったまま部屋を歩いてみる…。
「やっぱり…。」
少し歩くと、壁際の岩がずれ始め…奥の通路が開いていく。条件を満たせば自動であくシステムだったのだ。地下に行く階段だ…。そのまま俺たちは地下に下りていく。そこは…
「村?」
「はい、ここに初めて来ていただいて感謝しています。」
声のほうを見ると、少年が二人いる。一人は金髪で何も持っていない、もう一人は黒髪で大きな刀を持っている。
「リーメ。」
ヨミは金髪の少年の方を見て驚いているようだ。慌てて目を伏せ、変身をこっそり行った。
「はい。鬼ちゃんから聞いて。リューネさんに送ってもらいました。」
「こいつは…。」
「ダンジョンマスター。魔王軍のダンジョンマスターだ。といえばいいかな。」
ヨミの歯切れが悪い、顔も合わせようとしなかった。
「で俺が魔王担当だ。で、今回は本来魔王部屋でやるんだが。相棒が歓迎したいって事で、今回はプライベートエリアの向こうにしてある。」
「プライベートエリア?」
「ああ、ダンマスの多くはダンジョンに必ず”プライベートエリア”を持つ、家って奴だな。こっちだ。」
すごい牧歌的な村だな…村人もいる…。そういえば南は現代風豪邸と平原だったな…。
「元々ここは普通の村だったんですよ。生きていけなくて、僕たちは自衛でダンジョンしてるんです。南さんに聞いて。いや、実はあなたが初めてなんですよ。」
「なにが?」
「国家にもよらず、魔王討伐をする、そして、たどり着いたのは。大抵魔王城の誰かが先導してきます。」
「ヨミがいるじゃねえか?」
「いえ、彼女はほとんど何もしなかったはずですよ。そして、それが嬉しい。」
「なんで?」
「実は、ここで魔石鉱山していた時から、誰もここに来なかった。やっと…もう4年ですか…。やっと僕たちもネルさんに”ダンジョンに人が来たからちょっと行ってくる。”って言えたんです。」
「つれぇな。」
4年も待ったのか。
「だから嬉しくて。ここは魔王城みたく人気はないですからね…。人は来るんですけどね…。ここまでは来ない。さて、母さんが今日は手をかけて食事を作ってくれました。いがかです?」
「そうだな…俺としては覚悟がある、だからそれは戦った後でいいか?」
「分かりました。では…。」




