1-16 村に入って、女の子と出会った話
「おめえは何やってるだ?」
突然の声に後ろを向く…髭がボーボーのおじさんがいる。
「あ、あの・・・。」
恐怖で身がすくむ、日本において、髭がボーボーのおっさんと言うとホームレスとか言う、無秩序者しかないない。何をされるかわからない。
「おらが村に何しにきただ?」
「え、あの、それ、それは…。」
勇気だせ!僕!決めてきたじゃないか、村の様子をマップで見た時から!
「つ、追放、追放されて今、今まで、彷徨って…彷徨ってきました。」
原始時代がどうかとかわからないが、教科書で見た気がするし、ドキュメント記事とかで、昔のころは村から追放されて彷徨う人が多いとか聞いたことがある。犯罪者のことが多いが…エレノアは
うまく隠れたようだ。ただおっさんの目は冷たい。
「うちは人手が足りない…村長に聞いてみる。」
そう言うと僕は手を引きずられ、村の中に入っていった。
「お前か、追放者というのは?」
村長は白いひげを蓄えたおじいちゃんでソンチョーという名前だった。昔から村長なのだろうか?まあいい…。土を作って作られた屋根に木の壁が覆ってる感じだったこの建物は寒くなさそうだった。部屋の真ん中の焚火の跡が原始人っぽかった。
「はい。」
「うちでは人が足りん、行く所がないなら、家にいないか?しばらくでもいい。」
「はい、お願いします。」
二つ返事で頷いた。これで文明的な生活ができる。
「ネル。お前のところやる。色々教えてやれ。」
「はい。」
返事をしたのは…女の子だよな…。毛皮の服に毛皮のマントという…僕よりはきっといいであろう服の持ち主。いいも悪いもなく、細かった。
「こっち。」
そう言うと女の子は村長の家から出ていった。僕も慌ててついていく.
「ここ…暮らしていい。私も住んでる。」
そう言って連れてこられたのは、テントみたいな一室しかないそんな家だった。ついでに必要品は全部壁の木に立てかけてあった。布団は三つあるみたいだが、毛皮の毛布がメインだろう。敷くのもあるが…。
「これ、使う。」
そう言うと、一抱えもある藁のこれあれか、有名アニメで見た事ある藁の布団か。すげー。
「うん。」
「後、おなかすいてるだろうからちょっと多めに食事貰ってくるね…。」
そう言うとメルは外に走っていった。ええ子や。
「おはよう。」
「おはよう。」
寝起きに何をするでもなく初めてぐっすり寝れた気がした。人がいるところで寝たのは久々だった。女の子と一緒だった件は…考える間もなく寝た。
「そういえばお父さんは?」
「…いない、狩りで死んだ。」
その場を重い空気が覆う。
「かかも、病でなくなった。私は一人、」
この年で一人か…。
「村のみんな、木を切る、木の実取る、獲物捕まえる。」
やっぱりどう聞いても原始時代のあれだ。
「これ食べる、」
そう言うと、部屋の真ん中に置かれた囲炉裏にかけてあったなべから何かを掬っている、陶器だろうか、あれは。木のスプーンと陶器。
「これはどうしたの?」
「木の実のスープ。」
中にはいろいろ身が入ったスープだろうな、あと器は木だった、文明的とは言えないが…それでも…旨い。
「おいしい?」
「おいしい。」
ここ2週間ほどあの妙に塩辛い肉入りスープだったから、この木の実のスープだけどうまく感じる。
「どうする?」
「何が?」
「お前何する?」
今は少し疲労もある、山の中は緊張したし、蜘蛛の件もある、あれダンジョンのボスとかにしてみるかな…。でも建物内だとあれ、何の役にも立たなさそう…。後昆虫か…。
「今までの旅の疲れがあるから、少し休ませて。」
「分かった、私、木の実取ってくる、待ってる。」
そう言うと、ネルは外に出いていった。
「不用心な…。」
周りを見渡すと、狩猟で使っただろう槍とか、あと乾燥中の木の実とかもある。まずは周辺探って、そこからここでしばらく住んでみるか。




