28-64 GGMスタンピピード 緊急事態に現場確認は基本
意味不明ではあるが、私達は、森を抜けて半日先にある所まで馬車で向かう、軸は硬いが…思いっきり揺れる。が、馬車に使う馬もゴーレム製ででゴーレム車である。資金が無いと、馬の代わりになっていい。が、馬が最終的に欲しいな。
「あれが…村の様子がおかしいですね。」
確かに、村の周囲には5台くらいのキャラバンがいた。
「お、エルマの娘っ子。言った通りに来たか。」
「はい、こちらが、隣の牧場主のエミルちゃんで。」
私は無言でお辞儀する。この人…いきなり話しかけてきたのはこの村の門番のおっさんだ。隣村は名前はないが。”村”らしい。実はこういう村は結構ある。村内部での分裂や犯罪者の追放など、様々な理由で村から余った人間は追放され、そしてその人たちは新たな村を作る。そう言う感じで村がいっぱいある。
「おおー、あんたが。村の代表が言っておった。」
「よろしくお願いします。」
本当なら名刺の一つでも出したいが。我慢しつつ話を反芻する。前にエルマが村を訪れた際にこの牧場の商会を行っていて。そこに難民がいる事は話した。そうした所で、こちらに接触してきた。がまあ、お互い助けるとかできずに危なくなったら逃げるという話をしていた。そしてこっちが農園を作り食料を販売できると知ると、物々交換の提案をしてきた。が、その基盤となる銀貨が家に無い。そこで鉱山の出番だ。
「やっと銀山が落ち着いて、新しい統治者が逃げてきた人たちから生まれて、態勢が整って来たんですよ、だから銀貨も持ってこれました。」
「それはありがたい。早速。」
「お前ら!なんだ!」
こっちが門番と話していると、小太りな…若い青年が…初めて見たぞ、この世界で”リーゼント”決めてる奴。
「いえ、この近隣の村人で…。」
「そうですよ、あの森にある牧場のお嬢さんですよ。」
「はぁ?あんなモンスター森に人が住めるわけないだろ?」
門番の話を頭ごなしに否定する、かなり話の通じない御仁だ。
「いねえって。だから言ってるだろ!」
なんか口論しているな。でもなんとなく予想できた。こいつ、外見は人間だがモンスターだ。実はエルマも”従業員”でない場合は”フィールド”を突破できない。これは遥さんがダンジョンのモンスターを使った実験で分かっている。
「知らねえな。でもまあ、そこのガキども。そこの食糧・・・寄こせ。」
「…金を払えばな、だけど知ってるだろ?掟は。」
こっちは流石に声が低くなる。そして臨戦体形を整える。と言っても水猫を構え、荷台に隠れるようにノームを配置しただけだ。
「…こっちは森で強行突破してきたから…食料もないんだよ。」
「だからそっちは話が終わってるだろ。で、銀貨を運んでもらったから。…商売を行うぞ。」
ガルさんに聞いたこの地域の商売は田舎では”小売り”はほぼない。基本は村長と商会が表に出て交渉を行い、食料と引き換えに物を交換するのが基本だ。特産品とかあればそれも貴重な物とか交換できる。なおこの頃の村長はそう言う意味では村で絶対的権力者だ。…ガルさんによると、村が不作である時は…人間も売るんだ。そうして出来たのが奴隷市場らしい。そして村で”村長を無視して商売をする”というのは…村に対する反逆を意味する。国とかの支援があれば別だが、一商隊クラスなら、これは致命傷だ。
「…仕方ねぇ…。」
そのリーゼントは馬車群に引き上げていった。…あのどこかにダンマスがいるわけもないか。




