6-38 ギルドの本音とランク8
「あほな…。」
それまでほとんどしゃべらなかったカラムは硬直したままだった。自分の計画の8割以上が”南”の出現で崩壊したのだ。元は雑魚ダンマス一人と思っていた。キラリ含む勇者がいれば終わる。
そうでなくとも時間稼いで、”魔王軍”の誰かを呼べばいい。と思っていた。その為の護衛だった。だが実際の南はその”魔王軍幹部”並であり、能力に至っては”対大軍”を想定した凶悪さだったのだ、ひどい話、”勇者の魔法戦法”が全く通用しないのだ。耐えるだけなら他の追随を許さず、その回復に攻撃能力まである。別の次元の強さだった。聖女一人が歩けば”大軍は全滅”しかねない。なお、彼女は大方”ダンマス”であるというのがもっとひどかった。ただ、これはもっと考えるとネルにとって邪魔でもある。そのための方策が浮かばなかったのだ。勇者も効かない。そんなダンマスなんて想定するはずがない。
「珍しいのお、あの口のカラムが全く話さんのはのお。」
「いや、私は実は賛成なのだよ。あれは厳しすぎたのだ。」
エクトネーゼ王の意見もあるが…。
「わたしはそれなら考えがあるという事だ。」
「勇者たちにはそうしたらどう説明するのだ。」
パルミダークの王は苦笑いして周りを見渡す。そう、勇者たちは偉業を稼ぐべく、リューネが減らしたダンマスの元をさらに襲撃、削っていった張本人なのだ。もはや、この大陸はこの為に
ダンマスができる、そして勇者が殺到して殲滅、を繰り返す。”ダンマス死亡率ほぼ100%”になっていた。その中において偉業が2個や3個の勇者が多く、現在も従者を使い、探させているのが
現状なのだ。今更やめたりすれば勇者がギルドを襲いかねない。減らせば勇者が魔王に突っ込み勇者はいなくなるとみてる。だからと言って今更”魔王挑戦禁止”も言えない。そんな現状だった。ことは言うほど簡単ではなかったのだ。が、その為にエクトネーゼ王には”善良だったはずのダンマスの殲滅”という話は聞いていないわけでもないが、暴走した勇者を今更止めるわけにもいかなかった。なくなれば死ぬのは自分の国だからである。
「セやな、腹くくったわ。そこの。」
そう言うと、カラムは立ち上がり、勇者たちを見渡す。
「あの南倒してこいや、戦争や。」
「何!」
「ワイもネル様に援軍頼む。全力のな。あんなの生きとるから問題なんや。死んだはずの人間生きとるっちゅうねんが問題なんや。あんたらが、口裏合わせたらええ。ワイらは帰るで。ここにおるは
危険や、勇者たちは南の首持ってこいや。あいつ、ダンマスの恐れあるっちゅうねん。うちの鑑定で見えた。これ出来たら金級だすわ。」
その言葉に勇者たちがざわつき始める。
「ギルマス…僕は…。」
キラリは睨みつけるようにカラムを見る。
「キラリ、命令や、できへんなら、ギルドから脱退させる。」
「なんで!?」
「このままやとあいつは敵や。後、ネル様にも連絡入れる。手持ちの駒も。今、全力動かす。ここを逃せばやる機会無い。」
「なんで仲間同士が戦わないといけないんです!」
「仲間ちゃう、あいつは敵や、今勇者が敵という奴は敵や。今をもってやる機会あらへん。いけ、このままだとアンタラの実績、全部無にされるで。」
勇者たちは、焦った感じで走っていった。
『ネル様、地位と交渉で問題起きたみたいやで、だから魔王軍の援軍で詰めさせておいたリューネはんとケイはんお願いしたいんやけど…。』
『それが、魔界で変動があった。そっちにみんな向かった。魔界でランク7、ランク8が発生した。で、そこにナオがいるって言ってリューネ、ケイ、後エレノアは向かった。』
「なにぃーー!」
【魔界の増設を行います、空LV8,遺跡(空+集落)LV7、が実装されました。それに伴い天候が、ジオフロント内に実装され、地形が変更されます。また空の特殊ルールにより高低差が変動されます。また、複合パネル雲の実装により、嵐、大雨が実装されます。又遺跡LV7の実装に伴い、遺跡が実装されます。内部はフィールドレベル+1の全てに敵対的なモンスターが存在します。またインスタンスダンジョンと同じ挙動を取ります。それ以外の場所では空と同じ扱いになります。】
このアナウンスが、ネルのタブレットに現れると、ネルの園に待機していた魔王軍幹部に衝撃が走った。
「何だって!?」
「ランク8!」
今まで5でさえ苦戦してた箇所にその上の7,8が一気に実装されたのだ。しかも特殊パネル。その報告にネルはタブレットを見つめる…そこにはまったく今までと違う、魔界の姿があった。
海が7割の、大陸も小さい…。
「ランク8に位置は確認できる?」
「難しい、凄い端みたい。しかも、7のパネル3枚と重なってる。これは大都市配置と一緒。なら、そこに何かあるはず。魔界内は時間が速い確認してくれば何かある。」
そう、今まで3年もの間。ずっと、魔界は動かなかったのだ、それが急に動くのは異常事態だが、それに想像できることがあった。
「ナオがいる・・・。」
「だよね、コクヨウ。行く準備するよ、そのランク8に行けばナオに会える。」
「は、母上。」
ケイとリューネが支度を始める。
「あ…え…?ケイ、リューネ急ぐ、魔界チケットが使われたみたい、訪問者に6名の記録が出た。大方”聖女”だ。」
「ナオ!いくよ!」
「待ってください、私も…。」
その言葉を見ると、それはエレノアだった。顔面は蒼白で。重病の様相だった。
「ナオに会えるなら、私も連れて行ってください、」
「時間ない、聖女に襲われる可能性ある、」
「なおさら!」
「じゃ、ネルちゃん、すぐ戻る。10倍だから2時間程だと思う、現在位置からの地図ちょうだい。」
「ギルドカードに送っておいた。」
「行こう、ナオ君が待ってる。」




