6-31 ギルドの裏側と勇者。
「ほんまか!」
ギルドにギルマスの怒号が響く。
「確認取れた。私たち、聖女と、”地下室”に抜かれた。地下室が一位、聖女が5位、しかも”大陸統一機構”は聖女に吸収された。」
ネルがタブレットを見て睨めっこしてる、その顔は蒼白だった。
「2位が、ネルの園と、3位がシーア4位がリーメだけど5位に聖女、だ。」
「んなあほな!万年最下位やなかったんですかい?”地下室”は?」
「うん、ダンマスSNSが騒然となってる。でそれに伴い何故か急に総合DPでランキングが起きて、魔界チケットが聖女と地下室に渡った。」
この魔界チケットを独占することでレベル優位を保つはずがそのアドバンテージが消える可能性がある。それは、魔王軍崩壊…を思わせた。自分たちの必勝パターンであるがために。
「来たぞ!何が起きたんだ?」
シーアの声と共に全員の声が活気づく。
「シーア。地下室が動いた。いきなり一位になった。訳が分からない。」
「ヨミ・・・。」
「招集されてみて来たんだが、何が起きた?」
エムント国王も来て、さっそく周囲の状況に驚いている。
「ランキングに変動があったんや、大方、聖女が仕掛けてくるで。各金カードに警告を。」
「はい!」
「ふむ、だとすると、あれは聖女かもしれんな…。」
「何があったん、国王?」
カラムが会議室の席に着くとエムントは懐から一枚の手紙を出す。
「いや、パルミダークも受け取ったのだが、正式書面で”聖王国”と呼ばれる国家からの対等な”平和条約”の使節が来てる。」
「聖王国やて?」
「聖女を中心とした国家で、聖女をまつる、国家らしい…地図からして、この辺、エルンシア周辺国家だ。」
「あの辺は確かに人手がおらへんけど、けど…やけど…。」
「それもしかして。聖女の位置?」
「やろうな…。」
「ネルさん!」
「リーメ君、来た。」
「というか、これ、今SNSが、祭り状態になってる。聖女がついに本気出したとか。地下室が動いたという話も出てる。」
リューネもあわてた感じで会議場に入る。
「だよね…。で、これ、チケットは?」
「神様はみんなの支援者だから、偏らないだから、もう送ったと思う。」
ケイも勇者SNSとユニークから見れるダンジョンSNの様子を確認してる。
「神さんは魔王軍とギルドの味方やないんかい!」
「それは違う。神様はみんなの味方。むしろ力弱い方に力貸すぐらいのことはする。だから、このランキング見て、即座に動いたんだと思う。」
「で!こないなもん来とったらしいんや。」
カラムが手紙を指さす。
「これは…。」
「聖王国ちゅつう大方聖女からや。”平和条約の締結”だそうやて、各国に行っとるらしい。族長、どないする?」
「位置は?」
「エルシュウッドと旧エリンシアの中間地点の森や。そこには何もなかったはずなんやけど。」
「領域は近くまである。けど、そこから先は拡張できない、買収されてる。なんか、一週間前と領域が違う、エリンシア一帯が全部誰かの手に渡ってる。」
ネルがタブレットを叩くが反応はないようだ。
「しかもその線上になぜか城壁できてる。壁超えないと入れなくなってる。」
「聖女やろな…。」
その言葉に全員のこれは重くなっていった。
「どうするんです?」
「相棒、これちぃっとやばくねえか?」
「鬼ちゃん。」
「私はせっかく和平のチャンスだから、各国それぞれ和平会談に行ったら?」
ケイは気軽に言うが、エムントの顔は暗い。
「あれではほぼこちらはあの城門越えない限り侵攻はできない。スパイも送れない。情報もない、これはかなりの難敵だぞ。」
「うちらの情報にもそれはなかったんやという事は相当短期間にこれができてるっちゅうこっちゃ。でもまあ、魔王軍のみんながおるんや、どうにかなる。ただ、戦争の準備はみんなしておくべきや。最悪はありうる。」
「そういえば教授は?」
「ヨミを連れ戻しに行った。あの子も魔王軍幹部…なんだけど今回ほとんど動けない。ミーアは戦闘が嫌い。エレノアはショックのまま引きこもり。ユーは出たら地上がモンスターで溢れる可能性ある。ケイと私、リューネくらい。ヨミがいれば違ったかもしれないけどどうしようもない。七海はどうする?」
「私ですか…戦闘はやれないことないですけど・・・苦手ですね…。姉さんたちも戦闘訓練は受けていないので、実戦となると…。」
「すまない、ネル、私も今回は不参加だ。聖女が私のダンジョンのほうに来る可能性がある、守らないと陥落するおそれがある。」
「シーア。」
「すまない。」
全員が戦争という事で、少し空気となっている。
「私もパス。これは私の生命にかかわる可能性がある。」
「ケイ?}
「めったにないんだけど、実は”勇者の称号”とスキルは消える場合がある。犯罪や虐殺をすると、消えるって長谷川ちゃんから聞いてるんだ。”勇者”は勇者でなくてはならない。」
「そんなことあるのか?」
「最低でも長谷川ちゃんは見たって。で勇者の称号が無くなると弱体化もする。さらにその状態で罪を重ねると犯罪者行き。天罰まである。だから、これ参加すると私はナオ君返ってきた時に顔向けできないかもしれない。」
その情報はエムント王都、ギルド、そしてエルフたちにとって、今致命的な問題だった。勇者の力が育った分は使えるかもしれないが、弱体化もありうる。もともと”兵器”としての能力を買われ、勇者たちは召喚されていたからだ。
「でも、あの勇者たちは凄かったぞ。」
「うん、正確にはそれ以上育たなくなる。とみてる。実際みんなは強かったからね。もし今後相手に今育ってる子より、強い勇者が出てきたら最後…って事。」
「精神性の問題か…。それは今聞きたくなかったな。」
「だから、正当性によるけど、相手が和平会談してきたら私は戦争に参加できない。無論、無下に断れば相手が戦争した時点で”私たちが悪役”になる。すなわち”勇者”の称号は消える。」
「となると、リューネはんとネル様も危ないか、従者の分が消える可能性あるやん。リーメはんも。」
カラムは落ち込んだ…いや机に突っ伏していた。この事態の予測には誰も至っていなかったのだ。
「従者は勇者が認めるなら再指定はできると思う。けど勇者はダメ。ただ、今までの強さは残ると思うけど。勇者は危ないとみていい。」
「私たちから勇者が8名、後従者20名なんだが、モートリアがここで怖い。パルミダーク側がどれくらい次第化だが、一応号令をかけ招集をかけておく。後、兵士もだ…。」
「冒険者たちにも報酬付きで国境近くに置いておくで。ただ、期待せいへん方がいいで。」
ここにきて、戦力の減退は交渉に死活問題であるが…。
「でも勝てる、ネル様がおる、リューネはんもある。リーメの部下も、コクヨウもある。大方、魔王軍の実力なら勝てるはずや。戦力整ってなくてなんや。こんなん戦闘ではいつもや。」
「わかる。けど注意。油断よくない。」
ネルは引き締めようとするが…。
「大方キラリはんも使えない。ここで勇者がなくなるんは…痛手すぎるで。他のダンマスきたら最後になる。あの”地下室”も不明や。」
「とりあえず、パルミダークとモートリアの使節を連れ階段状に向かうぞ、カラム、貴様もだ。」
「わーったって。行くわ。流石にワイも現場みたい。」
「あの”地下室”が動く…だっけ?ヨミの最後の言葉・・・。まだ何かあるとみていいよね。」
ケイの言葉に、全員が押し黙るだけだった。




