27-14 あえて普通の勇者の学校編 こんな私でいいですかと言われたけど
勇者には特殊能力がある。成長しやすいからだ、スキルも習得しやすい上に上限も高い。徹底的な優遇である、そして部下を加えれば勇者には及ばないものの、従者は勇者並みの…。それこそ城壁を拳一つで割り、町を一人で破壊できるほどの力が与えられる、ただし勇者にはある制限が課せられる。それが”民にとって正義であるか”である。勇者は例えばこの力を悪い事に使ってはならないし、その行為に”正しい”と思う行為がない場合…最悪勇者の称号は剥奪される、が、ここからが複雑になる、従者だ。従者も含め仲間が超常的な力を得られるが従者側にその”正義リミッター”は存在しない。なお勇者を殺しても何のリスクもない。が普通、一緒に生活して成功体験を重ねるうち忠実な部下になるはずである。が何らかでしいたげたり、裏切られる事をすれば…従者が勇者を殺して問題は一切ない。
「ここで問題なのは、これを知って勇者が、従者に犯罪を指示した場合は、勇者の称号は剥奪されるわ。それくらい結構融通が利いて追いかけて来るからね。この辺は。だからこそ、勇者にとって従者はそれこそ切り札よ。ちゃんと選びなさい。」
「…でもなんで、そんなに勇者に詳しいのですか、勇者とは何なのです?」
…メイトリーさんグッジョブ。確かにそうだ。
「あなたは違うけど、この世界の勇者の多くは”国に召喚されるの”させたいことがあるの、魔王討伐や敵軍討伐。様々あるわ。その目的のためにこの世界に呼ばれて…そしてそのまま死ぬまで使われるのが
勇者よ。」
勇者を召喚するのか!そんなものがあるのか!
「で、この国は、いやこの勇者大陸は一度、その勇者に滅ぼされかかったわ。一人の勇者に軍が滅ぼされ…まあ、その辺は吟遊詩人とかが歌にしてるから聞いてみるといいわ。その勇者…堕ちた勇者に滅ぼされかかったのよ。この大陸全ての人間がね。で…ギリギリのところをエルフと教授に救われた経緯があるのよ。」
教授というと、真勇者部隊とか言う…あの家計やった少年のいるチームか。あれが世界を救ったことのある勇者。
「それ以来…その勇者を保護し…監視するための組織が、ギルドよ。ついでに勇者の称号を亡くした勇者は全員、私たちが全力で抹殺する。それが、ギルド商会の使命よ。」
その言葉に俺も…メイトリーさんも唾をのむ。ここまででかい組織・・・それの意味がこれか…。犯罪だけは絶対にしないようにしよう。
「ただ…まあ勇者と呼ばれておいて、兵士として死ね。では問題も多くてね。その為に勇者を保護しているのよ。スタンピードとか、魔王とか邪悪なダンジョンマスターとかの攻略は勇者の仕事になるわ。その代わりにその勇者にはギルド商会はあらゆる優遇を与えるわ。今のところ、邪悪な魔王とか、そう言うのは見た事無いけど、その辺は覚えておいて。まあ勇者は最高級の冒険者としてギルドから依頼が来るわ。それは人類を守ると思われることに関してのみ。後は…自由にしてほしいのよ。勇者と言っても…人間でしょ。楽しんでほしいのよ、人生を。」
なんとなく思い使命と戒律があるのは分かった。そして力があるのもだ。
「じゃ、じゃあ私も?ですか?」
「ええ、メイトリーさん、あなたもよ。ただ従者だから勇者を保護し、守ってあげるのが、使命よ。」
「そう言えば武器が壊れやすいのってもしかして…。」
「そうよ、メイトリー。あなたが勇者の従者として目覚めてきている証よ。だからこそ…勇者を悪の道に行かせない事、それがあなたに託せる…事よ。」
「これから気を付けますね。」
「只まあ、普通の少年でもあなたが連れて歩けば強くなるって事もあるのよ。その辺は覚えておいて。その時の為に教示スキルやその上位スキル”教育”スキルを持っていてもいいかもね。スキルを説明して相手にスキルを伝授させるスキルよ。」
確かに、これはいいかもしれない。
「教示スキルは非常に高いからね。大体金貨75枚から100枚。」
「買えない事無いけど高い。」
「このスキルはかなり有用で、教育においてもそう。だから、まずは有用なスキルとか、そうでないスキルとか探ることをお勧めするわ。」
…まずは有用なスキルの探索と、実戦か…ダンジョンも潜っていかないとスキルは手に入らないのか。
「すいませんリンベルト坊ちゃま!私はそんな重要な役目なんて…。もっとふさわしい方がいらっしゃるはずです!ですから…。」
夜に下宿先に帰ると、突然メイトリーさんが土下座して、こう言ってきた。でも…。
「少し待ってほしい。僕は…メイトリーさん。君にはいて欲しい。僕をずっと助けてくれた君に…いて欲しいんだ。」
大方なんとなく、部下が長続きしない理由もわかってきた気がする…そう。メイトリーさんがいればいいと…俺が思っているからだ。それくらいメイトリーさんは重要なんだ。
「坊ちゃま。」
「・・・なんというか、今後もしかして沢山の仲間になる人が…勇者の能力目当てで来るかもしれない。だけどきっと、その人たちより、君の方が重要だ。ずっと信頼できる君の方が、ずっといてくれた君の方が重要なんだ。だから…メイトリーさん、こんな情けない俺かもしれないけど…だけど…一緒にいてくれないか?」
メイトリーさんの頬から一筋の涙が落ちる。
「坊ちゃま、一生・・・仕えさせてもらいます。」
「…うん。」
その言葉に対する答えは、これしか持っていなかった。




