27-5 あえて普通の勇者の学校編 その頃のドラン
徳永に呼ばれ、式典の準備をしていたドランと徳永の元に東の公爵家の失態の話が伝わると、その場にいた全員が凍り付いた。いきなり出合い頭に、いやわざわざ因縁をつけて自国の勇者を手打ちにしようとした公爵家令息。という話である。しかも報告を受けたのが、ドランの家名決定の御前会議の場である。そこには宰相、東の公爵、南の公爵含む全公爵が居並んでいた。しかもその場が、勇者学級の初日である。
「これは流石にわしでも庇えんからのぉ。」
ドランは呆れて肩をすくめるが、
「ちょっと待ってよ!どういう意味よ!東はそこまで私たちに反乱を考えているの!?」
徳永もいきなりヒステリックに騒ぐ。
「ちょっとお待ちください!事情を確認してからでよろしいですかな?」
「こればかりは…東の…お主の為にわが娘は出立をあきらめたのですぞ?」
南の公爵家は王子のほかに自分の娘にもスキルなどを付けさせたくて学校に送り込みたいところを我慢し、宰相の娘と東の公爵家の令息を従者候補として送り込んだのだ。この会議に2か月の期間を要したくらいだ。南の公爵家…親衛隊隊長は今後に付き合いがある可能性がると、王妃にも言われ、身を引いたのだ。なのにこの様ではどちらにも立つ瀬がない。東の公爵にしてもそのスキルとやらと、あのスタンピードで使った魔法の力が手に入ると思えば新たな独立の旗印に使える可能性があると、勇者を抱き込む予定だったのだ。それが初日で殺しにかかるとか。前代未聞の失態だ。
「い、いえ。」
「これは、責任問題になりかねませんな。」
宰相である柳田もうなりを上げる。
「事情を確認し等ございます。一度席を立っても?」
「いいわよ。但し分かっているでしょうね。勇者は大森林攻略のカギよ。それを殺そうとしたなら、あなたを処刑しないといけないかもしれないわ。」
徳永にしてもこの事態はまずかった。それがギルドが”勇者監視団体でもあり、勇者保護団体”でもあるからだ。街を一人で滅ぼせる火力持ちの戦略兵器”勇者”を殺そうとすればその国が悪認定され称号に変動があるかもしれない。”悪認定”を受けた相手では殺人による称号剥奪は受けない。その為、悪認定の有無は怖い。しかもギルドは現在ホワルカナンにゴーレム車という利益をもたらしつつある。それを手放すと言えば相当な歴史の衰退…いや、国家の危機さえありうるのだ。それに今ではもう魔王軍の配下でもある、ギルド戦力のトップ、魔王軍四天王の派遣なんてされたら、国は亡ぶ。それを防ぐには…誠意を見せないといけなくなる恐れがある。
「わ、分かりました。」
東の公爵家の当主及び、その部下の一団は走って会議場を抜けていった。
「これでは…東の守りもきついですなぁ。」
西の公爵家、旧宰相派のトップも頷く。この男も結構なだましと利権を持っているが。彼のスポンサーであるスキュラが魔王となり、大型建築を行おうとしているので、西の公爵家にはそこまで大きい資産はなく、今は王妃派が持つ”ハイポーション”の素材や木材を売るしか資金調達法ない。なので、今は王妃に従うしかないのだ。
「とはいえ、流石に…庇いきれませんな、リンシュメルト国宗主”リオ―ル・リンシュメルト宗主”より苦情のメールが届いております。流石に、往来堂々と殺人をしようとし、同じ教室の学友を殺そうとした
ものは学徒として失格だと、アドミラーレ系名義の5名の学生の退学を勇者保護の観点からさせて欲しいと。」
「この対応の方が先んずべきかと思います。今後を考えれば。」
手を上げたのは親衛隊長だ。
「確かのそうじゃのぉ。家名はまた今度でよい、それよりも危機を先んじて対応しておくべきじゃ。それにまだ各地の…いや北部の侯爵3家も付いておらんのじゃろ?後でよい。」




