27-4 あえて普通の勇者の学校編 いきなり決闘とか仕掛ける危険人物が同級生と思えない。
いきなり疲労困憊で倒れそうな感じをお互いしつつ、俺達は受付にやってきた。そこには…先ほどの衛兵長の姿もあった、
「すまないな…あれは事故だと思って欲しい。君はこちらに、そこの従者殿もだ。」
俺達は受付から手招きされ、奥に通された。ここは流石に靴を脱ぐスペースはない。そこはアメリカンスクールって感じだ。そして衛兵に連れられて行かれたのは…どうも個室が大量に並ぶ部屋だ。
「ようこそ。冒険者学校に。私が校長の…セバスチャンだ。」
メイトリーさんはこういう時には直立不動を取る。挨拶はこっちの仕事だ。
「初めまして、勇者リンベルトと申します。」
手を差し出すと、セバスチャンさんも手を握り返す。セバスチャンさんは見た感じナイスミドルのおじさまというか美しい老紳士というイメージの合う人だ。整えられたひげや髪の毛が紳士さを感じる。実はこの世界において、男は余り髪を切らない。切るための道具がリンシュメルト以外では少ない。ザガートンでは鉄器があるが、ホワルカナンでは軟鉄のナイフでさえ高級品だ。ついでにこっちから幾つかの商品をギルド経由で実家に送ってもらったところ、感謝の手紙が父と母から帰ってくる程度には喜んでくれている。
「先ほどはご愁傷さまです。」
「はい、できれば…違うクラスにしていただけると。」
流石にあれだけ騒いだ相手と一緒はつらい。
「それが…無理なんです、今年の勇者学級は一クラス分しか人員が集まらなかったのです。」
「そうなんですか?」
一クラスだけって…。
「各地で学園建設計画が上がり、ここで学ばせるくらいなら自分の村に作った学校に通わせて、その学校に箔をつけるほうが良いと。その為各王家などの王子の一部は着ますが…それ以外は…」
でもわかる気がする。あんな貴族や王子のいる教室にいる下級貴族の息子とかが、ここで”平等だ”と言われて後の事を考えない馬鹿は少ない。それに単に学ぶだけなら冒険者学校の方やカルチャースクールの方に通うだけの方が効率的だ。この勇者学級の利点は”コネの形成”だ。それをあの大金を払って欲しがる相手なんてそうそう多いわけがない。勇者は只だという事と本国の命令なしでは…絶対に選ばないな、ここ。それ位ならダンジョンで稼いだ方がいい。
「それで何人何です?」
厳しくにらみつつ、高挑戦を見る。…やはり焦りの色が濃い。
「12名です。そして先ほどの件で5名、退学が視野に入っています。」
「5人も退学ですか?」
「流石にゴーレム車はともかく、いきなり同級生を殺そうとする学生を同じ教室に入れて、他の王族などに迷惑が掛からないとは思えません。これに策を立てねばそれこそ国際問題になります。」
セバスチャンさんの顔も暗い。
「でも5名ですか?」
さっきのミゲル君の事を考えると1名のはずだけど?
「彼と彼の従者3名と婚約者一名の5名分です。婚約者だけを学ばせれば、彼女の今後が危ないので。」
そう言えばメイトリーさんも一緒に学ぶことになっているはずだ。当然メイトリーさんも学生の数に入っている。だからか…とはいえ5名分がいきなり退学か…。
「でも退学にできるのですか?腐ってもホワルカナン国の公爵の息子様では?」
「…今王妃の徳永様に連絡中です。最悪あの方に責任を取らせると、ギルドの方が息巻いておりまして。」
学校に入って、入学式前にいきなり退学騒ぎとか、自主退学RTA早すぎだろ。
「…ここまで来ると…私含め流石に学級にいるよりも冒険者学校で名前を隠し一般冒険者として暮らした方が、むしろ自衛の為かと思いますが。」
流石に7人とかの教室で半年間をやるのは…胃が痛すぎる。
「…私たちはそう言われると勇者様の言うとおりにするのが仕事になっておりますが、今しばらくはお待ちください。それを含め、王妃に連絡しますので。」
「お願いします。」
自分としても王族に付き合うくらいなら、厳しくても冒険者学校に行った方がいい。狭すぎる教室では噂もひどい事になるだろうから。




