26-SP8 格差は複合要因で起きうる。
それには、黒川の隣にいた秘書さんが…説明してくれた。ダンジョンの同盟には当然様々な制約を課すことができる。そして…その中には”ダンジョン収益均等分配”という事も可能だが、それにいくつもの問題が起きた。それが…各部族間における”人口と適正戦闘力格差”というものだ。例えば魔人の部族がいて
そこの戦闘力が高かろうが…通路の幅とか…使える魔法の規模に応じて効率が変化する。…また肉になる動物はパークボアなど少ないこともあり、弱すぎる場合は手加減しないと、可食部が無くなる。しかも問題な事に千鳥万花が肉を輸出し始めて以来…肉の可食部に関する好みが市民で大きくなり、一頭全部出さないと不味い事が多い。だからと言って…攻撃する際に可食部を避けて攻撃するとなるかかなりの精密射撃が欲しい。しかもパークボアは重い為に持って帰れる数に限界がある。だから…ダンジョンに潜る際は一家族単位となりやすい。が、そうなると…肉は取れても…もって帰れる数に限界がある。そしてもうひとつ…それが魔物の骨に矢じり加工や…骨髄スープなどの価値が生まれていて…骨でさえダンジョンに還元せず…取引する事例が増えてきていた。そうなると、各部族借りに出れる人数で差別が生まれつつあった。当然部族には加工が上手い部族や、狩りが上手い部族。農業が上手い部族など…沢山の特性を持った部族がいる。となるとダンジョン収益を一定にすると、狩りが下手でダンジョンには入らない部族と入る部族で、DP的格差も生まれる。そしてその部族がため込み…ダンジョン外に置かれたものまで均等化する…という事はダンジョンの特性上無理だ。取引になる。が、ここで問題なのが、このフォレスタ南西部は荒野に村が点在していて、そこに部族が住む形となっている。…昔から行商が商人の基本だ。それを村ごとに所有し、村ごとに一個の企業という感じの運営をしている団体である。だからこそ…部族主義が成り立つんだけど、この通商の時間がかかり、これが…このダンマス同士の格差となっていた。又その骨でさえ…DPになる観点で重要視していた。そして差が生まれる。格差が黒川はこの家族制度の崩壊につながると考えていた。そこで、ギルドが買い取り、移動の部分の一括化を行う事で収益の安定化…費用の捻出を行いたいらしい。
「後部族間の祭りをやる箇所が多くてな、この行商人の一団の商取引を活発化させたいんだ。」
「祭り?」
「ああ、村ごとに祭りをやることが多い。」
これも…部族というか家族主義の欠点だそうだが…その基礎や根底にあるのが…”祭”だ。春の麦撒き祭りや秋の豊穣祭、狩りの巨大な獲物がを取った時の祖霊の祭。そういう儀式的な事が、村の団結力を上げていく。がそれに際しては当然酒などを含む物資が欲しい。村の中にはそのためだけに窃盗に回る…盗賊団みたいな村もあった。その費用の多くはダンマスがダンジョンに出して、彼らに採取させて祭りを支援する事が多い、その際に多額の費用がかかる。…そこで問題になるのがその祭りの為に…他の村の飾りや食料を要求されることが多い。がそれをダンジョンから出すのは…その部族を担当するダンマスとの関係上できない。最低でも”買ってきた”と言い訳が立つ環境が欲しい。そこで…ギルドオーブとギルドが…その言い訳に役に立つと黒川は言っていた。
「言い訳の為に欲しいとか…。」
少し僕も南さんも呆れちた。
「言い訳だけでいうなら…千鳥万花の所のイーハ商会は行れているだろうが?」
「あれはリンシュメルトに店があるからだ…」
「なら私達もという…提案だな。」
そう言えば、ずっと謎だったことに彼ら千鳥万花の支店であるイーハ商会はどうやって勇者大陸に来ていたんだ?南さんが言うには最初こっちで千鳥万花に入ったという協力者・・・俊三さんが影響しているたしいと聞いていたが、。僕たちがイーハ商会の本店がマルワール帝国というフォレスタ大陸にあると分かったのが大下君のレポートからだ、しかもそことリンシュメルトでは業態さえ違う。向こうではゴーレム車貸し出しや、宿屋業などをしているらしい。
「そう言えばリラシルトのリチャード商会もリンシュメルトにはいませんね。」
「ナギサさんの所はナギサさんの鍛冶屋はリンシュメルトにあっても、メル・ジーン商会はリラシルトが中心で最近砂漠渡りからの南部に拠点をやっと持てたとか。」
その話に…黒川も周囲の人たちも顔が渋くなっていく。
「という事は、もしかしてあの鳥頭が異常って事か?」
「という事になるね。リンシュメルトでは金カードさえあれば優遇の形だけど、直接本人が来ないと駄目って事になってるから…こっちにギルドを建設するに際してはせめて。フォレスタ北部の国の…こっちのギルド支店に誰か来ないとだめって事だね。」
「…あいつら、南部にも拠点が多いから…どうなってる?」
「ん?」
ちょっと待って、千鳥万花ってフォレスタ南部だけじゃない?拠点を複数持ってる?
「あ、いや、いいんだ。」
南さんも…顔が険しくなってきた。
「一応、こっちからも…ダンマスの舎弟を回収した際の土地を連中に売っている。その観点で、ザガートン南部にも拠点があるとは言っておく。」
「やっぱり、あいつ…信用できないわね。」
鳥海さん、地味に暗躍が多い人って事かな?
「その表情だとあの鳥頭にあんたらも煮え湯飲まされているんだろ?どうだ?」
対千鳥万花…とはいえ表立っては無理だ。融和路線を掲げた直後の警戒は…全員に亀裂を生むのは事実だ。思ったよりこれは厄介な事態になりそうだ。]




