26-112 普通のダンマス こうしてダンジョンは出来上がる。
鉱山の復活、そして水場の入り口と同じものの発見は都市に大きな衝撃を与えた。今度の場所は、街から半日の村の奥にある鉱山だった。そしてそこではゴーレムが暴れ、うろつき回り、そして、そこでかなり良質の胴が取れるという情報が流れた。これに伴い貴族が動くと思われたがそこで、スコーブ男爵にその”ダンジョン”の調査指示が出され、スコーブは、持ち前の”募兵”で街の人々から大々的に人を募った。それが、鍛冶街に聞こえると…今まで高値で貴族から金属を買って武器防具を作っていた彼らが大きく動いた。そこの
金属を手にすれば、スコーブは幸い庶民に理解がある。だからコネが効くはずだと…。大挙してきた。
「ここは閑古鳥かと思ったぜ。」
「一応ここは…もうソコソコだぞ。」
一応グランのおっさん以下、ラビット酒場の連中を引き抜き、ギルド一階に持ってくると、そこに鍛冶街及び商人街…そして露天街からも依頼が殺到した。久々に市井に金属が流れるという話もあり、競って金属回収用に…国を出し抜く人材を求めたのだ。冒険者登録を行い、依頼で買い付ける事。そこの危険情報も提供し、その上で…鉱山を紹介した。ついでに門番たちはこれを機に退役させた。というより、金属を密輸したほうが儲かるといい…わざと退役に誘導させた。まさか全員引っかかると思わなかった。なので、冒険者のうち8名を門番で雇用。…12名しか残っていないぞ。このうち4名は開発した村の警備員で雇う予定なので、残8名だ。ただ、登録はやたら多く、露天街からも大量の冒険者が発生した。鉱山で働けば儲かる。貴族でさえ、部下を差し向け、上前跳ねを狙う事になった。ただの鉱山でなく、鉱山ダンジョンなので、鉱夫だけではなく、ゴーレムを倒せる護衛も欲しい。そしてゴーレムは1F,2Fに限りは”軽石中抜きゴーレム”という無茶苦茶やられ役のゴーレムを用意した。奥に行くにつれ固くする予定だ。
「でもよ、こうしてみると…。」
「まあ、分からないでもないな。」
俺達…スコーブのおっさんも俺も、グランのおっさんにギルドの扱いを任せ、常連客のふりをして、ギルド酒場の奥で飲み食いして、この狂乱の様子を見ていた。今もひっきりなしの鉱物採取依頼と、ゴーレム用の魔石採取依頼。そして…。
「でも一番たくましいのは、あの露店長だと思うぜ。」
「なん?」
「いやあな、向こうから”ダンジョン外”で露天作るから仕切らせろ。だとよ。一応俺の領地だからな、あそこは。2割で通した。」
一応ダンジョン前は、人を並べて鉱物を買い取る人員を配置したくて、少し路面は露天を置ける程度に大きく開けてある。が…。
「2割?払うのか?」
「適当だそんなものは、ただし守らない場合は俺が実力で追っ払ってもいい事にさせてもらった。」
「…帳簿つけてないだろ、連中は。だから無理無理。」
「帳簿?」
実際、昔からの店の多くは商売で”帳簿”を付けていないことが多い、
「売った数を紙に書いておくんだよ。そうすることで、たくさん客が来てもいくら売れて、いくら仕入れればいいか、はずれがなくなるんだよ。」
「そう言えば、グランにも仕込んでいたな。」
「売ったウサギ肉の数だけな。一皿銀貨一枚だから、計算しやすくした。それで枚数だけ数えて要求して、それでいくら売れたか分かれば、取りに行くときもいくつ欲しいかわかる。そうすれば、余分にウサギも狩らなくて済むし、無駄がなくなれば変に人に迷惑もかけなくて済む。」
「そう言うものか?」
「大方、ダンジョンの誘因もかなり大型化したから。かなりの人が来るぞ、ダンジョンには。周りも忙しくなる。」
「だろうな、この人だかりだけでもそうなるな。」
グラント、子供たちは現在ギルドの新規登録と、依頼受注だけでも相当の数の人が来ていた。そして意外だったのが”エルフ塩”の補充だ。この”ギルドオーブ”からの販売のみカードと違い制限がない。その為、大量の”ポーション”などの買い付けが増えたのだ、主に商人街から。という事は連中は意外とこのギルド開設を待っていたかもしれん。食えない連中だ。
「ただこれで本来なら、もう奴隷商人なんていらないはずなんだ。」
「本当か?」
「いや、求める人間が倍に増えた。安心して…捨て駒にできる人間が欲しいんだと、貴族も…冒険者も。だから、今は人材が枯渇して、数年は待たないとダメだと言った。」
「腐ってやがるな。」
「ただ、荷物持ちの需要とかいろいろほしい。ただ、今まで私兵の乱用とかでもう、元々奴隷の数はほとんどないんだよ。」
「…世も末だな。」
「そう思うか?俺には自業自得にしか見えん。」
これが…ダンジョンの始まりであり、そしてここからは平穏なダンジョン経営が待っているのだろう。矢っと得た平穏は…妻とゆっくり暮らしたいものだ。
これで、この章は終わりです。元々ダンマス物を書くときに”一般的なダンマスの生活”について書かれた本や小説が無くその為のたたき台として書いたものです。大抵のダンマスが大成してダンジョンを築くまでがかかれています。次回からは、遅くなった春スペシャル『酒が飲めるまでに』となり先ず。お楽しみに。




