26-96 普通のダンマス アミル:地下の兎平原
まあ、やってきたのは、俺がテーブルで肉を食いながら、スコーブの部下と、調整を放していた時だ。当然分かっている。
「ここよ、お願いね。」
「分かりました。オーナー。トミー。例の部屋に案内してやれ。」
「あいよー。」
奥から聞こえてきたのは、ここで働く4人の男女の一人で、トミーだ。
「アミールお姉ちゃんから聞いてると思うけど、ここから先は…。危険だからね。」
依頼はこうだ。
『土魔法の石作成で作った石でラビットを3体討伐して、その肉をグランに渡すこと。報酬は”ウサギ肉の丸焼き×1と銀貨1枚”』
だ。まあ、ちょっと奮発しているが、…成功率は半分以下だと思っている。
「私も頂戴、後水。」
アミールも降りていくオッサンや、奴隷たちを見送っていた。グランが、器用に片手で水のコップを持ってくる。
「でも最近。あいつら強くなりまして。きついんですよね。」
「そうか、まあ、あれだけ殺されて怒らないはずはないからな。」
実際は俺がスポナーを改良してレイドからモンスターの作成をしやすくなるためだけどな。
元奴隷たち24名が来たのはラビットルームだった。
「最近、広くなりやがってな。そのうえここのウサギ共は非常に…すばしっこいんだで、ここはウサギ肉の店だ。だから…。頼んだ、ただ、アミールオーナーから、土魔法の練習で石作成を使って作った石でしか、達成を認めないんだって。その監視は…どうもそのギルド―カードって奴でやるってさ。だから、見て無くてもカウントはされるんだと。わかった?」
「どう見ても、いっぱいいますわね。」
「地下だよね、ここ。」
「アミールオーナーが魔法で作った空間だってさ。だからいくらやっても大丈夫だと、ただ、最近急に広がって…すごいラビットも捕まえにくいんだ。頼んだよ。後血抜きとか教えるから、持って帰りたい奴は言ってくれよ、解体教えるからさ。」
トミーは言い放つとドアから出て行ってしまった。
「何だ、ここ。」
見れば、そこかしこにウサギが歩き、草を食んでいるのだが。普通のウサギよりかなり丸々と太っていた。
「でも、あれ狩って店持って行けば、高く売れるぜ。」
「でもアミールさんが…。」
「依頼以外でとらえてもいいと言っただろ。」
「あの教官が…そんな優しいか?」
なんとなく、あの妙なところが厳しい…達観した感のあるアミール少女の事を思い出した。
「でも確かに、武器も何も持たないできたので、せめて…石作成で武器を作って…倒さないといけませんわ。」
元貴族のお嬢様は石作成で、石を作った。これも訓練されており、やろうと思えば石の件とか作ることも可能だ。但し”重さ”に応じた維持MPが欲しいので。武器を作るのは効率的ではない上に、石作成で作った石は妙に軽いか、硬いが小さい。どちらかにしかならなかった。なので、硬くて小さい石にした。
「関係ないだろ!行くぞ!」
近くの男が、飛び掛かるようにウサギに迫るが…ウサギは男を一瞥すると、さっと身をかわし、するっと抜け出す。
「な!」
「ただのウサギ狩りだと思いませんでしたが…。」
ミルツ特性”栄養成長と繁殖、絶倫入りラビット”である。元々ウサギは繁殖力が高いが、更にそれを補強し、食っちゃ寝するだけで成長も可能とした。レベル10繁殖用のラビットだ。栄養成長が入ることで、素早くレベル10となり、2匹のウサギ夫妻は同じスキル持ちのラビットを量産していく。その為生育途中のラビットでも平均4から7レベルという、自然界では見ない強さのラビットになっていた。但し、元が臆病なためか、戦闘意欲が無いので、回避しかしないが。あまりに増えすぎたウサギは、隠れ住む穴倉に収まらず路上に多くが出ていた。…がさらにミルツはルームの大きさの調整を行い、高さ3m×縦3km×横300mのラビットルームを二つ連結させ、植物スポナーの数を増やした。非常に大きくなったラビットルームはまさにウサギの楽園だった。
「これ、実はやれるならやってみろっていう…あれじゃないか?」
アミールが企画したのも、そう言う”できないかもしれない程度の難易度の依頼が来る場合があり、うまみがあるかもしれないが、落とし穴もあるのでちゃんと依頼は精査しよう。”というメッセージを込めた物だった。
「恥も外聞も捨てていくわよ、このままじゃ、旨味どころか失敗して、何もなくて帰る羽目になるわよ。」
全員の思いが、一致した瞬間だった。




