26-84 普通のダンマス 平穏
結局のところ、全員がギルド入りに賛成だったが。問題は多かった。説明したのは異世界定番の”冒険者ギルド”って奴だ。イメージの共有を図ったところ問題が発生した。それが、場所である。冒険者ギルドは町のどこにあればいいのか。奴隷商人は町の端がいい、汚れもあるが、人の目に当たらない位置がいい。鍛冶屋は焼き入れに使う水が大量に欲しいので、水の傍がいい。ならギルドはどこがいい?この町の問題として昔から続く○○家という家が多く、土地の買収が難しい。というより不動産取引という概念が無い。
そうなると、その家の人を説得するか何らかでどかすしかない。当然不動産屋もない。これが問題だった。今ある土地だと、通りから多く、人が多く出入りするであろうギルドは…住民の邪魔になる。もう一つは”水場”との位置関係だ。水場は先ほど言った”ダンジョン予定地”だ。そうなると、その傍がいいとなる。が…その土地はスラムで一般市民が入れる場所じゃない。。
「ミルツ。ちょっといい。」
「なんだ?」
「相談があるのよ。」
「何?」
最近はグランさんの食堂にいて、日の光を浴びながらの計画練りが…楽しかった。ダンジョンから一応出れるのだが。この地味に売れない店のサクラをやりつつの考え事が好きだった。
「レベルが上がらないのよ。」
「どういう事?」
「分からないのよ、今までは何してても上がっていたんだけど、ね。」
アミールの職業は確か、ソロキャンパー。この情報があのぎるどとやらにうれないか?
「難しいな、俺にも全く思いつかん。が、一応俺もなんか指揮官となる以外に実はいくつか異世界人専用職業もあったんだぜ。」
「どんなの?」
「登山家と山伏だったな。」
「ああ、確かアウトドアで、いろんな山を登りに行ったもんね。」
「でもこれは流石に…。」
「分かる。」
登山家の蜀のダンジョンマスター。なんだそりゃってなる。なので、ダンジョンのノウハウが生きる指揮官にしてある。ついでに地味にレベルが上がる。ダンジョンを経営しているだけで。という事は…。
「…確かあの時はこれだと一切レベル…あ、そうだ、アミール。一晩キャンプ行ってみたら?」
「どういう事よ?」
「ソロキャンパーが、レベルアップするにはソロキャンプを極めるべきだろ。もうある程度の予算もあるから、道具屋とか、後あのガッツンに頼んで道具作ってもらえよ。」
ガッツンは現在、アミールがスコップからかたどりした鋳型を基にスコップの製作中だ。硬さは無理でも形状は何とかなるので…どうもこの辺は木のへらに近い形状の”土堀”という道具はあってもあの幅が広く、先がとがった”スコップ”の形状まで至ってなかったらしい。あまりの土の掘りやすさに、ガッツンが、ほぼ一日穴を掘り続けたとかそう言う話が出ていた。現在はオーガ用スコップ(武器)をレイラ用とガッツン用に作っている。鋳型作成の後に叩いて固めた物を使うそうだ。これですき焼き(スコップ鍋)の事を教えたらどうなるんだろうか…。
「いいわね。でも」
「登山用具の多くは、形さえ…な。」
あまりなじみがないが、現在の登山道具の多くは数百年かけて蓄積した”ノウハウ”の上に立つ形状だ。ピッケルもカナビラも。ロープも…登山ウェアもだ。被害が出るたびに改良を繰り返し、職人がたどり着いた形状でもある。その証拠にあのスコップでさえガッツンはあまりの良さに穴を掘る時気持ちいいとまで言うようになった。そんなこと感じた事もなかったのだが。
「仕方ないわね。今夜は一人で一泊してくるわ。豆腐建築から、少し離れたところでいいかな。」
ただこの世界でのソロキャンプは、日本で言う”野獣注意”と呼ばれる危険地帯での一泊だ。そして荷物も自分で持って行かないといけないが、忘れてはいけないのが俺達の身体は4歳児のそれだ。発育がいいとはいえキャンプ道具を持っていけるほどではない。が、その辺は任せればいいだろう。
「頼む。検証だからな。」
「準備してくるわ。でもソロキャンって…懐かしいわね。」
「確かに。」
そう言う間もなく、アミールはダンジョンに戻ってしまった。ふぅ…キャンプができるならいいんだが、ソロキャンだと護衛を連れるのもまずいだろう。
「坊ちゃん。ソロキャンとは何です?」
「グランさん、ソロキャンプは、一人で野外で宿泊する事ですよ。」
「それって普通では?」
「そう言う専用職業らしいんでね。アミールは。」
「は?職業?」
「職業だ。一応グランさんも転職が可能なら、転職させますからね。」
「…まあ…お手柔らかに。」
ただ、グランさんは片手だ。作業のほとんどは子供たちに助けてもらって経営している。が…って、急に来たな。スコーブ。
「ちょっとまずい事になった。」




