26-77 普通のダンマス 商人の落日
侯爵令息がこの壁が上が開いている事に気が付いて乗り込むとそこにはゴーレムもあったはずの荷車も、中身もなくなっていた。
「これは!」
「だから坊ちゃま!行ったでしょう、魔法使いは…。」
そう言った途端、兵士長の首は吹き飛んだ。
「うるさい!探せ!近くにいるはずだ。このままでは我々は飢え死ぬぞ!」
「「はっ!」
兵士が慌てて二日は探すものの、魔法使いも荷車も見つからなかった。
数日掛けて、荷物も食べ物も飲み物もない軍隊はギリギリ北の砦に飢える寸前の形で到着した。侯爵の息子とその部下たちだけはここがまだ街を出て一日目という事もあり、すぐに街に戻っていった。侯爵邸に戻ると侯爵も
「なぜだ!何故魔法使いを襲った。あいつは他の貴族を出し抜いてようやくあそこまでこぎつけたのだぞ!」
「父上、庶民たるもの、私たちの物です。従わぬはずありません。ゴーレムとか言うものを手に入れれば。」
「あれは魔法で出来ていて、人がいないといけないと言っただろうが!」
どなりながら、大量室に二人が入っていく。
「そんな魔法とかいう、不確実な物を信じているのですか?」
「こうしている間に、ミルトンの馬鹿に追い抜かれるだろうが!それにあの奴隷商人はどうするのだ。金も大量に払ったのだぞ!」
「なら、あいつは売国奴です、犯罪でもでっち上げて殺しましょう。そして財産を取り上げれば、払った金も戻りましょう。ついでに金品も全部貰っていきましょう。」
「そうだな。そうすれば回収できよう。すぐ戻るぞ、後で書類はでっち上げる、国家反逆罪でいいだろう。」
そう言うと、侯爵は執事に号令をかけた。やるなら早くだ。
その令息の帰って来る半日前にはアミールたちはダンジョン経由でいつもの店に戻っていた。ちょうどそこにはスコーブがグラント夕食を頼ん死んでいた。店は開店していたものの。スコーブたちが出入りしていたため、半分開店休業状態だった。
「お前ら!仕事どうした。」
「あ、オーナー、お帰りなさい。」
「しくじったというより頭のおかしいやつがいたわ。」
「なんだそれ?」
そして事の成り行きをスコーブに聞かせるにつれ、どんどんスコーブの顔が険しくなっていく。
「あの家なら馬鹿やらかさないって思ってたんだがよ、・・・やべえ、」
「どうしたのよ。」
「連中の事だ、しくじったもみ消しに俺たち殺しに来る可能性がある、ドンガローもそうやってスラム行きになったんだ。」
「は?」
「すぐ戻るわ。」
スコーブが立ち上がるのを、アミールが袖を引いて無理矢理座らせた。
「・・ぐぅ…しかたない。ちょっと待ちなさい。手配するわ。手段なんて選んでられないわ。」
「どういう事だ。」
「姉さんは地下に通路持ってるから、そこから逃げるんでっ。」
「可能なのか!」
「第一どこまで逃げるのよ。それにまだどうなるかわからないわ。ただ一つ聞いていい?」
「何だよ。」
「あんたのあの家。貰っていい?そうすれば助けてあげる。全員ね。」
「…できるのかよ。」
「まあね。ね、ミルツ。」
『了解した。その宣言頂いた。ちょっと工事するし、待ってろ、後、そこのスコンブ野郎、地下に来てくれ。そこで詳細を詰めるぞ。』
いきなりの声に、3人とも、天井を見上げた。グランもだ。
「何だあれ?」
「私の頼もしい旦那様よ。」
そう言うと、足取り軽く地下に降りて行った。




