26-78 普通のダンマス 薄氷
「初めましてだな。」
「あ、お前は!」
「スコーブのガキ。ここは黙ってろ。」
地下に降りて、護衛を伴い降りてきたスコーブを待ち構えていたのはオーガの2名とミルツだった。
「ようこそ、さて、ここで聞きたいことがある。あんたらは今ヤバい状況にあるのは分かる。そこに座ってくれ。そこでだ、あの屋敷どうする?」
地下のバー部分にはテーブル席もある、そこにミルツとスコーブが座る。
「どういう意味だよ、」
「一応まとまってないが第一案はあの建物ごとこっちが接収して”消す”って事だ。あの建物ごと消して、地下にでも作り直すか、そのまま回収かって事だ。第2案は建物を残して”水場モドキ”をあそこに設置する。
「は?水場?」
「俺からしても大切なアミールをあんな目見合わせら馬鹿は許せない。そこでだ。ダンジョンをフル起動させ、連中をダンジョンに誘い込み。連中が来たらぶっ殺す。こないなら、舘も何もかも元通りだ。」
「…中々じゃねえか。」
「第3案はスコーブ。お前だけ殺されることだ。連中はお前を狙ってくる。一度殺されないと、絶対追いかけてくる。」
「…だろうな、」
「そこで、お前がわざと建物の前に立ち、そのままアミールが建物を崩す。そして死んだ事にしちまうのさ。お前は建物の中から逃げて俺の元にこればいい。ちょうどいい家もある。」
とりあえず思いつく限りを言ってみた。
「考えさせてくれ。」
「旦那。」
「しくじったのは分かるんだ。だから貴族案件は嫌いなんだ。貴族は俺達は人間と思っちゃいない。自分の失態と街を焼き払う事を考えた時連中は普通に焼き払う。」
苦い顔して言っているが、そんな猟奇殺人鬼みたいな連中の巣窟…貴族って奴は相当駄目だな。
「売り込む相手もさんざん調査して、それでぎりぎりの薄氷を渡るのさ、良識のある連中ならいい。金の賄賂が効く相手はまだいい。それもダメで、奪う事しか頭にない連中は普通に金を持ってきた奴がいるだけで、殺して奪おうとしやがる。今回は賄賂もさんざんおくったんだ。その上で取った仕事がバカ息子のせいでこうなるとか、こうなるとどうにもならん、あいつ等は悪魔だ。俺達を殺しても何も感じないのさ。」
スコーブの声は最後、消え入りそうなくらい…小さかった。
「ひどい者ね。でもどうする?」
「…俺は…あれにする。連中の良識に期待したい。」
侯爵は手勢と衛兵を連れ、スコーブの屋敷に向かっていた。
「本当でしょうな。」
「ああ、私の金を奪った奴がこっちに逃げたと、部下から報告がありましてな。」
向かう先はスラムの顔役のスコーブの屋敷だ。
「ここは、王家からも商人の認可状が。」
「関係ない。盗人をかばえば死刑、それは法の正義のはずだ。お前たち!盗まれたものを取り戻すのだ!」




