26-75 普通のダンマス アミル:従軍
アミールはいやらしい目をする兵士たちと兵士長の目を欺き、一つのテントにいた。日本からしたら考えられないが…従者での男女率は半々であり、連れてくる人間の多くは傷ついて、銭湯には期待ができない元兵士たちが多い、女性の兵士はほぼいないが従者に男女が多いという事は自前でそう言うのを用意したって事だ。ただ、この兵士たちが荷物を持たないのは単純に道中の安全のためだ。これを狙う兵士や敵軍の奇襲、獣の襲撃など様々な物がある。徒歩での行軍なのでそうなる。そしてその重い荷物は従者が持つことになっていた。そして今、それは私達の仕事って事だ。このため市がうまく言えば、今後貴族が私を雇うとか、様々考えられるんだそうだ。ただ、私ではなく、魔導士は身代わりのおっさんだ。…そこにはあのスコーブのせこさがある。魔導士は有能でも寝ているときは別。って奴だ。それにやっかみで他の貴族が暗殺をアミールに向けないとは考えなかった。その為に身代わりのおっさんだ、魔導士然としたエラそうな衣装を着てもらい、私はぼろの服と顔を隠すローブを着て下働きとして、彼に甲斐甲斐しくしている。但し、護衛兼見張りは私にずっと追従している。
「でも貴族がなんて?」
「見栄だよ、半分。今までは手に持つ程度しか運べないが、ゴーレム運輸のめどが立てば軍隊は楽になる、それにほら。」
見たテントが揺れている。結構激しいな。
「ああ言うのを連れ込めるだけでも、違う。貯めた連中の殺気が、通る村人怖がらせるからよ、こういう時の女の手配もスコーブの旦那の仕事なんだよ。」
…意外と広いな。そして私も当然。
「でも俺はあんたを守らないといけねえ。絶対にだ。特に貴族は…こっち来い。」
荷物を運び終わると、魔法使いにあてがわれた、十人長と一緒とか言う、ちょっと大きめのテントの中に入る。
「お前がよそ者だろうから言っておく、ここの貴族は、銭ゲバの露店長や売国奴の商人どもよりさらに質が悪い、練習からすれば市民は虫けら・・・にも見てないな。殺すことに何の考えもない、下手すれば、ちょっと時間が経てば増殖するぐらいは考えている。」
「なにそれ。」
「だから、最悪あんたを殺す、又はあんたの手足を切って使うくらいまでは普通にやりかねないのが貴族だ。ここはまだ…金払いがいい分大丈夫だが、ゴーレムをよこせぐらいは普通に言うが、今回は旦那が言い含めておいた。流石に連中もこういう手配をやる顔役を切るほどは愚かじゃない。ただ、行きっか貴族のガキが…。」
「おいお前!魔法使い!」
いきなり入ってくると、魔法使いに向かって…若い男とその連れ3名が鎧を着て立っていた。
「何でしょうか、侯爵令息殿。」
「ゴーレム寄こせ。後、その服もだ。」
「な、これは只来ているだけですし、ゴーレムはあっしの言う事しかし聞きません。」
「関係ない、寄こせ。俺が有効に使ってやる。喜べ。」
「セルトリア様。それは侯爵殿との契約に反します。」
「関係ない!親父はきっと喜ぶ!だから寄こせ!」
流石の護衛のおっさんも…。呆れたようだが…。
「では、こちらになります。どうぞ、ご検分ください。」
そう言って私は、ゴーレムが立っている場所まで連れて行く。
「これがゴーレムか。」
「はい。」
ゴーレムは直立不動で荷車の前に立っている。
「これがか、ならもういいな。」
公爵令息が腰に手を当てる。悪い予感がする。




