26-68 普通のダンマス 状況活用
「本当でしょうね?」
「あの水の秘密が分かればそこを俺達の物にすればいいんだって。
「確かにな。」
ドンガロー達、せこー部以外の顔約3名がなぜか、その日に限り”水場”から人を追い出し、たいまつを三つもって。水場の奥の…裏口に集まっていた。
「お前の口車に乗るんだ。本当だろうな?」
「俺はここが占領できていればいい。後はお前らにやる。」
ダンマスの仕事がやってきたわけだ。遂に初の正式な挑戦者となる。話を聞いているとこうだ。水場は確かにドンガローが占拠していた。そしてそれが評判となり徐々に拡散しつつあった。これが商人や貴族に知られれば、兵士がスラムを蹂躙しかねない。それにこの水場の位置が悪い。そこで、この水場の”水源”を抑え、そこから穴を掘ればいい。その水の水源を二人で分け合い、ドンガローは安全を買う。という感じだろう。そこで腕っぷしがあるドンガローを先頭に…ダンジョンに入ることになったってわけらしい。水源なんてないぞ。そう言えば
「真っ暗だな。」
「だからほら。」
大きな木のたいまつを3人が持ち、奥に歩いていく。
『マギア、起動してくれ。』
『了解しました。』
俺はトラップの起動を命じた。ここは元々奥に来た人間を…殺すためのスイッチだ。
「でも狭いわね。」
「だな…ここ。ここが立派な建物だからな。でもなんでこんなところに?」
「貴族様の建物だって。で、きっとここ、いい貴族様がいるって。」
「あんなきれいな水の水源があれば鍛冶もはかどるはずだ。」
このトラップの話を聞いて…ある禁じ手という話を聞いてしまった。それは柳田論文の”ゴブリン村録”という者だ。ゴブリン村と呼ばれるダンジョンのマスターはダンマスでも上位だ。ステータスはミニゴブリンでさえ勇者の数倍はある。じゃあ、それだけでオークの群れを倒せるか…、それは後で頼んで実践データを取らせてもらった所ダメだった。なら何で、ミニゴブリン一体で歴戦のダンマスを抑えて来たのか…。その答えが”通路の幅”だった。ゴブリンは身長60㎝から1mと小さく、夜目が効きしかも細い。筋力も大したこともない。しかも臆病だ。こう聞くと雑魚だろう。それが狭くて暗い通路だと話が変わる。まず大きめの武器は振れないので、小さい武器しかない。しかも人間は肩がぎりぎりで通ってしまえば”回避ができない”上に防具は大きいのつける事はできない。そして体力勝負となれば、数が多く”逃げる”ことを知っているゴブリンの方が強い。そう、こんなダンジョンで出会うゴブリンは、オークやオーガより怖い。そう言う奇襲戦法にやられ軍隊が敗北した。ステータスが上がればその恐怖が跳ね上がる。しかも人間より数が子沢山で多くなる。狭い箇所なら強くて勝てない。広い所にしても、数で勝てると見込まれればその数で圧殺を狙うゴブリンは人間にとってある意味メタな存在だった。その為、理由が分かった著者の柳田はゴブリン村に挑むに第一階層専門の部隊を編成したという。その位厄介なのだ。ゴブリンは。
「どっち行く?」
「分からん。まずはまっすぐだ。」
そして、ダンジョンのゴブリンにはもう一つ、最悪な事がある。それが”細菌による匂いがない”という事だった。どうもゴブリンが臭いというのは”地面に寝る生活”による物で、動物の臭さに似た物だったらしい。そうなると”臭いの元をDPに変換して維持費に回す”というダンジョンの性質はゴブリンに”無臭性”という機能を与えた。奇襲の確率が上がってしまった。そしてダンジョンに石とかを部屋にばらまいておくだけで、彼らはそれを投石に使う武器とする。
「が!」
顔面に突然当たる石に、先頭を歩くドンガローは額を抑える。その時足元に見えたのは太ももをかじりつくゴブリンの姿だった。
「きゃー!」
慌ててメイリーンが叫び、バランスを崩して、バルグンと倒れた先には複数のゴブリンの顔が…。そう、彼らの冒険はここで終わってしまった。
「あの鍛冶師とやらの魂は確保できるか?」
ゴーストがあるので、魂を確保すれば何とかなるだろう。
『現在魂ストック数が3なので、可能です。但しスキル記憶付きですと、追加費用5万DPが要求されます。よろしいですか。』
「構わない。が、体を指定する必要があるのか?」
『はい、人間はソウルレベル3になりますので、ソウルレベル3のモンスターにのみ転生可能です。』
地味ゴーストもソウルレベル3が可能なんだよな。でも鍛冶屋は欲しかった。
「ちょっと待て、じゃあ、ソウルレベル3のモンスターって生産に魂が欲しいのか?」
『そうなります。ダンマスは人間を殺して魂を確保しないと優秀な人材がそろいません。これはどこのダンジョンでも一緒です。」
「スポナーもか?』
『はい、ただ、ソウルレベル3のスポナーモンスターが死ねば交換で補充可能です。』
あとの二人は性格が悪そうでいらんが、あのオッサンは技術的に欲しい。




