26-55 普通のダンマス うねり
その頃、街ではスラムの人間が大挙して高級娼婦店の”花宮”を襲撃するべく包囲を行っていた。
「何よ!」
「お前ら、約束を反故にして俺達の部下に手を出しやがって!」
南西スラムのリーダー。”瓦のドンガロー”が怒鳴りつける。対するは花宮の店主にして、色街の支配者であるメイリーンである。
「は?私たちそっちに行く必要もないんだけど!}
「嘘いうな!見ろ、こいつらを!」
出されたのはアミールが肩を刺した男たちであり仰々しい傷跡が肩に存在していた。
「何よそれ!}
「どうせ、俺達の所に勝手に店でも作る気だろうが!」
「は?あんた達みたいな臭い爺さん抱くほど私たちは腐っちゃいないわよ!興味ないんだから手を出すわけないじゃん!」
「変なにおいがしたから、どうせお前の部下が来て、調べたんだろうよ、女のガキが来てこいつら刺しやがった。」
「知らないって!いい加減なこと言うならぶっ殺すわよ!」
「お前こそいいが現な事を言うな!」
瓦のドンガローの四角い角ばった顔とメイリーンの妙に化粧で白くされた顔が睨みあう。その間には構成員たちがにらみをつける。
「その女を連れて来なさい。私たちにそんな女はいないわよ。そんな肩をえぐれる奴がいたら私たちが制裁するわ。私の名をかたった馬鹿、ぶっ殺してやる!」
「…お前本気か?嘘入ってねえだろうな?」
お互い争うにはちょっと…決め手を欠いているのは事実だった。
「第一、あんたら相手にするくらいなら、スコーブのガキ相手にする方が儲かるわ。」
スコーブとは4つのスラムの内、アミールの居る南西と隣り合う南東のリーダーで”奴隷商人”だった。主に貴族による”嫌がらせ”や”暗殺”、人員の調達の受注を受ける。スラムの顔役だった。ドンガローは貧民街のトップであるが、荒事がメインだ。がスラムの人間を家族と思うドンガロー一味とスコーブたち”奴隷商人”は考え方が180度違う、ある意味ライバル同士だった。
「確かに…。じゃあ、本当にこっちに来る気はないんだな?」
「いいなら出すけど?但しあんたたちの反対方向向いてね。」
お互い挑発をするが、
「じゃあ、女のガキ…面通しさせるが、そいつを見つけたら渡せよ。俺達もメンツがあるからな。」
「私たちも探してみるわ。私のシマでそんなことしてるならモグリよ!」
この喧嘩の話は瞬く間に辺境都市へヴェール内を駆け巡る。そして門番の情報も流れ、それがアミールという女であることも発覚した。そしてそいつが”よそ者”であることも。が、これがさらに問題になる、ごろつきとはいえ、囲んだ人間を突破し…しかも顔役が捕縛できないほど隠れるのがうまい人間。銅例商人のスコーブにさえ疑いが向く。凄腕をスコーブが連れて来たとか、根も葉もないうわさが年を駆け巡るのであった。がそれとともに…ある施設の噂が流れる。それがアミールが元々いた穴にある…”水場”の噂だった。綺麗な水が流れる場所がある。スラムはその場所の関係上、水がそこまできれいではなかった。が、その場所には清水が流れる。その水はうまく、浸かる事で、体が綺麗になる。という話である。それにより4つのスラムをめぐる関係に大きな亀裂が入ることになるとは…誰も思わなかった。




