26-17 普通のダンマス バミッタ村
ゆっくりと空を見つめると、空は青く、雲はゆったり流れる。こんなまったりライフがしたくて俺は東京から…
「おーい、ミルツ!遊ぼうぜ!」
「…はぁ?馬鹿いってんじゃねえ!俺は空見る仕事で手いっぱいだっつーの!」
「…ふざけんな、来い!俺達…。」
「ミルツ!行こうよ?」
近所の悪ガキの遠吠えを無視しようとしたところ…そこを抑えた一人の少女の姿がある。
「…なんだよ?アミール?」
「ん?遊ぼ?」
「もてるね、俺は。」
「いや、5人しかいないじゃない。子供。」
この村は辺境のため7家族しか家がない。平穏ではあるが辺境である。そんな中での女性の子供は彼女アミール一人だった。後俺を含む4人は男性、そうなると誰かが子供を産むか・・。
「…ヒロイン様は偉いねえ…。」
「そう言わないでよ。あんた。」
アミールの取り合いになる。そうでないなら村を出て、結婚する女性をここに連れ込まない限り村の人口は増えない。そんな限界集落のパミッタ村が俺の故郷でもある。もうこっちの年で4年になる。ただ心境は複雑だ。
「…しかたないだろ?くだらない。」
「経験があるからって、偽装を忘れるなんて駄目よ。」
「…ガキ臭い。」
「そこがダメなんだって。あなた。」
アミール。またの名を”新沼華宵≪にいぬまかよい≫…俺と一緒の転生者であり…俺の妻だった女だ。離婚ではない。だったというのもあるが…。俺は新沼勝頼であり、ミルツ。転生者で俺達夫婦はある飛行機に乗って…死んだ記憶がある。それまでの知識もある。そして俺は転生して2年目に再会した。隣の家の幼馴染だ。そしてお互い思い出した。出会った時にだ。
「わかってるけどよ。」
「ねえ…。」
「分かった、行くよ。」
俺はしぶしぶ立ち上がる。俺はとても複雑な心境にある。アミールはこの村で唯一の女子だ。当然後の3人…その中に村長の息子を含むが、その誰かと結婚しないといけない。
だが、俺の妻の記憶もお互いある。本当なら、連れて逃げたいが、幼すぎる。ここは平和とはいえ、どうも聞いたところ、モンスターもいる、盗賊も闊歩する。そんな外に子供一人行ったところで…何が起こるわけでもない。そして大方、逃げても追手が来る。・・・かどうかは知らんが、おやじとお袋を捨てて逃げる気にはなれん。俺のおやじとおふくろは狩人と主婦って奴だ。とても忙しい。ついでにアミールの両親は農夫で、畑を耕している。そんな細々とした生活。それがこのパミッタ村の毎日だ。俺達は元々スローライフのために郊外の家を借り、リモート出社で稼ぐスローライフをするべく家を探して飛行機に乗っていた。そう、スローライフだ。今みたいな。ただ不満もある。
「おいていくぞ!今日こそは冒険者だ!」
近くの子供たちは時折来る行商人でもある吟遊詩人の冒険譚を聞き冒険者気取りだ。この平和な村でだ。ただ、冒険者がいてい勇者がいるであろう、それはわかる。モンスターも魔王もいるらしい。ただ、眉唾物だ。
「お前!とっとと来いよ!」
村長の息子のダーバリの取り巻き2名が騒ぐ。
「…掘って送って選択肢は?」
「冒険はたくさんのほうが楽しいんだぞ!」
ダーバリたちの勢いが強い。
「…冒険?」
「ああ、近くに変な洞穴を見つけちまった。俺達が冒険するんだ。」
おいおい…。




