25-冬SP16 串焼き片手に空を見上げる
会場前の…というよりイベント会場では…大音量で音楽が鳴っていた。そのまん中にいるのが教授だった、
「何してるの?」
「クックック。音楽に慣れてもらう意味合いで、朝から許可を貰ってな。私のマジックフォン英湯でお祭り系の音楽を流している。私は懐かしくてな。」
「いや、周囲に聞こえるでしょ?」
「ネル君に頼んでこの時ばかりは周囲に発声の魔法を使った消音法で今は会場外に出る音を消している。それの維持もしているんだ。」
「できるの?」
「ボリュームの話を聞いてな、やってみて成功したんだ。」
教授の話によると拡声器の原理は発声の魔法陣に命令で”大きさの倍率”の変更ができるそうで、それを利用して相当小さい値の発生の魔法で障壁を作ることで音を消せるらしい。ただし完全な0にはできないが、環境音と同じレベルまで下げればOKらしい。
「後誰もいないの?」
「あと10分もすれば開場だな。でもまあ…ここまで立派なライブ会場を作るとか…本当に壊すのが惜しいな。」
そう言えば先日の設営で土魔法で作られたこれは前の…観客席が10個あり、それが円形に並んでいる。
「後で聞いてみたら、土を素材にした簡易座席が一番魔法的には設営が楽だが…音響的にどうかわからないからテストしたらしいな。」
「そうなの?」
「普通のライブ会場の場合はもっと固い床か鉄パイプとかのスカスカの床の二択らしい。だから柔らかい土での音響に自信が無かったそうだ。」
確かにそうだ。でも確かに大規模だな。一列200人は座れそうだ。
「じゃ、僕達はそこで待っているよ。」
結局…このライブ会場を使うのは…千鳥万花のメンバーのみとなった。しかも閉鎖して…夜…後10分か。それでライブをするだけになった。というのもこの立派なライブ会場を見せられ、会場のレベルに負ける為にほとんど棄権したそうだ。会場がここまで…よく見ると背部には幻影を投影するモニター迄ついてる。そして、それがいま空中を浮いて、テストしている状況だ。
「あれは?」
「憑依ですね。というよりもシルキーたちが光魔法で幻覚を纏って不可視化してカメラを隠しているようです。私達も覚えておきましょう。」
「そう言う事ね、シルキーが見た映像をそのまま投影するんだ。という事は光魔法持ち?」
「7はありますね。結構凄い奮発してます。これはこれで便利な能力です。」
ちょっと凄いと思ってしまった。そして、僕たちはそのまま自分の屋台に戻った。ハーリスはここに残る事に。そして屋台に戻るとタブレットを取り出し、身内で見える位置に設置した。
「それは?」
店番の読みとお姉ちゃんがのぞき込んでくる。
「コアの監視映像は元々タブレットで見えるんだよ。だからこうしてハーリスが見ている映像をタブレットには映せるんだ。これを見ながら手伝うよ。」
「ありがとさん。でもそこまででもないね、こっちの人気。」
確かに今は冬で寒いから売れると思ったんだけど。
「ほら、あれ。」
…ああ、分かった。お姉ちゃんが、鎧姿で睨み聞かせてるから…来ないんだ。
「…店、守る。」
「守るのはいいけど、中で見ない?」
ここで門番されていては売り上げに問題あるけど、かといって…。
「うむ。」
のっしのっしと歩いていく。よく考えてみたらモンスターの姿でも違和感なく溶け込んでるよねこれ。タブレットもって。
「じゃ、じゃあ、お願いね。」
「分かったよ。」
お姉ちゃんと…使っていないキッチンカーでライブを見ることになった。ライブの感想としては子供音楽番組を見た感じだ。みんなで体を動かして、子供向けの音楽を歌う。ライブらしいかっこいい音楽なんて無かった。だけど、ハーリスがふと周りを見渡した映像の端に映る映像は…嬉しどうな子供の顔。そして最初は激しく鮮烈に、そして中ほどはみんなで楽しくスローテンポに。そして最後は一人ずつソロのバラードを。なんというか、かなり練られたライブだった。まあ観客は度肝を抜かれて、放心状態とかが多かったけど…ライブは終わった。
「…すごい良かった。と思う。」
「だね。」
音楽が終わると夜も更け。路上についた明りが…みんなを家路に誘う。その間価格は下げれないが…飛ぶようにシチューは売れた。が印象が大きかったのはその通りかかった子供が持っていた。音が鳴るおもちゃ。そう、あの露店で配っていたおもちゃをほとんどのお客が持っていたことだ。そしてカタカタ慣らし、それでリズムを刻んていた。なんか…うん。僕としては時代の変わり目を…見た気がした。
今年も一年お疲れさまでした。読んでいただきありがとうございます。来年は一月二日から心証を開始します。次章は”あえて普通のダンジョンマスター”です。お楽しみに。




