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はじめてのまおう~《勇者に俺ツエーさせるRPG》   作者: どたぬき(仮)
第3章 3人の勇者編
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5-30 エアヴァンゲル

 パーティ会場は全員息をのむ展開となった。いつもはにこにこ「あらあら…」とか言いかねない優しいエレノアのここまでの冷たい態度は見たことなかったし、実際ハーリスの画像に映ったエレノアの圧には…。勇者たちも愕然としていた。教授除いて

「何があったのだね?」

「僕はもう気にしていないし、ネルは?」

「…私は、今でも許すことはできない、けど、それと任務は別。だから付き合える。ただ、一緒にお茶もしてたから複雑、」

「…ネルさん…。」

 メイド服を着て料理を持ってきたケイもじっと画面を見ていた。

「長谷川ちゃん…。」

「できればその遺恨について聞かせてもらえないか?後学のために。」

 教授はゆっくりと木のカップに入ったハーブティーを飲む。

「そうだね…エルフたちは聞いたことあるかもしれないが、僕たちは最初の頃、エアヴァンゲルにいた頃がある。」

「何?」

 エムントだけが何かに気が付いたみたい。

「そして僕はそこでパンを作り、人間と手を取り合う事を考えていた。そしてそこでこの塩を開発した、岩塩しかないから、という事でね…。」

 と言うと、ちょうど皿にあった肉を持ち上げる。

「エルフの塩か…。」

「あれは君が作ったのか…。」

「まあね、ネルと、エルフとみんなで作った塩、だけどそこで僕たちはあの日を迎えた…。」

 ケイは何かに気が付いたようだ。そのまま動かずに画面を見つめていた。

「エアヴァンゲルの消失。」

 エムントの言葉にキラリと南が不思議そうな顔をした。

「そう、僕たちは勇者たちがエアヴァンゲルに来た日にあそこにいた。そして僕たちは町ごと消されかかった。ネルを逃がし、僕たちは街がパニッシュメントで手当たり次第攻撃される中、命からがら逃げだした。エレノアと一緒に。そしてそのまま破壊の限りを尽くした僕の同級生の勇者は…。その街が無くなるまで、攻撃を繰り返した。」

 その言葉は全員が沈黙した。

「僕の面倒を見てくれたパン焼き所の親方も、通りにいた常連も、時々水を分けてくれた衛兵もみんな死んでいた。後で聞いたところだと”経験値だー”とか叫んでいたんだと…。」

 ケイが膝から崩れ落ちた音が周囲に響く。

「本当は教授も含め王国を助ける気はなかった。が…ネルの言葉で僕たちは動いた。”あの事が許せなかった”。だから僕は策を考え、行動に移した。エレノアも同じだったんだろう…。」

「本当にあの時いたの?」

「うん。お姉ちゃん。僕はあそこにいた。そして勇者の暴挙も目にしている。」

「そうか、君はあの時の生き残りか…。」

「そういえば言っていたな、勇者に街を破壊されたから、各王は対勇者同盟を作った。そして敗北し、一時的に従うより道はなかったと…。」

「ああ。エアヴァンゲルの領主とは酒を時々の見合う仲でね。それもあって許せなくて、ああなった。あの時ばかりは私情で動いた、後悔してる。」

「ごめんなさい…。ごめんなさい!」

 ケイの絞り出すような声が下げた頭の先から響く。

「だとして、君が…。」

 教授の声を僕が遮る。

「僕はもう気にしてない。気にしてないよ…。」

「だって、私たちがナオ殺そうとしたんだよ!だって・・・だって・・・!」

 そのまま泣いてしまったケイに…。

「これはどういう事だね?」

 教授は座ったまあケイを見つめていた。

「最初に呼ばれた勇者たちは4人。僕と、勇者の茂樹、長谷川さん、そしてケイお姉ちゃんだ。僕はダンジョンマスターとして離されて一人となったが、後の3人は一緒だった。」

「じゃあ、最初の勇者メンバーの一人…。」

 キラリの声がすべてをモノがったっていた。

「ただ、お姉ちゃんと長谷川さんはできるだけ虐殺に参加しようとはしてなかった。だから許せた…僕には…。」

「君はそれでも許すのか?」

「僕たちは過ちを犯す、いつもだ。それにこれ位ならまだ優しい方だよ、もっとひどい地獄を僕は見た事がある。だから気にしていない。まだ修復可能だよ、僕には。」

「いいの?」

 ケイが顔を上げる。

「僕の過ごした9年よりはこれでも優しい、それにお姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんだった。これだけで十分僕にはうれしかった。僕にはお姉ちゃんがいてくれて、助かっているんだから。」

「ナオ!」

 そのまま抱きつき…押し倒してしまった。

「お姉ちゃん…硬いよ。」

「あ、ああ、ごめん。」

「だとすると、あの長谷川君も…。」

「そう、エレノアもまた、許せなかったらしい…ただ僕も含め、守りはするんだけど、攻めは見たことないんだよ、エレノアの。」

 ちょうど画面の向こうではリューネの姿に戻った長谷川が準備そいて、それをじっと見るエレノアの姿があった。

「あまり実は私も少しは魔界に冒険に行くのですが、基本エレノアは別行動になっています。」

 ハーリスが追加の料理を持って来ていた。

「あまりに強さに差があり、戦闘にならないのです。なので、彼女だけは別行動にしていました。他はみんなと冒険し、連携を確かめ合う事が出来たのですが…。」

「そんなところがあるんですか?」

「今映ってるこのダンジョンの一階上のフロア…すなわち”魔界”です。そこですね…。一応私はコアなので監視はしいてるのですが…。」

「歯切れが悪いのではないか?」

 教授たちが画面を見る中、ハーリスは横の椅子に座った。

「あれを見てみるといいですよ、エレノアさんの本気は、本当に怖い。」

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