5-24 教授の章 勇者部隊
周囲は焼け焦げ、村はもはや残骸になっていた。建物の多くは噛みつかれ、人々の残骸がそこにあった。無残であった。私はその村の周りを一週回り…。野良犬がちらほらいるな。
「支援は期待できるかね?」
「捜索中。ちょっとやってみる、みんな、おいで、」
ネルはそう言うと体から6体の少し大きな子供たちが出てくる。ちょっと透き通ってる。
「ネル様?」
「「「「「なーに?」」」」」
この様子にキラリ、南はキラキラした目で見つめていた。
「このあたりにダンジョンあるか探す。」
「はーい。」
みんなの声がそろう…。流石だな。実際ネルはこの6人を率いているのだ。前聞いた時いはこの6体の精霊もダンジョン産でしかも。かなりの強さを誇るらしい。が私の出番もないとな…。
「そうだな、まずは向こう探すといい。あっちに同じ向きの足跡が多かった。だから、向こうから来た可能性がある。そこから始めたまえ。」
「あいあいさー。」
そう言うと精霊たちは、そっちの方向にそれぞれ散って向かっていった。実は彼ら『念話』があるらしく、連携も強い。私も闇の精霊とか言うのを譲ってもらった。まあ、ネルの子たちが闇精霊で遊んでいるので、私も欲しがったのだ。まあ…私も年甲斐もなくはしゃぐ当たり老けたものだ。ペットもあの安いアパートだと匂いが染みつくからこういう臭いが薄いのが好きでねぇ。が、今は出さない。向こうに任せる。
「すごいんですね。」
「ネルさんはやっぱりすごいです。」
新人の勇者たちの輝きは凄い、こういうのに憧れるのは今も昔も変わらないのか…外見だけなら私のほうが若いらしいが…。さてさて…。やはりこうも平和だと勘が鈍る、ナオ相手に神経衰弱かゲーム機もあったがあれはに数億DPになっていたからな…手が出なかった。ちぃ…せめてシューティングゲーでもあれば楽なのだが。そこは我儘という物か…。仕方ない…今度色々考えておこう。
「君たちも勇者なのだぞ、少しは気を張りたまえ、もうここは戦場なのだからな。クックック。」
「でも、襲われたあとなんでしょ?もう来ないんじゃ?」
「よく考えてみたまえ。相手は頭があるんだぞ。しゃべる骸骨の話を忘れたか!」
「あ、そうでした。」
キラリは慌てて剣を抜く。いや、実際君は魔法使い系だろ。能力。魔法自体はギルドのマスターというネルの直属の部下が行い、ちゃんとリューネもレッスンをしていた。その為か、実際キラリは面白いほどに成長していた。精神的に。あれが男というのがむしろ惜しい。最近はああいうのが流行りなのは分かっていたのだが、やっぱりああいうのは性に合わないな…。さて、そろそろか。
「そろそろ第一陣来るぞ。」
「え?」
さっきちらっと見た犬がずっとこっちを見ていた。大方報告か見張りだろう。ならば。当然私たちを襲撃してくる、ネルの話だと、”ダンジョン領域”が設置してあればそこの目に見えない範囲から
ダンマスはDPある限りいくらでも召喚できる、ただし”目に見えない”がポイントだ。見えている範囲で放置してる限り、連中は”死体を回収してDPに変換”できない。すなわち有限化できる。
後で燃やしておけば回収も不可能になる。そう聞いている。だからこそ、ここでわざと待った。連中に”視界の開けた場所”で襲わせ、死体回収させないためだ。オオカミが遠吠えをする。そして、足跡のあった方の反対側から数十体のウルフたちが湧き出てくる。
「ネル!」
「リーメ、少し下がる、援護お願い。」
「了解しました。勇者様、頑張ってください。」
リーメの声に勇者二人の顔が引き締まる。…私はあれがスキルと分かっているからいいのだが。わからなければあれ、絶対理解できないはずなのだね。だが今回は彼らに経験を積ませ、レベリングが
目的なので、我々はここで、彼らのバックアップである。と言っても背後打ちを警戒し、それとない位置に配置して、私は周囲に目を配る。彼らは若い、新兵だ。FPSで一番つらいの新兵が固まる序盤だ。それ位新兵は手に負えない。そこから這い上がるベテランは文字通り少ない。それ位戦闘自体の経験が欲しいのだ。ステータスがあろうが、無駄打ちするならなんという事もない、置物に等しい。それを彼らに学んで欲しい。がそう言うと、一気に振り返り、背後討ちの部隊に突っ込む。意外と賢しいな。連中は。地面をはい、一気に潜り込むとナイフを相手の喉元にねじり込む。刺さったの
を確認するとそのまま引き抜く。格闘ができるなら…私もこういう道に入ったのだろうか…が、やっぱり、リアルは好きじゃない。そして、獣をけ飛ばすと闇精霊に命令を下す。
『この辺にある死体を全部ダークボックスで回収。それが終わり次第南たちに向かい護衛しつつ死体回収メインで。決して見つからないように。』
『了解。向かう。』
私の陰から抜け出た黒いボールはそのまま周囲の死体を食い散らかし、そのまま潜むように彼らの陰に埋もれた。どうして私の契約した精霊はああも可愛げがないのか…。いや、孫見せられても
困るからちょうどいいかもしれないが…。その頃の南やキラリたちはそれはもう…さすがにうまいな。が、あの魔力の放出量だともう少し出てくるか。それか…。
「リーメ君。そろそろかね?」
「鬼ちゃんたちが何か巨大な岩を発見したそうなので、もしかしたらそこかもしれません、今向かってます。」
やっぱり主人公は向こうに見えるな…。
「ネルにも伝えておいてくれ、私は少し休憩してる。が、そろそろ70か、向こうの防衛が速いかまたはこっちを殺しに来るか…。」
「はい。」
昔はリーメ君はここで腰を据えて休憩するのだが。今はもう戦士の顔だ。周囲の警戒を怠らない。私は立ったまま目をつぶり、気配を読みつつ体を少し休ませる。呼吸を整える。
「初めてだけど、うまくいきそう。ダンマス確保…いや、死ぬ気みたい。」
「何?」
「もうDPがない。だからお前ら殺す、だって。あの子たち、伝えてきた。」
「はい、こちらも確認しました。生きていれば何とでもなるのに…。」
「ああいう手合いも増える、覚えておくことだ、そして、これからこういうのはどんどん増える。泣いている暇はない。」
「はい!」
「さて、向こうは…息も絶え絶えと言ったところか、向こうは任せればいい、リーメ君頼んだ。」
「はい。」
そう言うと、懐からコインを取り出した。銅貨って奴だ。実際これ大きさが小さいが、スナップ利かせて投げるにはちょうど良く、投射のスキル持ちの彼にとってはこれも武器になるのだ。むしろ
下手な矢よりも安く、強い。それでキラリたちの視界の端にあるウルフたちを屠っていく、実際リーメはスキルも高いので…銀貨の袋があればワイバーンでも叩き落す。それくらいの火力はある。
そして、戦闘が終わり、キラリは少し傷が…そこを南が回復で直していくようだ…若いねえ、私があの頃にあんなことされれば惚れてしまうかもしれん。
「終わりましたね。あとはどうします?」
「ネル君がそれとなく誘導して、コアだけ拾わせればいい。本当に、生きていれば何とかなったものをな…。」
「教授!終わりました。そっちは終わりました?」
「クックック、君たちがほとんど持って行ったぞ、…私の肉はまずいそうだ。だからまあ、お疲れ。後はネル君待ちだ。ただ、これからが本番だ。今のうちに消化のいいものを口に含め。食べれる
ときに食べておけ!発見し次第そっちに向かう、村を襲うバカどもをつぶさないと今度はもっとひどくなるぞ!」
「はい!」
いいねえ、新兵は、あの課長どもがこれ位素直なら、もっと楽だったのに…。
「見つかった。少し外れたところある、いく。」
そう言うと、ネルはあのダンジョン跡地を指さすのだった。




