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リストカットとバニラアイス  作者: 君名 言葉
14/20

第14話 私の幸せと彼の幸せ


 ◇


 夜中まで誰かと喋ったり遊んだりするなんて経験は、中々あるものじゃない。

 そして私は、それが修学旅行の夜みたいで大好きなのだ。

 夜中とは特別な時間。みんながセンチメンタルになり、ポエマーになり、素直な言葉を連れてくる。

 今は、風太くんと共に、人生ゲームを楽しんでいる。

「よし、私ゴルフ場経営しまーす」

「僕はマンション買収しますね」

 端から聞けばぶっ飛んだ会話内容だ。人生ゲームは、少しだけ生きるのが楽しくなるゲームだと、私は思っている。

 もはや、現実逃避ゲームに改名した方が良いくらいだ。


 それにしても、私の部屋に高校生の男の子がいるというのも不思議な感じだ。東京都の条例うんぬんは知らないが、バレなければ問題ない。

 一か月前までは、この場所にいるのは違う男だった。

 平気で私の部屋で煙草を吸うし、お酒だって私以上に飲む。私よりすぐに寝ちゃうくせに、酔った時だけ好きと言ってくれた。

 それが、今では役交代だ。私は、ここにいる相棒に、どうしようもなく想惹かれている。泊めたのだってそうだ。もっと彼のことを知りたかった。

 もっと時間を共有したかった。誰にも取られたくなかった。

 それでも、この感情が恋愛感情であるとは肯定しなかった。

 私はただ、桔梗ちゃんみたいに、純粋な相手と普通に恋がしたかった。

 彼にとって、私が迷惑なのは十分に承知している。

 それでも、彼の素朴な、くしゃっとした笑顔が大好きで、その度に、もう少しだけわがままを許して、と思ってしまう。


 目を瞑り、いつもより呼吸をゆっくりにした。

 もしも神様がいるのなら、お願いです。

 これ以上、私に幸せはいりません。もう十分すぎるくらいです。

 その分、彼に、この優しくて真っ直ぐな彼に、あげてください。


 だんだんとお酒が回ってきた。

 嫌だ。まだ寝たくない。ずっと、このままずっと……


 私の視界はだんだん闇に染まっていく。

 次に目を開けた時、世界の何も変わっていないことを切に願い、私の意識は瞼に押し潰された。


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