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冒険家になろう! スキルボードでダンジョン攻略(WEB版)  作者: 萩鵜アキ
3章 最凶の魔物を倒しても、影の薄さは治らない
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鹿の動きを食い止めよう!

 レア(0) 性別:女

 スキルポイント:0→8

 評価:二丁葉撃魔

 加護:地下宝守護神<プタハ>


-生命力

 スタミナ1

 自然回復0


-筋力

 筋力3


-敏捷力

 瞬発力1

 器用さ2


-技術

 -武具習熟

  -投擲3

   二丁投擲1→2


-直感

 探知1


-特殊

 宝物庫2

 加護 MAX



『ちかほ』のモンパレで希少種を倒した分と、15階まで到達した分とで、レアのスキルポイントが8まで増えていた。


「レア、スキルポイントを振りたいんだけど、振ってもいい?」


 好きにすれば?

 レアが興味なさそうに葉を振った。


 興味ない素振りをしているが、彼女は本当に興味がないわけではない。

 葉の揺れ方に『晴輝に任せれば上手くいく』という信頼感がにじみ出ている。


 ならば任せてもらおうじゃないか。

 晴輝は脳内で分配シミュレートし、実行。



 レア(1) 性別:女

 スキルポイント:8→0

 評価:二丁葉撃魔→二丁葉撃帝

 加護:地下宝守護神<プタハ>


-生命力

 スタミナ1

 自然回復0


-筋力

 筋力3→5


-敏捷力

 瞬発力1→2

 器用さ2→3


-技術

 -武具習熟

  -投擲3→5

   -二丁投擲2→4


-直感

 探知1


-特殊

 宝物庫2

 加護 MAX



 レアは完全攻撃特化にした。


 攻撃は最大の防御だ。

 攻撃が強化されれば、魔物の攻撃を今よりも安全に弾けるようになる。

 それだけで生存率がぐんと上がる。


 今回晴輝は、一切振り惜しみをしなかった。

 もし惜しめば、それだけで全滅する確率が高くなってしまう。


 次はエスタだが、さてどうしたものか……。

 晴輝は顎に手を当ててボードを睨んだ。



 エスタ(0) 性別:男

 スキルポイント:2→7

 評価:硬殻虫

 加護:辟邪神(神虫)


-生命力

 スタミナ0

 自然回復1

 防疫0


-筋力

 筋力2

 被損軽減5


-敏捷力

 瞬発力4

 器用さ1


-技術

 -武具習熟

  甲殻5


-直感

 探知1


-特殊

 武具破壊3

 加護 MAX



 これまでの動きから、晴輝はエスタに攻撃が向かないことがわかっている。


 そのため現在の状態からスキルのみで攻撃タイプに持って行くのは、さすがに非効率だ。

 ならば残された手は1つしかない。


「申し訳ないけど、エスタは防御特化にするよ?」


 攻撃が出来ないことは、エスタにも理解出来ているのだろう。

 頷く触角が、少し寂しげだ。



 エスタ(0) 性別:男

 スキルポイント:7→0

 評価:硬殻虫→硬殻帝

 加護:辟邪神(神虫)


-生命力

 スタミナ0→1

 自然回復1

 防疫0→1


-筋力

 筋力2→3

 被損軽減5→7


-敏捷力

 瞬発力4

 器用さ1


-技術

 -武具習熟

  甲殻5→7


-直感

 探知1


-特殊

 武具破壊3

 加護 MAX



 出現した防疫に振ったのは、晴輝の直感だ。


 エスタはウナギのヌメヌメに囚われても、朱音とは違い自力で脱出することが出来た。

 おそらくそれが、防疫の効果だ。


 黒紫色の塊がなんなのかはわからない。

 だが色は弱体化系のデバフのように見える。


 なので一応、晴輝は免疫に1つ振ってみた。

 有効かどうかは完全に博打である。


 もし有効であっても、デバフを防御出来るのはエスタだけである可能性が高い。

 スキルポイントを1振るだけの価値があったかは、実に怪しいところだ。


 2人にポイントを振り切ったあと、晴輝は自らのツリーを表示する。



 空星晴輝(27) 性別:男

 スキルポイント:9→11

 評価:隠倣剣師→隠倣剣王

 加護:打倒神<メジェド>


-生命力

 スタミナ3

 自然回復2


-筋力

 筋力4


-敏捷力

 瞬発力4

 器用さ4


-技術

 -武具習熟

  片手剣4→5

  投擲2

  軽装3→4

 蹴術2

 隠密3

 模倣3


-直感

 -探知3→4

  弱点看破1


-特殊

 成長加速 MAX

 テイム2

 加護 MAX



 時雨と試合を行ってから晴輝の動きが如実に良くなった。

 その結果がこうして、スキル上昇という形で現れている。


 また、延々と探知を行い続けたおかげで、探知のスキルも上昇した。

 おかげで監視を行い始めた当初より探知による疲労は低減している。


 さてどうする……。

 晴輝は必死に頭を働かせる。


 レアとエスタのスキルポイントは全て使い切っている。

 ここで晴輝も同じようにポイントを使い切れば、予想外の事態に陥ったときに対処出来なくなる。


 ある程度のバッファはあった方が良いだろう。

 自分だけポイントを残すのは小ずるいようだが、確定した未来なんてものはないのだ。

 出来るだけ柔軟な対応が取れるようにしておいた方が良いはずだ。



 空星晴輝(27) 性別:男

 スキルポイント:11→4

 評価:隠倣剣王

 加護:打倒神<メジェド>


-生命力

 スタミナ3→5

 自然回復2


-筋力

 筋力4→5


-敏捷力

 瞬発力4→5

 器用さ4→5


-技術

 武具習熟

  片手剣5

  投擲2

  軽装4→5

 蹴術2

 隠密3

 模倣3


-直感

 探知4→5

  弱点看破1


-特殊

 成長加速 MAX

 テイム2

 加護 MAX



 一通りのメインスキルを5まで引き上げた。


 疲れにくくなったとはいえ、監視は酷く摩耗する。

 異変が起こったとき、出来るだけ万全な状態で対処したい。

 スタミナと探知も、まとめて5まで引き上げた。


 残るポイントはバッファだ。

 これだけポイントを余しても、対処出来なければお手上げである。


「……なるべく引き上げた能力を体に馴染ませたいところだけど」


 スキルを上げたら、大幅に体の感覚が変わってしまう。

 感覚が変わると、凍結路面でコントロールを失った車のように暴走してしまう。

 いくらパワーが上がっても、うまく扱えなければ事故が起こる。


 なので晴輝は、1度監視を止めて練習を行いたかった。

 だが、監視が出来るのは晴輝だけ。


 もし晴輝が席を外したときに希少種が動けば、全ての対応が後手に回ってしまう。

 これまで監視を続けてきた努力が水の泡だ。


 万が一を考えると、晴輝はこの場から動けなかった。

 このままでは、“その時”まで能力を体に馴染ませることが出来ないかもしれない。



「そろそろ休んだ方が良いんじゃないですか?」


 晴輝と朱音のあいだを行き来する火蓮が、晴輝にそう提案した。


 監視を始めて3日間。

 晴輝はずっとゲート付近に身を潜めていた。


 当然ながら、睡眠はほとんど取れていない。

 しかし晴輝にとってはさして苦痛を感じるほどのものでもない。

 3日3晩寝ずに仕事を行っていた過去と比べれば、体も頭も動かさない監視など休憩に等しかった。


 神経が鋭敏になっているいま、意識の半分が眠っていても探知に反応があればすぐに意識を覚醒させられる。

 熟睡は出来ないが、完全徹夜状態ほど晴輝は体調が悪くはなかった。


 鹿は相変わらずポップしたワーウルフに黒紫の塊をぶつけ続けている。

 魔物を集団化させてスタンピードするような気配は一切ない。


 後々のことを思えば一旦地上に戻って休んだ方が良いか……。


「空星さんの依頼ですけど、受けてくれた方が1人だけいたみたいです」

「おお! ――って1人か」


 依頼を受けてくれた冒険家がいる。

 その言葉で浮かび上がった気分が、一気に下降した。


 いまは1人でも多くの冒険家の手を借りたい。

 しかし、たった1人増えたからといって、状況は好転するだろうか?


 おまけに、もしK町に冒険家が来ても、15階に到着するまでには相当時間がかかる。

 車庫のダンジョンにはまだほとんど他の町から冒険家が訪れないので、ゲートが使えないのだ。


 その前にボスが動き始めたら……。

 考え出すと、晴輝は気分がどんどん落ち込んでいく。


 すぐに気持ちの切り替えが出来ないのは、徹夜続きの弊害だ。


「……そうだ。新宿駅奪還作戦が始まるらしいですよ」


 暗い雰囲気を吹き飛ばすように、火蓮が明るい声を発した。

 ほんの少しだけ、空気が軽くなる。


「そうか。ついに始まったのか」

「はい。マサツグさんにベーコンさん、あと他のランカーの方達も集まったみたいです」

「ならきっと成功するだろうな」


 マサツグにベーコン。それに他のランカーが一堂に会したのだ。

 いくら最強ダンジョンの中層の魔物とはいえ、日本最強集団(ランカー)の進撃を押しとどめることなど出来ないだろう。


 火蓮からの朗報に、晴輝は少しだけ胸が熱くなった。

 新宿で同志達が頑張っている。

 なら自分も、負けてはいられない。


「……よっと」


 晴輝は立ち上がり、体を入念にほぐしていく。

 長時間同じ姿勢で居たせいで、筋肉がカチカチだ。


 体をほぐすと、晴輝は取り寄せたスタミナドリンクを一気に呷った。


 どろっとした液体が食道をゆっくり降下し腹に進入。

 途端に体全体が甘く痺れ、恐るべき速度で気だるさが消えていく。


「…………かなり効くな」


 その効果に晴輝は顔を引きつらせた。

 このドリンクは以前、道具屋を覗いた時の記憶を頼りに、朱音に取り寄せてもらったものだ。


 道具屋では『飲むとスタミナが回復するかも?』というポップが付いていた。

 確かに、スタミナは回復した。

 だが……。


 晴輝は空になった瓶を眺めながら、思う。

 これは体に良いのだろうか?


 クセになるとか、あとでぶり返しがくるとか、危険な副作用が無ければ良いのだが。

 効果がありすぎて怖い。


 もしこれがあれば、晴輝は24時間どころか365日働かされたことだろう。

『体は元気なんだから休まなくても大丈夫だろ?』とかなんとか……。

 自らの想像に怯え、晴輝は背筋を震わせた。


「これが、第一次スタンピード前に発売されてなくてよかった」


 ほっと、晴輝は胸をなで下ろす。


 晴輝が体調の確認をしていると、探知スキルがこれまでにない希少種の動きを察知した。


「――ッ!」


 咄嗟に晴輝は身構えた。


 短剣に手を添え、姿勢を低く保つ。

 晴輝の雰囲気に、火蓮も素早く反応。

 腰を落として、杖を両手で握りしめた。


 晴輝が目をこらした先。

 いままでワーウルフを倒す以外、大きな動きを起こさなかった鹿が、ゆったりとした足取りでこちらに近づいてきていた。


 ただ歩いているだけなのか。

 それともこちらが見つかったのか。

 晴輝は思いを巡らせる。


 だが、


「――ッ!!」


 鹿から明確な殺意が晴輝に飛んだ。

 あまりに凶悪な殺意の塊に一瞬にして呑み込まれる。

 しかしそれを、晴輝は気合いで抜け出した。


「火蓮すぐに上に行け! 朱音に希少種が動いたと伝えろ!!」

「は……」


 飛んできた殺意に抵抗出来なかったのだろう。

 背後で火蓮が息を詰まらせた。


「早く!」


 怒声で彼女を揺さぶり、晴輝は抜剣。

 前に歩み出てボスの意識を引きつける。


 本気になれば、晴輝らをここから逃がすことなく嬲り殺すことも出来るのではないか。

 そう思わせるほどの威圧が、鹿から感じられた。


 殺意の呪縛から抜け出した火蓮が晴輝から離れ、ゲートに向かう。

 それと同時に、鹿も走り出した。


 逃がさないつもりか。


 晴輝は自らに活を入れる。

 せめて火蓮が逃げる時間だけでも……。


 凄まじい速度で走り寄る鹿に、短剣の切っ先を向ける。

 しかし、


「――――な!?」


 晴輝は突如、足に絡みついたなにかに意識を奪われた。

 その意識の隙に、鹿が口から黒紫の塊を吐き出した。


「――カハッ!!」


 晴輝は、避ける事さえ出来なかった。


 黒紫の塊が、晴輝の腹部に衝突した。

仮面さんの依頼を引き受けたのは一体誰なんだ!?(棒読

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