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冒険家になろう! スキルボードでダンジョン攻略(WEB版)  作者: 萩鵜アキ
3章 最凶の魔物を倒しても、影の薄さは治らない
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中札内ダンジョンで依頼をこなそう!2

【枝豆】中札内ダンジョンについて語る書 11【鶏肉】


112 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 誰か助けてくれ!

 中札内にヤバイ奴来た!!


113 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 ヤバイ奴ってなんだよ?

 魔物か?


114 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 さっぱりわからん

 だがヤバイ

 とにかくヤバイ


115 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 ヤバイだけじゃわからん

 特徴を言え

 もしかしたらどこぞの冒険家かもしれんだろ


116 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 仮面が宙に浮いてた

 首は羽

 背には植物

 体は鱗

 鞄から触手が生えてて、体に虫が寄生してた!


117 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 それなんてクトゥルフwww


118 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 幽霊の正体見たり枯れ尾花ってな

 見間違いじゃね?


119 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 釣り針デカすぎw


120 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 いやマジだって!

 マジでダンジョンに入っていくところを見たんだよ!


 みんな信じてくれよぉ・・・



【今日も五月雨】 管理人:時雨


『久しぶり』


 今日は札幌。

 北海道は、思ってたより暑い。


 遠征してから、始めてマイページを見た。

 DMがすごいことになってた。


 みんな、ごめんなさい・・・。

 返事、頑張って書く。


 札幌に来る前、面白い人に会った。

 仮面の人。

 今後が楽しみ。


 追伸。チームメンバーへ。

 もう、充電器忘れないようにする。

 頑張るから、赦して・・・。


          *


 晴輝はダンジョン1階から、魔物を眺めながら進んで行く。


 始めて訪れるダンジョンではゲートが使えない。

 1階からスタートになるので、晴輝は先を急ごうかと考えていた。


 だが、晴輝はゆっくり進むことにした。

 理由は2つ。


 1つ目は、ここが訪れたことのないダンジョンだということ。


 どんなことでも、目にすることで経験になる。

 ダンジョンと、そこに現れる魔物をじっくり観察することで、普段では得られない経験を積むことができる。


 それが遠征の、一番の醍醐味である。


 2つ目は、エスタだ。


 レアが背中の鞄に収まっているので、エスタは必然と地面を歩く形になる。

 だがどうも、エスタはそれが面白くないようだ。


『姉さんばっかり狡い!』

 とでも言うようにお尻をプリプリ振って、晴輝の足に絡みついたり、なんとか肩によじ登ったりを繰り返す。


『邪魔しないの!』とレアに怒られてもなんのその。


 普段、晴輝はあまりエスタと絡まない。

 存分に甘えさせてやろうと放置したが、いささか戦闘の邪魔だった。


 そこで、戦闘中でも邪魔にならないエスタの居場所を、予め浅い階層で、戦闘を重ねながら探すことにした。


 候補地は肩と背中と腹。


 背中はレアが強く所有権を主張し却下された。

(俺の背中は俺のものじゃないのか?)


 続いて肩だが、レアのノズルがぶつかるわ、晴輝が攻撃するとすっ飛ぶわで、エスタが散々な目に遭ってしまった。


 なので、最終候補地。

 エスタには腹に縋り付いて貰うことになった。


 きちんと密着すれば赤いバックル。

 デスメタルのステージ衣装っぽく見え……ないこともない。


 そこから数度戦闘を行うと、エスタがより安定する場所を見つけたらしい。

 腹の少し下、ベルトのバックル辺りに留まって動かなくなった。


 時々晴輝の腰から素早く飛び出し、魔物に甲殻ごとぶつかっていく。


 まるで弾丸を射出出来るベルトのようだ。

 体重と筋力があるので、エスタが飛んでも晴輝はさして衝撃を感じない。

 だが上層の魔物は違うようだ。


 エスタがぶつかると、魔物から骨の折れる鈍い音が響く。


「ああ……俺のエスタがこんなに立派になって……」


 ジャンプだけで魔物を倒せるなんて、感動だ。

 晴輝は目に涙を浮かべた。


 ブラックラクーンすらも、エスタはたちどころに倒してしまう。

 やはりスキルだけでなく、基礎レベルも初期の晴輝より高いようだ。


 エスタの働きぶりに感動しながら進むと、晴輝は冒険家の姿を発見した。


「――うわッ!?」


 晴輝の姿を見た冒険家が、ぎょっと体を強ばらせた。


 だが冒険家は現在、戦闘中。

 硬直が大きな隙を生んだ。


「レア」


 晴輝の合図で、レアがいままさに冒険家を攻撃しようとしていたブラックラクーンを吹き飛ばす。


 吹き飛んだブラックラクーンは、なにが起ったのかわかってない様子で、周囲を二度ほどぐるりと回った。


 魔物は殺さず、ノックバックのみ。

 一言、名前を口にしただけで、晴輝の思いがレアに十全に伝わった。

 そのことに、晴輝はつい微笑んでしまう。


 素晴らしいな。


 ――あ、エスタ。

 攻撃はもういいからな?


 腰でしょんぼりするエスタを、晴輝は慰めるようになでつけた。


「驚かせてすまない。戦闘、頑張ってくれ」

「……あ、はい」


 手を上げて、邪魔にならぬよう退散する。


 このようなハプニングがありながらも、背中にレア、腰にエスタを抱え、晴輝は順調にダンジョンを探索するのだった。


          *


【枝豆】中札内ダンジョンについて語る書 11【鶏肉】


149 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 誰かヘルプ!

 ダンジョンにヤバイのが出た!!


150 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 またかよ

 なにが出たんだ?


151 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 仮面だよ仮面!!

 浮いた仮面を見た!

 前の書き込みにあったのと一緒


 アイツが更に下に潜ってった!


152 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 魔物がダンジョンに戻ってったのか

 それともダンジョン攻略中の冒険家なのか


 もっと詳しく教えてくれないか?


153 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 戦闘中に突然宙に浮いた仮面を見たからぎょっとしたんだ

 そしたら仮面の男から何か飛んできて魔物を吹き飛ばした!


154 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 ただ助けてくれただけじゃねえかよ!


155 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 おう

 見た目とは違ってなまら気さくな感じだった


 でもすげえコワイ!

 見た目がやばい!


 ふえぇ・・・

 このままじゃ怖くてトイレいけないよお


156 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 気さくねえ

 んーなんか引っかかるな


 仕方ねえ

 ちょっくら別の冒険の書で調べてくるわ


157 名前:鼻から枝豆を飛ばす名無し

 頼んだ!


          *


【気づかれる存在感への道】 管理人:空気


『中札内ダンジョンに到着!』


 どうも空気です(^o^)


 本日はとある依頼を受けて中札内ダンジョンにやってまいりました!


 中札内ダンジョンは、道内でも有数の食料系ダンジョンですよね!

 ただ食料ダンジョンのわりには、冒険家の数がすごく少なかったんですよ。


 冒険家が沢山いて、食材集めに勤しんでる風景を想像してたんですが、ダンジョン内部はかなり閑散としてました。


 みんなが新宿奪還に向かっちゃったわけじゃないと思うんだけど・・・。

 なんでだろ?(= =ウーム


 ひとまず今日は5階まで到達。

 1日で5階到達はかなりのハイペース!(>_<)ガンバッタ


 明日からはさらに奥に足を踏み入れます。

 この調子で、依頼も最速で終わらせるぞ!


 これでまた一歩、存在感が得られる未来は近づいたかな? かな?


          *


 晴輝が初日で探索を済ませたのは5階まで。


 ダンジョンはビッグラットから始まり、ブラックラクーンも出現した。

 先に進むに従って、少しずつ魔物が強くなっていく。

 車庫のダンジョンとは違って階層がレベルに直結しているので、初心者冒険家にとっては、実に良いダンジョンだ。


 翌日は5階からスタートし、9階のゲートをアクティベートして終わった。


 かなり速いペースで進行している。

 それもこれも、晴輝が大幅にレベルアップしたから……ではなく、レアとエスタが互いに頑張り合っているおかげである。


 エスタのスタンバイ位置が決定してからというもの、晴輝はほとんど戦闘には参加していない。


 参加する前に、レアとエスタが魔物を蹴散らしてしまうのだ。


 晴輝は戦いたいのだが、対抗心を燃やしているのかレアもエスタもちっとも魔物を譲ってくれない。

 実に残念だ……。


 だが、いまのところ出現しているのはどれも戦ったことのある魔物ばかり。

 無理を通して2人のやる気を削いでしまうよりも、晴輝は保護者として見守ることにした。


 もし強い魔物が現れたら、そのときに全力で戦えば良い。



 朝になるとレアとエスタを抱え、晴輝は9階に移動する。


 9階には中層への門番が出現する。

 念のために、晴輝はスキルボードを取り出した。


 エスタ(0) 性別:男

 スキルポイント:3→11

 評価:甲殻虫


 9階まで移動したことで、エスタのポイントが大幅に増えていた。


 中層の門番の強さは、14階や15階の通常モンスターと遜色がないと言われている。

 晴輝とレアは門番と戦ったことがあるが、エスタはない。


 万が一を思うと、エスタにポイントを振っておいた方が良いだろう。


「エスタ。なにか欲しいスキルはある?」

「(カサカサ)」


 エスタが晴輝の胸まで移動し、スキルボードをのぞき込んだ。

 そして触角で、いくつかのスキルに触れる。


「……うん、硬くなりたいんだな」


 晴輝の言葉に、エスタが器用に頷いた。


 ならばお望み通りのスキル振りにしよう。

 晴輝はスキルをタップする。



 エスタ(0) 性別:男

 スキルポイント:11→2

 評価:甲殻虫→硬殻虫


-生命力

 スタミナ0

 自然回復0→1


-筋力

 筋力1→2

 被損軽減2→5


-敏捷力

 瞬発力3→4

 器用さ0→1


-技術

 武具習熟

  甲殻4→5


-直感

 探知0→1


-特殊

 武具破壊3



 スキルを上げたので、晴輝は時間をかけてエスタに感覚の調整を行わせる。


 9階に現れる魔物はキックコッコ。

 この程度なら、多少感覚の狂ったエスタでも問題なく倒せるはずだ。


 スキルは1つ上げただけでも、かなりバランスが狂ってしまう。

 そのためエスタははじめ、己の変化に戸惑っていたようだ。


 だが次第にスキルの上昇した己の肉体を乗りこなしていく。


 筋力を上げたからか、エスタのジャンプが晴輝の腹に響くようになった。


 悪いことにエスタの足場は、丁度ムカデの胸当てが被っていない。

 あいだにリザードマンの上衣はある。だが上衣は防刃効果はあれど、衝撃減衰効果はなかった。


 今はまだ痛みはない。

 だがいずれエスタがジャンプする度に、晴輝がダメージを食らうようになるかもしれない。


 そうならないように、腹に鉄板を入れるか、あるいは胸当てを鎧にするか。

 いずれかを考えておいた方が良いか……。

 ひとまずは腹筋を鍛えて様子を見ることにした。


「……お?」


 エスタが奮闘している横で、晴輝は目を丸くする。

 これまで現れていた白色とは違う、茶色のキックコッコが現れたのだ。


「まさかこれが、中札内名物の地鶏!?」


 遠く離れたダンジョンでも、同じ魔物が出現することはままある。

 だが、同じ魔物でもそのダンジョンによって固有種が出現することがある。


 たとえば車庫のダンジョン。

 タマネギの魔物の中に、希に赤紫のものが混ざる。

 白いものが普通のタマネギなのに対し、赤紫のものは車庫のダンジョンの固有種だ。


 レベルや強さは同じだが、見た目が少し違う。


 他にも、食せる魔物であれば味に変化がある。

 たとえば白いタマネギは焼かなければ食べられないが、赤紫のものは生でも食べられる。


 中札内のキックコッコは、北海道固有種の中でも割と有名である。

 なんでも、鶏肉の味が濃厚だとか。


「…………じゅるり」


 涎をすすると、茶色のキックコッコの腰が引けた。


 当然、逃がすわけがない。

 晴輝は時雨が使っていた最短移動方法を用いて接近。

 一瞬で首を跳ね飛ばし血液を抜く。


 慣れた手つきで皮を剥ぎ、部位ごとに切り分けた。

 この間、1分にも満たない。

 スキルボードにもし『解体』があれば、晴輝のそれは既に熟練の域に達していることだろう。


「よし、早速味見だな!!」


 帰ろうとした晴輝を、レアとエスタが引き留める。

 レアは頭をペシペシ叩き、エスタは足に絡みついて駄々を捏ねる。


「……っく!」


 残念ながら、地鶏の味見はもう少し先になりそうだ。

>>ダンジョン内部はかなり閑散としてました。

なんで人が少ないんだ……(白目

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