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冒険家になろう! スキルボードでダンジョン攻略(WEB版)  作者: 萩鵜アキ
2章 冒険家レベルが上がっても、影の薄さは治らない
54/166

戦況を立て直そう!

 全てのベロベロを倒し終えた晴輝は、その場に膝を突いた。


 喉が痛い。

 呼吸が熱い。

 気持ち悪い。

 咳をすると、血を吐きそうだ。


 カラカラの喉を、持参した水筒で潤す。

 その水を、たっぷり使ってレアのプランターを湿らせた。


 近くにはもう、生きている魔物の気配がない。

 先ほどまではあったヨシの気配もなくなっている。

 きっとモンパレ討伐の成功を確認してすぐに、カゲミツの応援に向かったのだろう。


 このまま倒れられたら、どれほど気持ち良いだろう?

 快楽に誘惑される。


 だが誘惑を断ち切り、晴輝は呼吸を整える。


 カゲミツから貰った回復薬を服用。

 体に付いた傷が、瞬く間に癒えていく。


 傷が癒えると同時に探知を拡大。

 カゲミツらの状況を空間から把握する。


「……まずいな」


 カゲミツらが戦っている場所はすぐに見当がついた。

 だがどうも、戦いは劣勢であるようだ。


 カゲミツがボスに推されてる。

 また離脱したまま動かないメンバーもいる。


 丁度その時、晴輝の傍にある大量のヌメヌメウナギが、ズププ……とダンジョンに取り込まれ始めた。


 討伐を始めてから約3時間。

 3時間ものあいだ1体の魔物と戦い続けて決着が付かないのは、戦闘時間としてあまりに異常だ。


 晴輝は急いで息を整え、隠密を展開。

 カゲミツらの居る場所まで、全力で走り出した。




 晴輝が駆けつけると、血だらけのカゲミツが一人でリザードマンを相手取っていた。


 ボスの攻撃でカゲミツは満身創痍だった。

 用意した傷薬を服用する暇もない。


 ヴァンは攻撃を食らって離脱している。

 回復するのを待っているのか、傷口を押さえたまま戦闘を睨み付けている。


 晴輝の戦闘を補助したヨシが、ベッキーと併せて遠くから何度も矢を射る。

 しかしその援護射撃も、尾と槍、それに鱗で完璧に防がれている。


 背後からどら猫が回り込み攻撃を仕掛けるが、尻尾が邪魔で深く踏み込めていない。


 24階を探索する冒険家が、手も足も出せてない。


 それはカゲミツらが弱いからじゃない。

 ボスがそれ以上に強いのだ。


 ボスはエアリアルを、たった1匹で圧倒している。


 これが、30階の魔物の実力。


 以前、30階を攻略した勇者マサツグは、これを軽々と倒していたらしい。

 さて一体彼は、どうやってこいつを倒したのだろう?


 打ち倒す様が、晴輝にはまったく想像出来なかった。


 考えているあいだにも、リザードマンの攻撃がカゲミツの肩口に突き刺さった。


「――っく!」


 カゲミツがよろめき、大きな隙が生まれた。

 ギラリ、ボスの目が殺意で光る。


 そのとき晴輝の脳裡に、四釜らが魔物に食われ絶命する光景が蘇った。

 背筋が、ゾワッと凍り付く。


「――ッ!!」


 黙って見てる場合か!!

 晴輝は即座にスキルボードを取り出し、スワイプした。



 ()()(みつる)(24) 性別:男

 スキルポイント:34

 評価:大剣王級

 加護:北風<???>


-生命力

 スタミナ6

 自然回復5


-筋力

 筋力8


-敏捷力

 瞬発力6

 器用さ5


-技術

 武具習熟

  大剣5

  重装4


-直感

 直感3

 探知2


-特殊

 存在感 3

 加護1



 存在感、だとっ!?


「畜生ッ!! なんて神スキルを――じゃない!」


 晴輝は頭を大きく振り、慌ててスキルをタップする。



 伊達充(24) 性別:男

 スキルポイント:34→24

 評価:大剣王級

 加護:北風<???>


-生命力

 スタミナ6→10

 自然回復5→10


-筋力

 筋力8


-敏捷力

 瞬発力6

 器用さ5


-技術

 武具習熟

  大剣5

  重装4→5


-直感

 直感3

 探知2


-特殊

 存在感 3

 加護1



 晴輝は以前、目の前で四釜らが死んで行った光景を如実に思い出した。

 あのとき迷わずスキルを振り分けていたら、彼らは生き延びたかもしれない。


 もう手の届く範囲の命は失いたくない。

 2度と同じ失敗を繰り返したくはなかった。


 だからこそ晴輝は迷うことなく、カゲミツのスキルを振り分けた。


 とはいえ現在はギリギリの戦闘中だ。

 身体能力が急激に向上すれば、逆に体感覚が崩れてピンチに陥ってしまう。


 なので晴輝はカゲミツの生存率を高めつつ、感覚をあまり乱さないスキルを振った。


「――とわっ!!」


 晴輝のスキルのおかげか、致命的な隙を突かれたカゲミツは声を上げながら体を動かした。

 ボスの槍の穂先が、カゲミツの体のギリギリを通り過ぎる。


 続く攻撃も、カゲミツは回避していく。

 彼の回避には先ほどのような危うさが感じられなくなった。


 これでしばらくは持ちこたえられるか。


 次に晴輝は自らのツリーを開く。



 空星晴輝(27) 性別:男

 スキルポイント:5

 評価:隠倣剣師

 加護:布者<????>


-生命力

 スタミナ3

 自然回復2


-筋力

 筋力3


-敏捷力

 瞬発力3

 器用さ3


-技術

 武具習熟

  片手剣3

  投擲2

  軽装3

 蹴術1

 隠密2→3

 模倣2


-直感

 探知2


-特殊

 成長加速 MAX

 テイム1

 加護:1



「ぎゃぁぁあ!!」


 隠密が上がったぁぁぁ!!


「なぜだ!!」


 晴輝はがくりと肩を落とす。

 だが落ち込んでいる暇はない。


 これだけの“事件”が起りながら落ち込む暇すらないとは。

 なんて……なんて厳しい戦場なんだっ!!


 血涙を流しながら、晴輝は死に物狂いで心を立て直す。


 とはいえカゲミツのスキルの値でも、ボスにはまったく通用しない。

 晴輝が自らの能力を、たった5ポイント上げたところで通用するとは思えない。


 しかし、


「………………可能性は、あるか?」


 ひとつだけ、カゲミツのスキルツリーで奇妙な部分に気づく。


 何故様々なスキルが育っているなかで、彼の加護だけは1のままなのか?


 マサツグはカンストしていた。

 レアも、カンストさせた。


 加護が現われた後、晴輝は身体能力の飛躍を感じた。

 カンストさせたレアの投擲も、恐ろしい威力になっていた。


 だからもしかするとこの加護というのは、晴輝が想像した以上の効果があるのではないか?


 どの神の、どんな効果なのか。

 それによって、結果が変るかもしれない。


 いまは1ポイントが生死を分ける。

 失敗は決して赦されない。


 だが、レアの例がある。

 試して損はないだろう。


 晴輝はまず1つ、加護にポイントを振る。



 スキルポイント:5→4


 加護:布者<????>→透明者<????>


 加護:1→2



「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 透明!

 透明になった!!


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!


 これはいけない。

 スキル振りを停止すべきか!?


 ……いや、このままだと逆にマズイか?

 振ればまた名前が変る可能性が。


「――くそっ!」


 悩む暇がない。


 カゲミツは現在、ボスを押さえ込んでいる。

 だがそれも時間の問題だ。


 後ろでボスを攻撃していたどら猫が、尾に吹き飛ばされて戦線を離脱した。


 カゲミツの顔に苦悶が浮かぶ。

 きっと撤退を考えているのだろう。


 だがそれも、誰かが殿を務めなければいけない。

 命を賭してボスを止めないと、逃げ切れない。


「もう、どうにでもなれ!!」


 晴輝は意を決してスキルを力一杯タップした。


 スキルポイント:4→3


 加護:2→MAX


「――っ!?」


 そうして神の名が判明した瞬間。

 スキルボードを消した晴輝は、


 ――仮面を外した。

布で透明な神……いったい誰なんだ!?(すっとぼけ


物語はいよいよクライマックス。

果たして晴輝くんの加護は何なのか!?

乞うご期待!!

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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