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冒険家になろう! スキルボードでダンジョン攻略(WEB版)  作者: 萩鵜アキ
6章 ダンジョンの悪意を倒しても、影の薄さは変わらない
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新たな装備でパワーアップしよう!

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(まさか、まだ生きて――!?)


 一瞬血液が凍りかけたが、なんてことはない。ダンジョンがゴーレムを呑み込んでいるだけだった。


 しかしそれは、その階のボスを倒したときのみに見られる現象だ。

 現時点で晴輝は、稀少種や唯一種、ダンジョン主を倒したときにこの現象を見たことはない。


「……こいつは、19階のボスだったのか?」


 とすると、あの洞窟風フロアに20階に下りる階段があったことになるが。

 晴輝は階段を目にしていない。


「もしかしたら、ゴーレムを倒したら階段が出現するパターンか」


 他の階では、ボスを倒してから階段が現われたこともある。

 あるいはゴーレムを倒すと階段が出現する仕組みなのかもしれない。


 あとでもう一度、あの場所に戻ってみるか。

 そう考えているあいだに、ゴーレムのすべてが地面に飲まれた。


「……どうだ?」


 晴輝は自らを見下ろしながら呟いた。


 ゴーレムは倒した。

 晴輝はゴーレムに力を、存分に見せつけた。


(存在感は上がったか!?)


 手を握ったり開いたりするも、変化は感じられない。


「……いや、自分で存在感が強くなったかどうかなんて気付かないか」


 しかし、ゴーレムは力を示せと口にしていたのだ。

 きっと何かはあるはずだと、晴輝は入念にチェックする。


 すると、ゴーレムが飲まれた場所からズププ……と音を立てながら、2つのクリスタルが出現した。


(もしかして、これが存在感をアップのアイテムか!!)


 胸を高揚させながら、晴輝はドロップアイテムにスキップで近寄っていく。


 ドロップしたアイテムの一つは手の平サイズの、灰色がかった透明なクリスタルだ。

 直径15センチほどで、楕円形をしたそれを手に取ろうとし、


「おぅ!?」


 晴輝はクリスタルに拒絶され、指先が滑った。

 危うく尻餅をつきそうになるのをぐっと堪える。


「んー、なにかしらの装備なのかな?」


 見た目はただの宝石である。

 装備品のようには見えない。


「……こっちの確認は火蓮達が目を覚ましてからにするか」


 ダンジョンがアイテムを吸収するまでに、3時間ほど時間がかかる。

 宝石をひとまず放置して、晴輝はもう一つのクリスタルに目を向けた。


 それは白みがかったクリスタルの、下半身装備だった。

 防具は一つに繋がっておらず、腰、太もも、それにスネを被うパーツに分かれている。


 全体的に向こうがすけて見えるくらい淡い白色なのだが、所々、まるで文様のように濃い白が入っている。


 試しに晴輝はその防具に触れた。

 すると、


「お、こっちは大丈夫だな」


 晴輝は防具に拒絶されることなく、持ち上げることが出来た。


 見栄えは岩石で、手触りかなり硬質だ。

 なのに重量はアルミニウムのように軽い。


「もしかしたら、これが俺専用の……存在感アップのアイテムか!?」


 晴輝はウッキウキで下半身防具を装着していく。

 防具の装着はとても簡単だった。

 まるで晴輝専用にあつらえたように、ベルトがパチパチとストレスなく締まっていく。


「ふっふっふ……やはりこれは、俺専用の(存在感アップ)アイテムに違いない!!」


 ぐへへと笑いながら、晴輝は防具を装備した自らを見下ろした。


 まるで防具を着けていないかのような装着感。

 ダンジョンの淡い光を呑み込み乱反射させる素材。

 パッと見で、『こいつ出来る!』と思わせる威圧感も、防具は兼ね備えていた。


「素晴らしい!」


 いいね、いいねと、晴輝はニマニマ笑顔を浮かべながら、新しい防具を入手した自らを見下ろし続けた。


「ん……あ、……空星、さん?」


 新しい防具に見とれる晴輝の耳に、火蓮のか細い声が届いた。

 どうやら目が覚めたらしい。


 晴輝はスキップを踏みながら火蓮の元に近づいていく。


「目が覚めたか、火蓮。調子はどうだ?」

「…………あ、ああ、空星さん、ですね?」

「おう。……ん?」


 火蓮の言葉尻によからぬ響きを感じて、晴輝は僅かに首を捻った。

 一体、火蓮はどうしたというのか。


 晴輝を見るなり、火蓮は顔を引きつらせた。

 二呼吸ほどして何故か脱力したものに変わった。


「どうした火蓮? 調子が悪いのか?」

「いえ……。いつもの空星さんだなあって」

「お、おう。それよりどうだ? なにか違うか!?」


 晴輝はパッ! と火蓮に腕を広げて見せた。

 

「……パワーアップしましたね」

「そうか? 参ったなあ!」


 ぐふふ!

 ああ、いよいよついに、存在感がパワーアップしてしまったと、晴輝は口元をだらしなく緩めた。


「う……ぐ、ここ……は?」

「ヴァンさん、大丈夫ですか?」


 声を聞き、晴輝はすぐさまヴァンの元に駆け寄った。


 彼は酷い怪我をしていた。


(後遺症とか、治りきってないところがなきゃ良いんだけど……)


 そんな晴輝の真摯な思いに、


「……うわぁぁぁぁ!!」


 ヴァンは、悲鳴を上げた。

 悲鳴を上げて、ヴァンは白目を向いて仰向けに倒れてしまった。


「……やっぱり、まだ傷が治りきってなかったのか?」

「いえ、空星さんのせいですよ……」

「え? なんで!?」


 何も悪いことはしてないのに。

 そんな晴輝の驚愕に、火蓮は手遅れだと言わんばかりに首を横に振るのだった。


          *


 シャワーを浴びてぐっすり眠り、精神的休養を取得した後に、男は再び仮面の家の前に戻ってきた。


 ここに来る前に、男は心の中で決断していた。

 監視は、今日で最後にしよう……と。


 そもそも仮面は日本や市民に対して、なんらかの反社会的行動を取るような素振りは、これまで一度だって見せたことがない。


 家だって普通の戸建て住宅だし、関わっている人物だって信用のある者ばかり。


 強大な力を手に入れた彼の暴走を怖れる、マサツグの不安はよく理解出来る。

 だが、もし仮面が暴走したところで、マサツグが手を出さずとも、カゲミツや夕月朱音など、北海道に居る有力者が止めに入るだろう。


 それほどまでに、カゲミツや夕月朱音などは、仮面の懐に深く食い込んでいた。


 だからこそ、男は今日で最後にしようと思った。

 監視しても仮面の姿が見えない自分などより、彼の姿が見える者が頑張れば良い……と。


 仮面の家の監視を始めてから10時間。

 太陽が茜色に染まる頃、男はダンジョンから出てくる3人組に冒険家を発見した。


「……やっと見つけた…………」


 それは、仮面男を含む冒険家の集団であった。

 この日、監視を依頼されてから、初めて見る仮面男の姿であった。


 まるでコスタリカで幻の鳥ケツァールを追い求めて一週間、最後の最後でようやくケツァールに出会えたかのような、晴れやかな感動が男の胸にじんわりと広がっていく。


 しかし、


「え? ……えっ?」


 男は、仮面男を二度見した。


 男は仮面男の見た目情報を掲示板などで入手していた。


 曰く、呪われそうな仮面を付けている。

 曰く、背中に蠢く植物を背負い、腹部は多足虫に寄生されている。

 曰く、首に羽が生え、背中には白い顔が浮かび、腰からは触手が生えている。


 いずれの噂も、あまりに人外じみて嘘のようであるが、一度彼の姿を見た者ならば、何度も首を縦に振るだろう。

 噂は何一つ、間違ってはいない。


 ただ1つ。

 噂に足りないモノがあった。


 そのたった1つに、男の心がへし折れた。


「…………帰ろう、東京に」


 しばらく後。

 この男は北海道の担当を外れ、ブレイバーを離脱。

 本州の片田舎で、なにかを怖れるように、ひっそりと生活を始めたのだった。


いろいろとパワーアップ(意味深)しました。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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