第四話 ❲紳士の正体❳
第四話 ❲紳士の正体❳
⌈悪魔なの……」
⌈ッ!?」
珀亜は驚きを隠しきれずにいた。
しかし無理もない。
誰が見てもただの紳士にしか見えない。
⌈悪魔って、本当なのか? どう見ても人間だったが……」
⌈ううん、魔族の人は普段は普通の人間と同じ姿をしているけど戦うときはちがうの。あの黒い髪の毛もみんな真っ白になって体も一緒に白色になっちゃうの。しかもとんでもなく強いの」
⌈なるほどな……じゃあさっき行った廃墟で使っていた火を消したりしていたのは魔術か?」
⌈そうだよ。あの人の魔術は赤と黒の魔術。二色も使いこなすすごい人なんだよ」
⌈んん、赤と黒ってなんだ?」
色で判別される魔術を理解できない珀亜は頭に疑問符を浮かべていた。
⌈魔術にはね、八色の色があるらしいの。赤、青、緑の基本色に黄、黒の特別色、そして金、銀の超越色だよ」
⌈なるほどな……超越色ってのは意味わからんが他なら何となく察しがつくぜ」
珀亜の思うに赤は火、青は水、緑は風、黄は光、黒は闇ってところであろう。
⌈詳しくことはわたしもいまいちわからないけどとにかく普通の人は一色の魔術しか使えないの。けどあの人は二色使えるってこと」
⌈おーけーわかった。んじゃまたあの三人組んとこいくか。俺も一味違うのでな」
⌈無理しないでね! それじゃーいくぞー!」
⌈おうよ!」
二人はまた三人組の元へと歩き始めた。
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⌈────なぁ、全然見当たらないんだが?」
⌈おっかしいなぁ? さっきこの辺に向かっていたのに……」
三人組は一向に見つからず、二人は悲鳴を上げていた。
無理もない。
⌈もう歩き続けて30分くらい経つぜ。あいつらの隠れ家チックな場所に行っちまったんじゃねぇか?」
⌈むむむー。あ、あそこに誰かいるよ! 聞いてみよー!」
珀亜は人の少ない村に来ていた。
ここは先程のハリス宅よりは十分ましだがそれでもかなり古びている村だった。
貧民というのか、あまり裕福ではなさそうな人をミレアは見つけ、すぐさま駆け寄った。
⌈すいませーん、おにいさん。この辺で小さい人と太ってる人と大きい人の三人組を見なかった?」
⌈うーん、見てないかなぁ。お嬢さん、こんな場所に来るのは危ないよ。三人組は見てないからすぐに他所に行きな」
⌈ありがとーおにいさん! けど大丈夫! ここにわたしのボディーガードがいるから!」
⌈おいおい、ボディーガードってなんだ……」
珀亜はふてくされながらそういう。
しかしなかなか人気がない。
この男性以外は皆いないのではないかというくらい薄気味悪いところだった。
すると突如爆発音がした。
⌈ッ!? なんだ!?」
珀亜が動揺するのも無理はない。
あまりにも不意を突かれたため後退りした。
⌈お嬢さんと君、早く逃げな! これは悪魔の仕業だ!」
男性は声を荒げて二人を逃がそうとする。
しかし二人は逃げようとしなかった。
⌈悪魔だって? 上等じゃねぇか。あいつには許しがたい罪があるんだ。三人組の前にの良い準備運動だぜ!」
⌈止めておくんだ! 悪魔の名前はハリス・マークトン。君も知っているだろう二つ名を! 『消滅獄炎魔』。その名の通り標的に定めたものは消すまで燃やし続ける二色使いの魔術師だぞ!!」
ハリスは単純に二色の魔術が使える秀才ではなかった。
消すまで燃やす、その強すぎる意思には抗える手段はないという。
しかし珀亜は笑みを溢していた。
⌈じゃあ誰も止めないってんのか? 違う。俺にも奴を一発殴ってやらねぇのなんねぇって思う揺るがない意志がある。しかも俺は魔術の使えない雑魚じゃねぇよ! 俺には能力がある! ……負ける気がしねぇッ!」
⌈……彼を殺る気かい?」
珀亜の言動に顔をしかめる男性。
それに対してやる気に満ち溢れた笑顔で視線を返す珀亜。
今珀亜に何を言っても聞かない、そう感じた男性はやれやれという表情で口を開いた。
⌈…………何を言っても聞かないようだね。僕はもう知らないよ。けれどちゃんと生きて帰ってくるんだ」
⌈あたりめぇよ! んじゃ行くかミレア!」
⌈ほんとに大丈夫?」
⌈あぁ、任せときな! 俺はやるぜ! お前の為にな!!」
⌈うん! 任せましたっ!」
⌈んじゃ行ってくるわ兄ちゃん。この村取り返したらまた会おうぜ」
⌈気を付けるだよ」
⌈ああ。んじゃ行きますか!」
珀亜はミレアの為に、人の代役として復讐を果たしにハリスの元へ向かった。