第三話 ❲手にした能力❳
第三話 ❲手にした能力❳
⌈──あの三人組じゃねぇか?」
探し人らしき人物達を発見し、珀亜はその人物像を照らし合わせていた。
⌈チビとデブと……あとあの木偶の坊だな……」
⌈口が悪いよハクア!」
指摘された珀亜は何とも言えない表情でミレアの事を見返していた。
気持ちもわかる。なぜなら予想した年齢よりかなり下だったからだ。
⌈くそっ、他の人なら一瞬でわかってたものをなぜ俺はわからなかったんだ? 誰が見ても小学生だろ俺…… けどあまりに雰囲気が大人びていた。性格は子供だが……」
⌈なにか言ったハクア?」
⌈いいや、何でもねぇよ……」
⌈とにかく見つけれたんだし石を貰いにいこ!」
⌈それもそうだな」
早速例の三人組のところまで駆け寄ってみた。
⌈──あのー、さーせん、三十代くらいのおっさんから石を貰わなかったか?」
⌈なんだてめぇ? アニキにようか?」
小柄な三人組の一人がトーンの少し高い声で喧嘩腰にそういった。
⌈あ、あぁそうだよ。」
すると巨体をしたアニキと呼ばれていた三人組の一人が珀亜の側に歩み寄ってきた。
⌈用があるならさっさと済ませろ。その首が跳ぶ前にな」
⌈流石アニキ! もっといってやってくだせぇ!」
三人組は薄気味悪く笑いながら珀亜を小馬鹿にした。
しかし、ミレアは恐れもなさずただただその場を静かに眺めているだけであった。
⌈お、面白い冗談をいうんだな……さっきも言ったが三十代くらいのおっさんから黄緑色の丸い石を貰わなかったか?」
⌈あぁ? これか? 貰ったさ。」
そういって巨体の男はその石を見せ付けてきた。
珀亜は初めてその石を見たが、その美しさは想像を遥かに上回っていた。
⌈すまないがそれをこの子に返してやってくれねぇか? この子の物なんだ」
⌈簡単に返す訳にはいかんなぁ? なんせこの石は売れば一生生きていけるような大金か手に入る最高の代物でな。欲しいなら……力ずくで奪ってきな」
巨体の男は腰かかっていた剣を抜いた。
⌈おいおいおいおい!? 素手に剣に勝てと!? 無理ゲーにも程ってもんがあるだろ!?」
⌈欲しいならごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ青二才が!!」
あまりにも急な攻撃に珀亜は回避をできず咄嗟に腕で防御したため、腕でに深い傷が入った。
⌈うぅぅあぁぁあ!!!」
⌈立ち竦んでんじゃねぇぞ!!」
⌈やめてっ!!!」
いきなりミレアは叫んだ。
⌈石はあなたたちにあげる。だからやめて!!」
⌈み、ミレア何を……」
⌈ハクアは大人しくしていて」
⌈物分かりのいい嬢ちゃんがいて助かったかな。お前ら、ずらかるぞ」
三人組はそういって遠くへいった。
⌈ハクア大丈夫!?」
正気に戻ったのか涙を流しながらミレアは珀亜の心配をしていた。
⌈あ、あぁ……それよりも…お、俺はまだや、やれたのに……」
珀亜は不幸な事に脈を斬られていて出血が止まりそうになかった。
⌈あのまま戦ってたらハクア死んでた! わたしそんなのいや!!」
⌈ミレア……お前は、優しいやつだ……」
⌈死なないで!!」
⌈み、短い間だった、けど……」
⌈ハクアっ!!」
⌈あ、りがと……う……」
⌈ハクアーーーーーーっっっ!!!」
珀亜はそういってそっと目を閉じた。
⌈う、そ……」
返事は返ってこない。
⌈返事し……て……」
すると突然珀亜の体から凄まじい光が発せられ、傷ついたはずの腕は何事なかったかのように完治され、横たわっていた体もゆっくりと起き上がった。
⌈っ!?」
⌈い、生き返ったのか……?」
さっきまでビクともしなかった体を起き上げて珀亜は言葉を放った。
⌈────」
ミレアは勢いよくハクアに抱きついた。締め付ける腕は簡単にほどけなさそうだ。
⌈……ほんとに心配させて……このバカっ!」
⌈このバカって……あ、ハグご馳走さまです」
⌈~~~~~~~~っっ!!」
恥ずかしそうにミレアは固く締め付けた腕をほどいた。
⌈……それにしても何だったんだ? ミレアが治した訳でも無さそうだ。しかし俺はまだ魔法やら魔術やらは使えないじゃあなんだ……?」
⌈答えが知りたいかい?」
後ろから三十代くらいの男性が表れた。
⌈あんたは……」
⌈勝手に尾行して悪かったねぇ。私の名前はハリス・マークトン。
私はずっと君に興味を持っていたんだ」
⌈ずっとって……ここのに来たのは今日だぜ?」
⌈いずれわかる話だよ。それより本題だ。君はその治癒に心当たりがないといったね?」
ハリスは穏やかな声でそういった。
しかし、鋭い目にはまるで全ての事を見透そうとしているかのように深みがあった。
⌈あぁ、ねぇよ。一度はもう死ぬかな、って本気で思ったさ。遠退いていく意識とともにいつの間にか傷は完治、あっというまに元通りだよ」
⌈なるほどねぇ……では答えを言おうか。それは魔術ではない。なんと言うか君の、君だけにしか使えない特別な能力なんだよ」
⌈俺しか使えない特別な能力……?」
告げられた答えは意外なものだった。
この世界の能力は魔術。それを越えるものは存在せず、それにこそ究極があると思っていた見解は見事に的を外した。
能力。さらに珀亜のみの能力。その言葉に心を響かされた珀亜は薄ら笑いを浮かべた。
⌈楽しい事になってきたじゃねぇか……じゃあ俺の能力ってのは『治癒』って感じでいいのか?」
⌈おしいが違うねぇ、珀亜君」
⌈ッ!? なぜ俺の名前をしっている!?」
自己紹介をしたのはハリスだけだったはずが、珀亜の名前は意図も簡単に当てられた。
いや、当てられたのではない。ハリスは知っていたのだろう。
⌈ふふっ、いずれわかるだろうよ」
⌈またそれか……」
話を焦らすハリスに珀亜は少し苛立ちを感じた。
⌈まあ単刀直入にいうよ。君の能力は『再生』だ」
⌈再生……? 治癒と何が違うんだ?」
⌈例えば切断された腕を治癒すると傷は塞がるが腕は失う。しかし、再生の場合腕がまた生えてくるってことだねぇ」
⌈……なるほどな。気に入ったぜ」
⌈私の用はここまでだよ。君の能力は確認出来た。また会ったときにはゆっくり話でもしようねぇ」
そういうとあっという間にハリスは姿を消した。
⌈ありがとよハリスさん。いい情報だったぜ。──それじゃあ石取り戻しに行く……おいミレア! 大丈夫か!?」
話に夢中になっていた珀亜はミレアをついつい見失っていたが、見れば恐怖に駆られた目でずっと震えていた。
⌈う、ん。だ、いじょうぶ、だよ……」
⌈どう見たって大丈夫じゃねぇよ! こういうときにはどうすりゃいいんだ……? ──これしかねぇな」
珀亜はさっきミレアにされたようにぎゅっと彼女を抱き締めた。
⌈大丈夫だ、ミレア。俺がいる。安心しろ」
抱いてやるとだいぶ震えはおさまり、正気を取り戻していった。
⌈……もう少しここにいていい?」
⌈ああ……落ち着くまでいいぜ」
次第に正気を取り戻し、顔も少し赤面がかっていた。
しばらくするとミレアは口を開け話し始めた。
⌈ハクア、よく聞いてね。さっきのハリス・マークトンって人は……わたしのママを殺したの」
⌈なんだって!?」
さっきまで怯えてことにも合点がいく。
しかし親切な一面を見ている珀亜には信じがたい事実だった。
⌈名前を聞いてはっきり思い出したの。あの人の正体は……」
珀亜はごくりと唾を飲んだ。