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異世界のコラプス  作者: のこ
2章 エルフの里
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8話 ターニャの家にて

 里長からの了承を得て、エルフの里では自由にしていいことになった。


 ターニャに連れられて中央から外れた一角にある家にたどり着いた。その家はあまり大きくなく、一人二人住むのがやっとに見える。


「ここよ。ここが私の家。まぁとにかく入って」


 ターニャは周りを見て慌てて言った。


 まだ里全体には俺の処遇は広まっていない。今はあまり外に出ると一緒にいるターニャまで白い目で見られる。


 家の中へ入ると、外からの見た目よりも広く見えるようなすっきりとした内装だった。物が少ないからだろうか。


「そこに座って。今お茶を入れるから。……あと着替えも取ってくるわ」


 ターニャはダイニングの机と椅子がある場所を指さしてそう言い、俺を見てからどこかへと行った。


 そういえば、ダンジョン内での戦いで制服がボロボロだ。ちょうどいい。


 椅子に座ってしばらくすると、ターニャが里の男たちが着ているような緑を基調とした動物の毛を使ったフェルトのような生地の服とズボンを持ってきた。


 どこかの民族衣装のようにも見える。


「はい。あなたが着替えている間にお茶を入れてくるわ」


 俺に服とズボンを渡してそう言い、またどこかへ消えた。


 そして俺が着替え終わる頃にちょうどターニャが木のコップに入ったお茶を持って戻ってきた。


 コップからは湯気が立っており、なんだか落ち着く香りがする。


「はい、あなたの分よ。砂糖とかないけど我慢してね」


 ターニャは謝るようにウインクして机の上にお茶を置いて俺に座るように促した。


 俺が座るとターニャも座った。


「それじゃあ色々と聞きたいことがあるとは思うけど、一つ一つお願いね」


「あぁ、それじゃあ……」


 聞きたいことが多すぎて何から聞いていいのか分からない。


「聞きたいことが多すぎてまとまらないみたいね。それじゃあまず私が知っているこの世界のことについて教えるわね」


 俺が悩んでいるとターニャがそう言った。ありがたい。俺は頷いて了承した。


「そうね、まずこの世界は多くの神の存在によって成り立っているわ。この世界を創造した神がいて、その神がこの世界を管理するために多くの神を創ったの。私たちを転生させたのもその一柱、運命の神メイラデス。この世界に生きる生き物すべての運命を知ると言われている神よ」


 あの神様はそんな名前だったのか。運命の神……転生の神とかではないのか。


「なぜ転生の神じゃないのかって顔ね。私もそう考えたことがあるから分かるわ。でもそれに関しては私には分からないわ。確かに転生の神はいるわ。では、なぜ転生の神ではなく運命の神が私たちを転生させたのか」


 なぜ転生の神ではなく運命の神なのか。この世界の生きる生き物すべての運命を知る神……。


「とりあえずそれは置いておいて。その多くの神によって多くの種族が生まれたわ。私たちの元の世界にいたような人間の人族。この里に住んでいる妖精族。エルフとも言うわね。森の管理者よ。そして身体の中に樹を宿す森人族。ドルイドとも言うわ。ドルイドの中には私の知り合いの転生者がいるわ。あとは獣のような獣人族、竜の鱗を持つとかいう竜人族、それと小さくて髭モジャな小人族。ドワーフね。後半の三種族は見たこともないしあまり知らないわ。私はこの森の外から出たことがないの」


「じゃあその人族っていうのと森人族のドルイドはこの森にいるのか?」


「人族は森の外に住んでいて、たまにこの森に入る人もいるわ。基本的に私たちが追い返すのだけど。ドルイドとエルフは交流があって私たちが森を外敵から守る代わりにドルイドたちから色々と物をもらっているの」


 エルフとドルイドというのは共生関係なのだろう。


「それでドルイドの転生者ってのは?」


 もしかしたら彼女のことだろうか。


 そんな淡い期待を持ってコップを持つ手に力が入った。


「あなたのそのネックレスを作った子よ。マヤっていうんだけど、前の世界じゃ原型師っていうの? まぁなんかフィギュアの原型を作る仕事をしていたみたい。あ、私は元OLよ」


 彼女のことではないようだ。


 なんとなく分かっていた。


 入っていた力を抜いてコップを傾けた。


 香りもさることながら、ほっとするような温かさが身に染みる。砂糖が入っていないという割にはほのかに甘さが感じられる。


「いいでしょ、その紅茶」


 ターニャは深く語りたそうにうずうずしているが、そう言うだけで微笑んだ。


「あぁ、落ち着く」


「その紅茶に使う花はね、ダンジョンから外に出た魔物に荒らされちゃったの」


 ターニャは何かを思い出すように悲しそうな顔でそう言った。


「そうか」


 俺はそれしか言えなかった。


「他に何か聞きたいことはある?」


 そうだな。色々と聞きたいことはあるが、やはり――


「俺の幼馴染のことについて分かることがあったら教えてほしい。俺が知っているのはあの場所で俺の名を叫んだことまでなんだ」


「あなたの幼馴染ね。私が知っているのはあの場所であなたの名前を叫んだあと神様に抗議したことくらいね。そのあとすぐに転生が始まったから分からないわ。ごめんなさい」


「……そうか」


 何の情報も得られず、結局ふりだしに戻ってしまった。


「あまり気を落とさないで。大丈夫、きっと会えるわ」


「あぁ」


 それ以上言葉がでなかった。


「もう休むといいわ。ダンジョンを攻略したばかりで疲れたでしょ。しっかり休めば落ち着くわ。話はまた明日にしましょう。二階の部屋を貸してあげる」


 俺はその言葉に甘えて休むことにした。


お読みいただきありがとうございます。

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