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異世界のコラプス  作者: のこ
3章 大陸渡航
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30話 この流れを二度もやるとは

 マヤの活躍によって三人に近くの村まで案内させる交渉に成功した。マヤの活躍によって……。


 それがあってか、マヤは俺に対してドヤ顔を決め込んでくる。少し進んで後ろを振り返ってはドヤ顔、また少し進んで後ろを振り返ってドヤ顔。その度に仮面をずらしているから表情を見せているのはわざとだろう。


 確かにマヤのおかげではあるが、感謝の念など薄れていく。まぁ最初からないが。そうだな、イライラが濃くなっていく感じだ。


 ロブたちの要望もあり、今は前からロブ、アニー、ガルト、マヤ、ターニャ、俺という並びで進んでいる。だからターニャにもマヤのドヤ顔が見えているはずなのだが何も言わない。相手にすればつけ上がるため無視に限るのだろうか。だが無視すれば、それはそれでウザい絡みに発展しかねない。どうしたものか……いや、何で俺はこんなことに悩んでいるんだ。


 一発ぶん殴ればいいだけだ。


「んぎゃ!」


 念動腕を飛ばして前にいるマヤの頭を叩いた。


 念動腕は透明だから一瞬何をやられたのかはわからないようで、マヤは頭をさすって上を見た。しかし頭上には木の幹などない。瞬時に俺がやったと気づいたようで俺を睨みつけてくる。


 先行している三人がマヤの声に気づいて戻ってきた。それによって全体の足が止まる。


「大丈夫?」


「痛いの?」


「何があった?」


 ガルト、アニー、ロブがそれぞれマヤを気遣っている。


 アニーはマヤの頭をさすってやっている。


 ガルトとロブはマヤの視線の先に俺がいることに気づき、マヤと一緒に俺を睨んだ。


 そんな状況にターニャはやれやれといったように溜息を一つ吐き、俺は知らんぷりを決めてそっぽを向いた。


 なんで俺が責められている形になっているんだ。確かに叩いたのは短絡的だったかもしれないがマヤのウザさが悪い。


 ……俺も溜息の一つでも吐きたい気分になる。


「さっさと行くぞ」


 顔を前へと戻すがロブたちは進もうとしない。


「ここで少し休憩する」


「マヤは大丈夫だ。早く案内しろ」


 ロブが休憩を提案するが、そんなに強くマヤを殴ってはいない。現に今はけろっとした顔だ。


「私たちが休憩したい。ずっと警戒しながら進んでいたから疲れたの」


「そうなんだ。だから頼むよ」


 確かに三人の表情から疲れが見て取れる。案内されてから進行速度は遅くなったためマヤでもついて行ける速度だが、三人は森での移動に慣れていないようでその速度がやっとだったようだ。


「いいんじゃない? もうお昼だしお腹も空いたわ」


 ターニャも休むことに賛成か。確かに腹は減ってきた。まぁいいか。


「わかったよ」


 俺がそう言うと全員近くの木に腰かけて休み始めた。


 俺も近くの木に腰かけて袋からパンを取り出して食べる。パンだけなため少し味気ない。エルフの里で食べていた飯に比べたらやはり物足りなさを感じる。それ以前の前の世界で食べていた物はもっとおいしかったな。


 近くの木で休んでいるターニャを見ると俺と同じようにパンを食べている。マヤの方を見ると……アニーがマヤの頭を撫でながら干し肉をあげている。ロブとガルトの方を見ると干し肉を食べている。こいつら肉持っているのか。


「なんだ、やらねーぞ」


「……いらん」


 なぜ真っ先に俺がそれを欲しいと思ったんだ。……もの欲しそうな顔してたか?


「そういや、お前たちは村の人たちに何を頼まれたんだ?」


「教えるわけ――」


「魔物退治だよ」


「何教えてんだよ!」


 ロブの言葉に被せるようにガルトが教えてくれた。


「ごめんごめん。だけど森に入ってから魔物に出会わなかったし僕たちの出番はなかったね」


「そりゃあ私たちが退治したんだもの。当たり前じゃない。まぁ流石に森の外までは知らないけど」


 ターニャがパンを千切りながら何気なく答えた。


「チッ、通りで魔物に出会わねーわけだ」


「無駄足だったかな。村の人たちが森から魔物がやってきているって言ったから僕たちは来たんだけどね」


 なるほど。ダンジョンから出てきた魔物で森の外まで行った奴がいたのだろう。そいつらが村に現れて、村の人たちはロブたちに依頼をしたって流れか。


 そんなことを話していると、マヤとアニーがいる方が何やら騒がしい。


 何をやっているんだと思って見るとアニーが「水、水」と言って泣きそうになっている。マヤを見るとどうやら干し肉かパンでも喉に詰まらせたようだ。ったくよ。


 念動腕とサイコロを創りだしコップ一杯分くらいのウォータを発動させる。それを念動で創ったコップに入れてマヤの口元まで運んでやる。食事中だったことでマヤは仮面を外しているためそのまま口の中に水を流し込んでやった。


 突然のこととあまりの勢いだったためか鼻から水が飛び出た。だが喉のつまりは取れたようだ。


「げほっ、ごほっ、こ、これは巡っちの仕業だな! もっと優しく助けてよ!」


 涙目で俺を指さし抗議するマヤ。アニーが背中をさすっている。


「うるせぇ。助かっただけ喜べ」


 何が巡っちだ。変な愛称つけるんじゃねーよ。それに俺の仕業ってなんだ。俺のおかげだろうが。


「お前なぁ!」


「君ねぇ!」


 ロブとガルトが立ち上がって俺を睨む。アニーは無言で俺を睨んでいる。


 そんな俺たちを見てターニャが溜息を吐く。


 この流れついさっきもやったぞ。

お読みいただきありがとうございます。


早く村に行けよって感じですね。

次の話で行きます。

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