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異世界のコラプス  作者: のこ
2章 エルフの里
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16話 森で魔物退治

ガンガンいこうぜ!

 最初に集まってきたのは暗い緑色の毛の狼だった。


 口からは涎を垂らしながら目をギラつかせている。


 あれはバームウルフと言い、細かく素早く動く厄介な魔物だそうだ。森をスイスイと進んでいき、囮のエルフが捨てた食料のある場所を目指している。


 食い荒らしに来たようだ。


 最初のバームウルフが食料を食べ始めるがエルフたちはまだ息を潜めて動かない。


 後続が徐々に集まってくる。その数は二十匹といったところだろうか。


 俺はそろそろ攻撃にしないのかとターニャに目で語りかける。


 戦士長ではなくターニャが今回の作戦の合図を担当している。それはギフトの観察眼があるためかもしれない。初撃で多くいる敵の中で強い奴を真っ先に殺せるからだろう。


 ターニャは首を振っている。


 まだ待つようだ。


 何を待つというのだろう。木をなぎ倒していた魔物を待っているのだろうか。


 しばらくすると、木々の低い位置から黒い斑模様の入った茶色い毛の猿がバームウルフの群れに乱入した。


 長細い両腕を使って器用に木々を移動している。


 あの猿はヒーエナアッフェと言って他の魔物が殺した魔物をハイエナのように横取りする魔物だそうだ。


 バームウルフと同じくらいの数だ。合わせると四十か。


 情報の通りだが、まだ木をなぎ倒していた魔物はいない。


 バームウルフやヒーエナアッフェには木をなぎ倒すような力があるようには見えない。まだ待つのだろうか。


 俺は再びターニャを見る。するとターニャは頷いて弓を構えた。周りに隠れているエルフたちからも殺気が感じられる。


 しかし魔物たちは食べることに夢中なのか気づいていない。相当空腹なのだろう。


 ターニャが一匹のヒーエナアッフェに向けて弓を引いた。それを皮切りに他のエルフたちも一斉に弓を引いた。


 二十二人のエルフが放った矢は土砂降りの雨のように魔物の群れを襲った。魔物たちの悲鳴が森に響き渡る。一匹、二匹、三匹と確実に殺していき、斉射が止むころには動く魔物がいなくなっていた。


 それを見てエルフたちも少し気が緩む。


 俺の出番はないようだな。だがまぁ、うまく逃げた奴が二匹いるようだが、どう対処するのかね。それにまだ大物がいるようだ。


 逃げた二匹にターニャも気づいたようで声を上げる。


「ヒーエナアッフェが二匹逃げたわ! 闇魔法を使ってくるから気を付けて!」


 作戦前に敵の情報は開示されている。


 ヒーエナアッフェはダークとメルトという闇魔法を主体に戦う魔物だ。メルトとは闇に身体を溶け込ませる魔法で、ダンジョンにいた黒い狼も使ってきた魔法だ。ヒーエナアッフェもダンジョンにいた黒い狼と同じ戦い方をするのだろうか。まぁ速さは圧倒的に黒い狼のほうが上のようだが。


 ターニャが言い終えた後、すぐに辺りが暗くなった。


 ヒーエナアッフェがダークを使ったのだろう。


 闇に紛れて逃げるつもりか。


「ライト!」


 戦士長の大声が響き、辺りがライトの魔法で照らされる。すると無様にも姿を晒される二匹のヒーエナアッフェ。


 すぐに矢が放たれ猿を射殺した。


 ここまでは順調のようだ。あとは残るは……。


 少しの間止んでいた木をなぎ倒す音が再び聴こえ、徐々に近づいてきている。一番遅かった大物が音と血の臭いに気づいて場所を特定したのだろう。


 エルフたちが登っていた木がなぎ倒された。


 そこには真っ赤に燃えるような色の体毛の熊がいた。


 両腕が異常に発達しているようで全体のバランス的に腕が太い。あの両腕で木をなぎ倒していたのだろう。


 あれはロートベアと言い、今回の魔物退治の一番の難敵だ。


 そのすぐ隣には同じ熊がもう一匹。二匹のロートベアがいた。


 ダンジョンにいた四つ手の熊ほどではないだろうが、それなりに力自慢なのだろう。しかしスピードがないようで、エルフたちでも冷静に戦えば数で押せるはずだ。


 しかし、ロートベアが現れてから、エルフたちからむき出しの怒りがにじみ出てきた。瞬時に戦闘態勢に戻る。


 ターニャもロートベアを一心に睨んでいる。


「皆の恨み! 今ここで晴らす!」


 戦士長がそう言いと、二匹のロートベアへと向けて全員で一斉に矢をつがえた。


 そして一斉に矢が放たれた。


 ロートベアは近くになぎ倒されている木を持ち上げて盾にすることでそれを防いだ。


 どうやらあのロートベアがエルフたちに被害を与えた最大の敵のようだ。相当恨みが溜まっているのか、木で防がれていようとお構いなしにエルフたちは弓を射っている。そのおかげでロートベアたちは動けないでいるが。


 ターニャと戦士長はその隙にロートベアの背後に回って弓を引いた。しかしロートベアもそれに気づいて避けたため、惜しくも狙いがそれてしまった。


 囲まれて危険を悟ったのか、二匹のロートベアは吠えてエルフたちが登っている木をなぎ倒していく。落とされたエルフたちは大きな怪我はないようだが、軽く打ち身する者や足を捻る者など怪我人が続出した。


「巡くん!」


 ターニャの叫びが聴こえ、俺はすぐにサイコロを放ってキュアサークルを発動させた。ロートベアも魔法の範囲内だが怪我をしていないのだから関係ない。


 俺の魔法で怪我した者はすぐに動けるようになり、士気は落ちずにいる。


 しかしそのとき、遠くから一際大きい熊の吠える声が聞こえた。


 森がその吠え声で一瞬静かになる。


 もう一匹いたらしい。


「奴が来るぞ!」


 戦士長の叫びが森に木霊した。

お読みいただきありがとうございます。


うーん……ダンジョンの狼と熊で森の狼と熊がダブってしまった。

トラとかヒツジとかがよかっただろうか。

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