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異世界のコラプス  作者: のこ
2章 エルフの里
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15話 作戦決行

 次の日、ターニャと朝食を食べているとエルフの男が訪ねてきた。どうやら作戦の話があるようだ。


 そういえば念動は睡眠時には解除されるようで、起きた時には右腕がなかった。だが練習も兼ねて常時右腕を創っている。いずれは慣れていって睡眠時も発動したままでいられるかもしれないからな。


 その後ターニャがエルフの男に応対し、すぐに家を出ることになった。


 俺とターニャはすぐに朝食を食べ終え(もともと量がないから急ぐ必要はないが)、エルフの男について行った。



──



 そこは昨日俺が運魔法と念動を調査するために来た修練所だった。


 すでに二十人ほど集まっている。


 俺はターニャに背中を押され、その二十人のエルフの前に出た。


 全員が俺を見る。


「この人族の子が我らの助っ人だ! 昨日、診療所にいたものなら分かると思うが、素晴らしい光魔法の使い手だ! それと昨日の修練所にいた者によれば、他の属性も使いこなす猛者でもある!」


 隣に立つエルフが大声を上げて二十人のエルフ、今回の魔物退治に集められた戦士たちだろうエルフに言った。


 よく見ると隣のエルフは昨日の診療所で俺に魔物退治を手伝ってくれと言ってきたエルフだ。エルフの戦士長なのだろう。


 その後作戦を言い渡された。


「――という作戦だ。みんな気合を入れて行け! 一匹も残すな! 我らで森を救うぞ!」


 エルフの戦士長が最後に右コブシを高々と上げると、他のエルフたちもそれに応えるようにコブシを振り上げ声を上げた。


 作戦はこうだ。


 食料が少なくなってきている森にいる魔物たちは常に腹を空かせて気性が荒くなっている。普段ならそんな魔物はできる限り相手にしないが、それを逆手にとって餌をチラつかせて一か所に集める。それを待ち伏せして包囲し、一網打尽にしていく。


 今までは人数が揃わずできなかったが、俺が昨日診療所で治したためどうにか決行できる人数になったようだ。


 それに一か所に敵を集めるため危険も伴う。俺が作戦に加わればその危険も少なくなると考えたのだろう。


 さて、俺の役割は作戦の補助だそうだ。


 危なくなったところに入ってほしいと言われた。できるだけ自分たちの森は自分たちで守りたいのだそうだ。


 俺もその気持ちはなんとなく分かるので了承した。


 魔物を集めるところは里とダンジョンの間で、どちらかというとダンジョンよりになる。


 ダンジョン付近はそれなりに木があるが、それでもこの辺りでは一番開けているのだそうだ。


 俺はその周辺で木に登り、他のエルフたちと待機している。


 ターニャも俺のすぐ隣で息を潜めている。


 これから戦いが始まるというのに辺りは静かだ。


 嵐の前の静けさのようだ。


 どのくらいの魔物の量が現れるかの詳細は不明だが、こちらの倍の四十くらいだと言っていた。昨日の間に調査したのだろう。


 しばらくするとあちこちから狼の吠える声や木がなぎ倒される音などが響きだした。音は一直線にこちらへと向かっている。


 囮のエルフが動いたようだ。


 音は徐々に近づいてくる。


 周りのエルフたちは息を殺して静かにしている。


 隣にいるターニャからは緊張感が伝わってきた。


 弓を持つ手が汗ばむのか、しきりに手を服で拭いている。魔物を集める目標地点を見つめるその横顔には汗がにじむ。必要以上に力が入っているようだ。


「大丈夫だ」


 待ち伏せ中だからあまり無駄口は叩けないが、俺は一言だけそう言った。するとターニャがこちらに気づき微笑んだ。


「えぇ」


 短く返事をして、肩の力を抜いた。お礼のつもりかウインクを飛ばしてきた。どうやらいつもの調子に戻ったようだ。


 木々の合間から食料を持った囮のエルフたちが見えてきた。


 もうすぐで目標地点だ。


 目標地点にたどり着いた囮のエルフたちは目標地点に食料を投げ捨て近くの木に登った。


 狼たちの唸り声と木がなぎ倒される音がすぐそこまで来ている。


 さて、ここからが本番だ。

お読みいただきありがとうございます。

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