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異世界のコラプス  作者: のこ
2章 エルフの里
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9話 ターニャのお願い

ターニャかわいいよターニャ!

 次の日の朝。下に降りるとすでにターニャが起きていて朝食の準備をしていた。


「あ、起きたの。もうすぐできるから座って待ってて」


 軽く返事して席に着いた。


「はいどうぞ。口に合うか分からないけど」


 そう言って出されたのは野菜メインの料理だった。


 肉類は一切なく、緑色のスープとサラダとパンが一つ。スープから香る匂いはとてもおいしそうで、サラダには赤いドレッシングがかかっている。


「いや、食べられるだけマシだ」


 実際ダンジョンではクソまずい狼の肉とあまりおいしくないウサギの肉しか食べていない。調理法などただ焼いただけだ。それに比べれば十分贅沢だ。


 右手でスプーンを持とうとしたが無いことを思い出し左手でスプーンを持った。器用が高いから十分に扱える。


 そう思っていたら。


「もう」


 一言そう言ってターニャは自分のスプーンでスープを掬ってこちらに突き出してきた。


 俺が右手を意識したからだろうか。


「大丈夫だ。利き手じゃないが左手でも十分に食べられる」


「そ、そう……」


 ターニャは突き出したスプーンを引っ込めて恥ずかしそうにそっぽを向いた。


 甲斐甲斐しくも俺の右手を見て世話をしてくれようとしたのだろう。


 俺は左手のスプーンでスープを掬って飲んだ。それはオニオンスープのような味で柔らかく深い味わいが感じられた。


「うまいな」


 俺が素直に感想を言うと、そっぽを向いていたターニャはこちらに向き直って微笑んだ。


 しかしすぐに表情が暗くなる。


「本当はもっと豪華にいきたかったんだけど、まだ魔物がいるせいで食料があまりなくてね……」


 俺がダンジョンを攻略したからこれからはダンジョンから魔物は出ないが、すでにダンジョンの外にいる魔物は手遅れなのだろう。それを倒さない限り、森は本当には救われないということか。


 すると突然ターニャは居住まいを正して再び口を開いた。


「あなたにこんなことを頼むのは筋違いかもしれないけど、魔物退治を手伝ってくれないかしら」


 ターニャはおそるおそるといった感じで提案してきた。


「手伝うのは構わない。だがダンジョンの見張りもいらなくなって、余裕があると思うが。里のエルフたちの力を合わせれば対処できることじゃないのか?」


 俺の言葉にターニャは渋い顔をした。


「今、里にいるエルフは戦えない人ばかりなの。エルフの戦士たちはほとんど殺されたわ。生きている者も深手を負って動ける人が少ないの。ダンジョンから出てきた魔物たちは予想以上に強かったから……」


 それでなんとなく分かった、俺が里に入ったときにエルフたちが異常に警戒していたことが。


 戦えない者たちばかりなのだ、怖かったのだろう。


 外から来た、しかもこの世界で言うよそ者の人族が里へ入ってきたのだ。


 襲われなかったのはターニャのおかげかもしれない。


 それとターニャに親がいる気配がない。十五なのだから親と一緒に住んでいてもいいように思える。前の世界の価値観だからこちらではそうではないかもしれないが。しかし、もしかしたらターニャの親も……。


「分かった。それならまず飯を食ったらその怪我人のところまで案内してくれ」


「ありがとう。でも、どうして怪我人のところへ?」


 ターニャは不思議そうに首をかしげる。


「魔物退治の前に怪我人を治す」


「え、でも、あなた魔法使えないわよね?」


 なぜ俺が魔法を使えないと思ったんだ?


「俺はギフトを使えば魔法が使える。だがなんでそんなことを聞く」


「あ、あぁ、説明してなかったわね。私のギフト、観察眼っていうんだけど、それを使うと相手の名前と種族、能力値とか色々分かるのよ。普通にステータスを見るより詳しく見られるんだけど、ギフトだけは見られないのよね。だからあなたのとんでもない能力値は分かっているわ。でも魔法欄に何も載ってなかったからてっきり使えないのかと思ったわ」


 なるほど、だから最初に会ったとき俺の名前を知っていたのか。それに俺の能力値が分かっているからこその申し出なのだろう。


「ギフトを使えば光魔法が使える。そういうことだから案内のほうは頼んだ」


「えぇ、むしろこちらからお願いするわ」


 ターニャはそう言って微笑んだ。

お読みいただきありがとうございます。

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