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ジンダイ  作者: 吉田 将
第二章 逃避行
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翁の献策

「コウ殿。先程、オキクルミ殿が話していたクトネシリカとは一体なんですか?」


 クジの家に戻ったコウとシオツチは今後のことを決める為、クジやヤタ達と囲み、ポイヤウンペをどうやって見つけるかの話し合いを行っていた。

 そんな中、シオツチが先程から気になっていたことをコウに尋ねる。


「クトネシリカとは別の名を虎杖丸といい、元々はここの者達が俺に作ってくれた太刀だ。俺は昔、アイヌに行った際にその太刀を振るってアイヌラックル……当時のオキクルミと共に戦い、数々の魔物を倒したんだ。その時、その魔物の力が清められ、どういう訳か憑神つきがみとして、その太刀に宿ってしまった……その為、俺はオキクルミに頼み込んでその太刀をアイヌの地で奉ってもらったんだ」


「なるほど……そういう事でしたか」


「あいつはあの太刀を宝刀という扱いにして誰も持ち出さないようにしていたらしいが……まさか、持ち出す奴がいるとはな……」


「……そのクトネシリカを持ち出すと、何が起こるんですか? まさか、宿っている憑神が暴れるとか……?」


「いや、それは無いが……逆に分からないからこそ用心しなければならない。何も起こらなければいいのだが……宿っている憑神の神力を思うといつ顕現してもおかしくは無い」


 コウ自身、何が起こるかは分からない。

 しかし、何かが起こる前より対処はした方が良い。

 だが、肝心のポイヤウンペがどこにいるか分からない以上はどうすることも出来ない。

 そんな悩みを抱えるコウにシオツチは言った。


「儂に一つ策がありますが……」


「本当か!?」


「えぇ。要はコウ殿とポイヤウンペなる少年が会えば良いのでしょう?」


「あぁ」


「ならば、こちらが探すより向こうから来て頂く方がよろしいかと……」


 シオツチの言葉にコウ達は揃って首を傾げる。

 来てもらうには相手に伝えなければならない……しかし、相手がどこにいるか分からない以上、伝えることは出来ないのではないか?


「この場合、肝心なのは“相手の場所”ではなく“相手が知る”ということなのです。オキクルミ殿はポイヤウンペ殿は話しを聞いた途端に飛び出して行った、と仰っておりました。つまり、コウ殿の名はおろかどんな神であるかさえ分からないまま、ここに来たということ……彼が知っていることはコウ殿が本土の神であるということだけです。本土の神といえどアイヌとは違い、数は多いですから……彼は悪童と言われる程の乱暴者、恐らく手当り次第に神々と戦っていることでしょう」


 そうなるとますます放っておけなくなる。

 だが、シオツチは逆にこの性格を利用することを思いついた。


「ならば、これを利用しない手はありません。コウ殿は今、国津神達に追われる身……なれば、コウ殿がいることを国津神に知らせ、大勢の国津神が来た所にコウ殿を探してその国津神達の所にポイヤウンペ殿が現れることは考えられませんかな?」


 つまり、コウを餌に国津神達を誘き寄せ、その国津神達に誘われてポイヤウンペが来るという訳である。

 シオツチの策に感心するコウであったが、一つ引っかかることがあった。


「どうやって他の国津神に伝える?」


「それはヤタ殿とセキレイ殿に頼みましょうぞ。お二方はこれより西と南に別れ、コウ殿が厳寒の地にいるということを各地で広めて下さい。国津神というのは必ず眷属けんぞくの者……すなわち神使しんしがいるものです……その者が話しを聞き、自身の主である国津神の耳に入れるでしょう」


「なるほど……ならば、これより我らはコウ様がいることを各地へ伝えます」


 ヤタはそう言うとセキレイと共にすぐさまクジの家を後にした。

 その様子を見届けてからコウは残っているシオツチへ声を掛ける。


「場所はどうする?」


「……谷底のような所がよろしいでしょうな。人間達も近付き難く、もし大きな戦いになっても被害は少ないでしょう。国津神達がこちらへ来るのは恐らく……もう一月ほど掛かりますかな?」


「いや、この地に来るならそう長くは無いだろう。もう一月も待ってしまうと雪が降るからな……奴らにとっては早々に決着をつけたい筈だ」


「ほぅ……となると、思ったより早く事は進みそうですな」


「そうなれば良いがな……」


 そうしてコウは家の中から外を眺めた。




 ※※※※※※




 かくして、策はシオツチとコウの思う通りになった。

 西や南でコウの話しを聞いた国津神達は決起の時と言わんばかりに各地で蜂起し、続々と東北へ向けて進行を始めた。

 コウは集落から離れた海辺の岩場にて彼らの到着を待った。

 シオツチの言っていた谷底では無いが、切り立った岩場が頑丈な壁のような役割を果たし、谷底における上からの強襲の恐れも無い為だ。

 しかも、ここなら見晴らしが良い。

 コウはいつ来ても良いように待ち構える。

 だが、いつまで待っても国津神は一柱もやって来ない。


「どういうことだ?」


 訝しむコウ。そんな時、ヤタが彼に向かってある知らせを届けに来た。



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