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ジンダイ  作者: 吉田 将
第二章 逃避行
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琉球強化策

「この御殿は人間や神々の逃げ場として使っているみたいだが……」


「えぇ、夜になったら皆をこの中に入れて守ります」


 キミテズリの言葉を聞いてか聞かずか、コウは構わず話し続ける。


「この御殿じゃ、逃げるのに不都合だ。何より逆に逃げ場が無いように俺は思うんだがな……」


 コウの言葉に周囲がどよめき立ち、傍にいるキミテズリも驚く。

 だが、ただ一柱……アマミキヨだけは変わらず落ち着いており、彼に続きを促した。


「どういう事です?」


「まず造りだ。この御殿は周りを石の塀に囲まれている……外から襲ってくる者達に対しては効くが、一度中に入られたら最後……御殿の外に出るには敵が固まっている門から出なければならない……それに柱は木、塀の外は森……火を放たれたら終いだ。それに抜け道があったとしても、ここは海岸沿いの森……ほぼ平地だからあまり良い所にも出られまい。良くて海岸か森の拓けた所だろう」


 キミテズリを始め、周囲の人間達は言葉を失う……実はコウの言った事、ほぼ全てが的を得ているのだ。

 これには流石のアマミキヨも僅かに目を見開く。


「なら……どうすれば良いでしょう?」


「もし、俺がこの御殿を守りの要として使うのなら見晴らしの良い丘……またはこの島で一番高い所に御殿を築く。上からならやってくる敵の動きも分かるし、落石を使うといった攻めにも転じられるからな。あとは、地下に抜け道を幾つも作り、その出口として木の幹に穴を空ける」


「木に……穴を!? そんな事したら木が倒れてしまうさー!」


「案ずるな。この土地の木々は嵐が幾度も通る為、太くて丈夫だ。穴を一つ空けた程度では倒れない」


「木に穴を空けるのは出来ますが、今の私達には新しい御殿を築く時がありません……」


 コウの見識に興味を抱いたのか、アマミキヨ自身が彼の助言を仰ごうとしている。


「ならば、石垣をもっと高く作れ。それこそ周りにある石の塀のようにな……そして、物見台も築け。そう大したもので無くても良い……木の上に足場を作るだけで十分だ。見張りと上からの奇襲を兼ねるだけだからな。あとは、石垣の先に行く為の抜け道を地に作れ。石垣に穴は空けるなよ、少しでも隙があると相手に攻め込まれて一気に崩されるからな」


「キミテズリ」


 コウの話しを聞いたアマミキヨはすぐさまキミテズリに命じる。

 もはや、キミテズリには彼女が何と言うかが分かっていた。

 なぜなら、彼自身も守護神としてコウの言ったことが得策だと考えたからだ。


「今、アラハバキ殿が申し上げた事を皆に伝えて下さい」


「はっ!」


 先程とは違った真面目な口調で返事をした後、キミテズリはその場を離れる。

 そんな彼と入れ違うようにして、一柱の男神が中へと入ってきた。


「……今、キミテズリが出て行ったが何かあったのか?」


「あら、シネリキヨ。帰ってきたのですね」


(シネリキヨ?)


 コウがアマミキヨの言葉を聞き、振り返ると……そこには濃い髭を生やし、屈強な身体つきの大柄な男神が立っていた。

 男神は肌が黒く、髪はアマミキヨと同じ薄紫で、上半身は裸という半裸の出で立ちであった。


「む? なんだ、その者は?」


「こちらは、荒神のアラハバキ殿です。此度、遠方よりはるばる来訪され、私どもの家族を救って下さいました」


「お初にお目に掛かります。シネリキヨ殿。荒神、荒覇吐神と申す者です」


「うむ、丁寧な挨拶かたじけない。まぁ、そう固くなるな」


「ワハハハ」と笑いながらシネリキヨはアマミキヨの隣まで歩いて来る。

 豪快な男だ……とコウは心の中で思った。


「……して、アラハバキは何用でこの琉球まで参った?」


「そういえば……まだその事について伺っておりませんでしたね」


「その前に伝えるべき事があったからな…………それに、俺の用件の前に御二方にお尋ねしたい」


「なんだ?」


「ここに来る道中……かの黒き者達はニライカナイなる地から来たと聞いた。そして、アマミキヨ……あなたもその地から来たとも…………ニライカナイとはなんだ? 黄泉の事なのか?」


 コウの言葉に周囲は静まり返る……そんな中、シネリキヨがゆっくりと口を開いた。


「…………本来なら、島外から来た神に教えてはならないが、ぬしは何だか特別なものを感じる。それに、家族を助けてもらった恩もある。アラハバキよ、少しの間待て。人を払った後、教えよう」


 そうして、シネリキヨは周りに居る人間の女達にこの場を離れるように伝えた。

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