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ジンダイ  作者: 吉田 将
第四章 万神アラハバキ
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推理

 昨日の余っていた鉱石を取りに行き、イシコリドメに渡した後……今度は金床となる岩石を採りにコウは天安河の上流を上っていた。

 しかし、上るといっても魚の姿になることは出来ないので川沿いを歩いている。


「……魚の姿になれば川の中に入って一気に上れるんだがな」


「ここでその姿になるのはマズいですからね」


「まぁ、仕方がないか……しかし、気になるな」


「何がです?」


 袖の中にいるネネと話しながら川沿いを歩くコウ。

 川のせせらぎだけがあ辺りを支配し、周囲には誰もいないので今は堂々と話すことが出来る。


「本当にスサノヲが壊したのか……それが気になるんだ」


「確か三日前って言ってましたよね?」


「あぁ。三日前というと俺達がこの高天原に初めて来た日だ」


「はい。その時は道中にこの天安河も通りましたけど……特に何かが荒らされた跡なんてありませんでしたよね?」


「そうだ。そこが気になるんだ」


 ネネの言葉に同意を示した後、コウはなおも言葉を続けた。


「俺達はここを通り、高天原の“まち”へと入った。その後、俺は神殿の前でスサノヲを殴り飛ばし、捕まったわけだが……そうなると、スサノヲは殴られた後にイシコリドメの小屋の外にあった岩石や鉱石を壊したことになる」


「こ……アラハバキ様に殴られた腹いせに壊したのかもしれませんよ?」


「いや、それは無い。スサノヲは殴られた後……神殿に運び込まれて寝かせられていたらしいからな。それは無理だ」


「というと……犯人は別にいるってことですか?」


「……それについてなんだが、実は今……俺に一つ心当たりが出来た」


 コウはそう前置きをして目を泳がせた。

 ネネはその様子を袖の中から見てなんだか嫌な予感に襲われる。


「イシコリドメがいつ小屋に戻ってきたのかは分からないが……もし、それが夜中だった場合は犯人は俺とツクヨミだ」


「えっ!? どうしてそう……あっ」


 一瞬、驚愕するネネだったがよくよく考えてその理由を知る。

 三日前……コウとネネは二回、天安河を訪れている。

 一度目は“まち”に入るまでの道中……そして二回目はツクヨミと交戦している最中だ。


「他の神々の話しを聞くと、スサノヲを殴った後……天安河では高天原の神々が集まって俺の処遇を決めていたようだ。そして、その後に俺が脱走したと報を受け、その場で散ったらしい。そして、入れ替わるようにして俺とツクヨミがここに来た。あの時は激しい戦いをしていたから、その時に何かの拍子で壊してもおかしくは無い」


「……まぁ、金床に使うほどの大岩の堅石ですものね。普通は壊そうと思っても壊せないですよね……」


「ましてや、あの時……俺達は辺りなんか気にしていなかったからな。スサノヲがやったというより、そっちの方が真実味ある」


 自分で言って自分の首を締め、コウはそう結論付けると無言になった。

 ネネもなんて声を掛けたらいいのか分からず無言になる。

 見送られる際にアマテラスに「壊すな」と言われたばかりなのに、鏡を受け取るどころかその前の素材から壊したなんてとてもではないが言えない。

 風のなびく音と川のせせらぎが虚しく響く中、ネネは励ますように声を掛けた。


「ま、まぁ……鉱石はなんとかお詫び出来ましたし、この調子なら金床の岩石も見つかりますよ!」


「ありがとう……でも、難しいのはそこなんだがな」


 コウの言う通りである。

 河原にある石というのは上流から下流……すなわち下にいくにつれてどんどん小さくなり、脆くなっていく。

 それは川の水の流れにより石がどんどん削られていくからだ。

 すなわち、姿見の鏡に使うほどの大きさの岩石ともなれば必然的に川上の上流へ行かなくてはならなくなる。

 だが、そうなると今度はその岩石を運ぶまでが問題となるのだ。

 無事にイシコリドメの小屋近くまで運ぶことが出来れば良いのだが、万が一でも途中で壊れてしまったらまた始めからやり直しとなる。

 こういう場合、昨日のツクヨミのように岩を浮かすことが出来れば心配など無いが、彼女は夜の務めの為か朝はすこぶる苦手で早くに起きるといっても昼を跨いでからだ。

 ましてや、二日続けて手伝ってもらう訳にはいかない。


「……取り敢えず、見つけてから考えるか」


 現物が無いまま悩んでいても仕方ない、とコウは辺りを見渡しながら歩く。

 一歩一歩上流を上るにつれて戻る際の危険が増していくのを感じる。

 そんな中、コウは前方の方で何かを見つけ、足を止めた。


「ん? あれは―――」


 コウの見ている先を彼の袖の中からネネも見る。

 そこには首からぎょくの連なった首飾りを下げ、少しはねた短髪をした男神が川の中に入って何やら底を漁っていた。

 それを見たネネは口を閉ざし、コウの袖の奥へと隠れる。


「こんな誰もいない川の上流で何をやっているんだ? まぁ、少し声を掛けてみるか……」


 少しばかり警戒しながらも興味を持ったコウはその男神の元へと近付いていった。

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