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ジンダイ  作者: 吉田 将
第四章 万神アラハバキ
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友情

 炎の湖を逃れ、洞窟を脱したコウとネネはその入口に座り込み休息を取っていた。

 灼熱という慣れない環境にいた為か両者共に疲労の色は濃い。

 そんな中、少し休んで体力を僅かながらに戻したネネはコウの前へと進んだ。


「コウ様……申し訳ありません。これほどしか採ることが出来ませんでした」


 悲痛な面持ちで採ってき鉱石を差し出すネネにコウはそれを確認するよりも先に優しくネネの頭を撫でる。


「そんなこと言うな。お前は己の身を危険に晒してまで行ってくれたんだ。……無事で本当に良かった」


「コウ様……」


 潤んだ瞳を向ける彼女にコウは頷くと、彼はようやく彼女が差し出した鉱石を受け取った。

 鉱石は不思議なことにあれほど熱い炎の湖の岸辺にあったにも関わらず、ひんやりととても冷たい。

 ネネが採ってきた量は両の掌に収まる程の大きさであったが、それでも十分である。

 コウはそれを自前の袋に入れるとかいた汗を拭いながら立ち上がった。


「さて、それじゃあ戻るとするか。幸いまだ日も高い……タケミカヅチに玉鋼を渡し、アマテラスへ事の次第を伝えた後にまた家造りを始めよう」


「はい!」


 いつも通りのネネに戻ったことを確認したコウは彼女を袖の中に入れるとある事に気付いて思案した。


(さて……ここからどうやって降りるか……)


 眼下の崖を眺めながらそう心の中で呟く。

 足場にしていた岩場は崩れてしまい、もうほとんど無い。

 ネネの荒御魂を使い、滑空すれば安全に降りられるかも知れないがそうなると今度は彼女の姿が天津神達に見られる恐れがある。


(慎重に降りるしか無いか……)


 時間は掛かるがその方が安全である。

 コウは覚悟を決め、降りる為に身体を屈めた。

 けれども、その時……彼は何かを見つけた。

 何かが宙に浮いてこちらに向かって来る。

 それにコウは見覚えがあったが、口に出す前にその向かってくるものが彼に気付いた。


「あっ、いた! おーい、大丈夫?」


「ツクヨミ!」


 向かってきたものはツクヨミであった。

 彼女は薄く紫がかった銀色の髪を靡かせている。和御魂だ。

 彼女はコウのいる足場に着地すると彼に詰め寄ってきた。


「独りで行くなんてズルいじゃないか!」


「仕方無いだろう。務めなんだから……」


「それはそうだけど……」


「ところでどうしてここへ?」


「キミがこの山にある玉鋼石を採りに行ったってタケミカヅチから聞いてさ。どうせキミのことだ。無理して炎の湖まで行ったんだろう?」


「うっ……」


 どうして女とは勘が優れているのか……コウは返す言葉もなく詰まらせる。

 その様子を見たツクヨミは溜め息を吐いた。


「はぁ~……やっぱりね。じゃあボクにも後でその話し聞かせてよ?」


「分かった。ところで、お前が来てくれたのなら丁度良かった。俺を下まで連れて行ってくれないか?」


「やっぱり……詳しい話しも聞かずにこの山に入るからだよ。まぁ、それを見越してボクがこうして来たんだけどね。ほら」


 ツクヨミはそう言うとコウに片手を翳す。

 すると途端にコウの身体は軽くなり、雲にでもなったかのように浮き上がった。


「おぉ……」


「よし、それじゃあ行くよ」


 ツクヨミはそう告げると先にその場から飛び降りる。

 それを見たコウも臆することなく、その後に続いた。

 下から上へと昇る風がコウとツクヨミの身体を吹き付ける。

 だが、それとは裏腹に彼らは散る花弁の如く、ゆっくりと降りていた。

 その最中にツクヨミは天金山について簡単に補足をする。


「この山は全部が岩で出来ているからとても脆いんだ。その反面、雨風によって削られて新しい岩場が出来やすくなっている」


「そうなのか。じゃあ、次来る時は道が変わっているんだな?」


「そういうことになるね。ところで、炎の湖はどうだった?」


「あぁ、とても凄いものだった」


 そうして、降り立つまでの間……コウはツクヨミに自分達が体験した出来事を語った。

 ツクヨミはその話しを目を輝かせながら興味深い様子で聞く。

 そうして、ようやく山の入口に降り立った時……コウは和御魂を封じる彼女に向かって袋の中から玉鋼を取り出し、差し出した。


「ツクヨミ、ありがとう。これは礼だ」


「これって玉鋼石じゃないか。駄目だよ、タケミカヅチに渡すんだろう?」


「多めに採ってきたから心配するな。それに俺との戦いでお前の矛は壊れてしまっただろう? これはその時の詫びもある」


「そう……キミがそう言うなら、頂こうかな。ありがとう」


 ツクヨミは嬉しそうにコウから渡された玉鋼を受け取る。

 それを確認したコウは袋を片手に背負った。


「さて、じゃあタケミカヅチの所へ行くか」


 そうして、コウとツクヨミは高天原の“まち”へ向けて歩き出した。


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