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ジンダイ  作者: 吉田 将
第三章 高天原
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小屋作り

「すっかり遅くなっちゃったね……どうするの?」


「……取り敢えずは寝る場所の確保だな」


 アマテラスとの対面を終え、ツクヨミと再び合流したコウは彼女と共に天香具山目指して歩いていた。

 辺りは夕日も既に沈んで薄暗くなっている。

 建てるのならば早くしないと暗くなって身動きが取れなくなる。


「姉様との話しが少し聞こえてきたんだけど……もう家を作るんだって?」


「……正しくは家ではなく“小屋”だがな。なに、簡単なものだ」


 ツクヨミと話しながらコウは天香具山の麓まで辿り着く。

 そうして、彼らはぐるりと山の周囲を回るように歩き、やがてある場所で足を止めた。


「よし、ここだ」


「ここは―――」


 ツクヨミはそう言い掛けて辺りを見渡した。

 そこは天香具山の裏手にある岩場であった。

 岩場とはいえ、崖になっているという訳ではなくポッカリと小さな洞窟が一つあり、それ以外は森が山手側に広がり、洞窟周囲の平野には野が広がっているという状態だ。

 そして、洞窟の入り口付近にある岩場からは綺麗な清水が滲み出るように僅かばかり流れていた。


「ワカヒルメ達を探しに行く時に目に入って以来気になっていた場所だ。……この辺りに俺の家を建てる」


「えっ、正気?」


 コウの言葉にツクヨミは疑問の声を上げる。

 彼女が言うのも無理はなかった。

 洞窟は家として使うにはそこまで奥行きが無く小さい……しかもその周囲には岩場が点在しており地面は固く、井戸を掘ることも柱を建てる穴を空けることも難しい。

 井戸の代わりに岩場から清水は湧き出ているものの、滲み出るように湧き出ている為、汲み取るのにもそれなりに困難であろう。

 とてもじゃないが、家を建てる場所にはあまり向いていない。

 けれども、コウは言った。


「あぁ、正気だ。でも、俺だけじゃ少し時が掛かるからな。お前やネネにも手伝ってもらいたいが……」


「いや、ボクは別に構わないけど……止めといた方が良いと思うけどなぁ~」


「そうか、ありがとう。まぁ、見ていてくれ。中つ国で培ったものを見せてやるから……ネネ」


「はい、お呼びでしょうか?」


 コウの呼び掛けに反応して彼の袖の中に隠れていたネネが姿を現す。

 そんな彼女にコウは言った。


「この辺りから竹と枝、あと蔓を少しばかり採ってきてくれ」


「分かりました」


「ツクヨミはなるべく大きな葉を集めてくれ。そうだな……水を弾いてくれるフキの葉とかがあれば良いな」


「分かった。だけど、その間キミはどうするつもりだい?」


「俺は火を起こして、食料を取ってくる……ネネが戻ってきたら交代だ」


 こうして各々の役割が決まった後、コウ達はそれぞれに分かれて自分の成すべきことを行いに行った。

 そうして、辺りが完全に闇に包まれた頃……彼らは再び洞窟の前に集った。

 洞窟周囲にはコウが起こした火が至る所に灯されており、その場を照らしている。


「コウ様、集めて参りました」


「よし、じゃあ交代だ」


 木の実や果実、そして天香具山の畑から少しの野菜を貰って食事の準備をしていたコウはそこでネネと交代する。

 そして、自身は彼女の採ってきた竹や枝、蔓を手に取るとそれを組み合わせて結び始めた。


「ツクヨミ、悪いがここを押さえてくれ」


「はいはーい」


 葉を集めて戻ってきたツクヨミの手を借りながら丁寧に素早く竹や枝を蔓で結んだコウはそれを立てた。

 見たところ、小屋の骨組みのようだ。

 そして、予め地面に軽く空けた穴にその骨組みの簡単な柱を埋め込み固定した。


「さて、次はツクヨミが大量に採ってきてくれたこの葉を敷いて屋根にする」


「あ、それは屋根に使うんだね」


 葉を丁寧に重ね、作った骨組みの上に掛けながら所々に軽めに石を重し代わりに乗せていく……そうすることによってようやく簡単な小屋を作ることが出来た。


「完成だ」


「これまた随分と簡単な小屋だね」


「昔、北国にいる神に教えてもらったものでな。山で夜寝る際はこれの方が良いと教えられた。暫くはここを寝床にしてちゃんとした家を作るつもりだ」


「コウ様、ツクヨミ様。お食事が出来ましたよ」


 話している二柱にネネが声を掛ける。

 改めて思えば、コウは朝から何も食べていなかった。ツクヨミも昼から彼に付き合っていた為、ほとんど何も口にしていない。


「そういえば、何も食っていなかったな……」


「確かにね……じゃあ、早速頂こうか」


 二柱は揃ってネネの元に行き、焚き火を囲みながら談話に花を咲かせる。

 コウにとってはこの高天原に来てようやく訪れた平和な夜である。


「竹が少し余ったね」


「そうだな……あの岩から湧き出ている清水に使うか。上手くいけば井戸よりも簡単に水が手に入る」


「どうやって?」


「それは明日になってからの楽しみだ。それまで取っておけ」


 こうして暫く語り合った後、ツクヨミは夜の務めの為に彼らの元を離れた。

 コウはツクヨミを見送った後、ネネを先に床につかせて外で独り静かに今までを振り返りながら過ごす。

 高天原に来て様々な者達と出会い、助けられ、そしてアマテラスから天津神と万神として務めるよう命じられた。

 もはや中つ国にいた頃とは違い、自由にカグツチを探しながら放浪することは出来なくなったが、ここに来て確かな証拠を手に入れることが出来た。


(ここにいれば……奴に必ず会える! その為にも俺はここで天津神として務めながら、留まらなければならない)


 思いを巡らせながら、また明日から始まる万神としての務めを考えながらコウの平和な夜は静かに更けていった。


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