(人狼シリーズ) 肉、そして新たな一日へと
「な、ナニコレ……!?」
雪は驚いた表情で先程焼いた目の前の串に刺された焼けた肉を見つめる。
俺は、
「……何って、食事だが?」
と言うと、雪は、
「え!?
スゴい、こんなの初めて見た!」
と言いながら目をキラキラさせて目の前の串焼きを見つめた。
「あ~、やっぱり向こうとこっちの食事は違うか……。よし、俺の食い方見てろよ?」
と言ってその串を持ち、肉を串から口を使ってはずし食べる。
この世界ではもうほとんど手に入らない、久しぶりに食べた肉は、とても……、旨かった。
それを見た雪は俺と同じようにしようとするが……、
「これ大きすぎない!?」
……大人用のサイズに焼いたために、雪にはまだ少し大きかったようだ。
――……ふと、彼女の事を思い出す。
『何か食べればバッテリーの代わりになるんじゃないか?』
そう俺が聞いた時、彼女は、
『そうかもね。』
そう悲しげに微笑っていた。
――きっと、アンドロイドである彼女には、味が判らなかったし、 食べたいものも無かったのだろう。
俺は今座っている石の横に置かれた彼女の写真を見る。
……何時もと変わらない笑顔を浮かべる彼女、その写真の側には肉の串が置いてある。
――……もし、彼女がこれを食べたら、どんな反応をしたんだろうな。
ふと、そんな考えが過る。
「ねーぇ!、人狼さん?」
そんな雪の声で現実に戻った俺は、雪の為に肉を細かく切り分けてやった。
「……ん!?
美味しい!」
そんな満面の笑みを浮かべる雪を見る。
……彼女も、こんな反応をしたのだろうか?
そんな事をふと考えながら、俺は雪の頭を撫で、
「……だろ?」
と言いながらニヤリと笑った。
……………………
――その夜。
人狼は、眠っている雪の頭を撫でていた。
そして、空を見つめる。
今日は野宿だから、空を眺められる。
――あまりにも美しい、満点の星空。
……しかしこれは、人類が少なくなったから産まれた光景だ。
――……皮肉だな、そう人狼は苦笑する。
……そして同時に、この光景を彼女、スノーにも見せたいと思った。
『見てるわ。』
突然そんな声が聴こえ、あわてて人狼は声の主を見つめる。
――そこには、スノーが立っていた。
『……久し振り。』
そう彼女は言う。人狼は、
「……ゴメン。俺は君の事を、助けられなかった。」
そう彼女に言うと、彼女は、
『……謝ることは無いわ。
私は、貴方と少しだったけど生きられて、人間にしてくれて、幸せだったもの。
……貴方は、雪ちゃんを育ててあげて。』
そう言って、微笑んだ。
人狼は彼女の写真の前に置かれていた焼いた肉の串を彼女に渡し、
「……わかった。
後これ、食べれるか分からないけど、食べてみて。」
と言う、すると彼女はそれを口に入れて、
『……ええ、美味しい。」
……そう、言った。
…………………………
――「――……ハッ!?」
人狼は目を覚ました。
すぐ側には、相変わらず雪がスヤスヤと眠っている。
……スノーは―――居ない。
――……やけにハッキリとした夢を見たな。
そう人狼は心の中で思いながら、ふと彼女の写真を見る。
……写真の前の肉は、無くなっていた。
人狼はそれを少し驚いた顔で見つめ―――それから笑った。
そして立ち上がり、背伸びをする。
――人狼にとっての、新たな一日の始まりだった。
次回はどうするかね?