お見合い
「あとは若い人たちに任せるとしましょうか。」
こういう場ではお馴染みの、もはやステレオタイプとかしたセリフが仲人の口から出る。よそ行き用の顔で白々しく談笑していた親たちはそれを合図にして部屋を出て行った。後には見合い相手の女と俺だけが取り残される。
酷く内気らしくさっきから一言も喋ろうとしない。そのくせ、顔は化粧がものすごく派手で、どんな顔だかさっぱりわからない。もとから女は得意じゃないが、その中でも苦手なタイプだ。作られた顔や付け過ぎた香水は好きじゃない。
ため息を着きそうになるのを堪え、柔らかい笑みを浮かべた。ああ、早く終わらせて、あいつを探しに行きたい。
「改めて自己紹介をさせてください。私はレナート・フェルナンと申します。フェルナン家の4男です。どうぞよろしく。」
片膝をついて女の手を取る。香水くさいのを堪えてごく軽くくちづけた。上目遣いで女を見上げる。
これで大抵の奴は男女関係なく落ちる。効かなかったのはあいつくらいだ。
唯一俺の見かけに騙されなかった男。女みたいな顔をしてるくせして、辛辣で頭も良くて剣の腕は王都主催の剣術大会の青年の部で上位に入っていた。
女嫌いでどこか冷めた性格をしてるくせして笑い上戸だったり、ああ確か潔癖症なのに嫌いな奴でも怪我したら率先して手当てしてやってたっけ。
次々湧き上がってくる記憶に意識して歯止めをかける。
あいつ、どこに消えたんだ。
ある日突然いなくなるとか1発殴らないと気が済まない。俺だけじゃなくて他のやつもそう思っているらしく、それぞれであいつを探している。
正直こんなくだらない貴族の義務に付き合ってる暇なんてカケラもない。
微かに女の唇が動いた。
(よろしくするつもりはないくせに。)
ボソッと何か聞こえた。小さすぎて聞こえない。
「何かおっしゃりましたか?」
フルフルと女が首を振る。耳の後ろが真っ赤になっている。
ちょろいな。あと一押しだ。
そうすれば学院に戻って捜索に加われる。
「声を聞かせてはくれないのですか?酷い方だ。私はもう貴女の虜となっているのに。」
(嘘をつけ。嘘を。お前がそんな性格なものか。)
またなにか聞こえた。声が小さすぎて聞こえない。
無言で微笑み返す。通称キラキラスマイルーーこっ恥ずかしい通称はあいつに付けられたーーとりあえずこれを出しとけばいいだろう。無差別で他人を落とす仕草2つ目だ。
女は頬を染めてて俯く。
もう少しの辛抱だ。
「恥ずかしがることなんてありませんよ。私たちはいずれ夫婦になるのでしょう?ああ、それとも・・・私がお嫌いですか?」
グッと女の喉から変な音がなった。
「フッ・・・グッ・・ヒッ・・・アハハハハハ!!!ダメだ。苦し・・・・フフ、ハハッ笑える」
体をくの字に折り曲げて腹を抱え、大爆笑している。
・・・・なんで俺が笑われているんだ。
「なにかお気に障ることでもありましたか?」
声に少し不機嫌が混じる。
しまった。ここは感情を出していい場面じゃない。
しかし、女は俺の問いに答えず、そのまま笑い続けてしまいに咳き込んでいる。軽く10分は過ぎた後、ようやく収まったのかやっと返事をした。
「気に障ることね・・・たくさんあるさ。お前はそんな気持ち悪い性格じゃないし、第一女は嫌いだろう。滑稽で笑いしか誘わない。」
聞き覚えのあるハスキー声が、目の前の女の口から出てきた。
「は?なにを言って・・・・」
「わからないのか?」
女が女の髪の毛を引っ張る。スルッと取れたカツラの下からは見慣れた銀髪が顔を出す。備え付けの洗面器で分厚い化粧を落とした顔はまんま消えたあいつだった。
「久しぶりだな」
ニヤニヤッとさっきまでとは違う笑みを浮かべてあいつは笑う。
パチパチ瞬きをしても、軽く目をこすってみてもいなくならない。消えないという事実に呆然とした。
あり得ない。なんでここにいる?俺たちがどんな思いをして探し回ったと思ってるんだ、こいつは。どんだけ心配したと・・・・いや、まあ、それは後でいい。事情を聞く権利くらいはあるはずだ。
とりあえず殴ろう。
「おい」
「どうした?」
「1発殴らせろ。」
設定を少しだけ。
俺
→→人前では猫被りな女嫌い。友人だったあいつを探している所に親からお見合いの命令が出た。
女
→→俺の探しているあいつ。双子の兄と通う学校を交換して学院に入る。が、親にばれて呼び戻され、お見合いを受けさせられる。




