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異界の神格者  作者: 蓬家 瑚桃
異世界に避難訓練?
5/23

生きていると信じてる

とある午後の昼下がり…というような時間帯に感じる頃、まだ私たちはどこへ行くともなく、もりをさまよっていた。まぁ、北東方向?かもしれないところにあるかもしれない「泉」を目指して歩いてはいるんだけどね。



そんなとき、なんかちょっと肌寒いなと感じるひんやりとした風が吹いた。

「ちょ、ちょっと、…。」

なんか可愛らしい声とともにキョーちゃんが草むらの中に飛び込んだ。

「えっ?」突然のことでびっくりしたのだけど、とりあえず待ってみることにした。





すると、“じょぉ~”っと音がなった場所からキョーちゃんが恥ずかしそうに出てきた。

ピンっときた私は、うつむいてるキョーちゃんの傍に寄り添って「初、“女の子の放尿感”は、どーでした?」などと、どこぞのオヤジっぽくいたずらな質問をしてみた。

か、かぁー(#’_’#)っとさらに顔を赤くして、うつむいた。



かわいい。 男の子が女体化する小説は何度か読んでるが、まさかキョーちゃんがここまで「おんにゃのこ」な反応をするとは思わなかったので、さらにいじってみることにした。

「どーかなぁ? ねぇ、男のシンボルが無くなっちゃった感想は? 童貞だったんでしょ?それがなんとやら・・・」

「・・・う、うっさいわねぇ。 ちょっとは気遣いなさいよ。それにあんただって男を知らないはずでしょ?」


しっかりとデレながら反抗してくるあたり、キョーちゃんなんだなぁと思う。

「ふふ、残念でした。私は処女じゃないもーん。」

「えっ、そ、そんなわけ、って…あぁ最近の子はそういうの早いんだっけ。はぁ。」

「そ。去年ね、おかーさんたちの行方不明事件のときに、おかーさんの再従兄弟にあたる陽兄ちゃんが慰めに来て、そんときにやっちゃった。てへ。」

そうなのだ。それまでは、私もお子様だったわけで、まさか両親とそれぞれの祖父母が私のせいでいなくなるとは、思ってもいなかった。





たまたま私が商店街のくじ引きで当てた、「7泊9日クルージングで行く太平洋周回の旅」を参加人数と学校を休む訳にはいかないとの理由で、家族にプレゼントしたのだけど。

その旅行の途中で、乗り換えた船が沈没して、そんでうちの家族だけ行方不明に。


うちの家族だけが居ないというのがわかったのは、ツアーが終わってからだ。たまたま添乗員が新人だったために、本来ならこういう緊急時には人数確認をすることが義務付けられているはずなのに、新人だったことでパニックになり、「いない人はいませんかー」的なその場確認のみで旅行を続行。ほかの乗客たちもうちの家族のことよりも自分たちの安否にしか意識が向かなかったらしい。




不幸中の幸いにして、遺骨や遺留品は一切出て来なかった。

ただ、うちの家族がいないとわかったのは、帰国時点でトランクが残っていたことで、忘れて帰宅していないか?と旅行会社から連絡があったからだ。



その後は警察が事情聴取やら返されたトランクの確認やらでたくさんきて、そして、各種雑誌記者やテレビの報道やらと、私は一躍「時の人」となってしまった。

その時のインタビューは、「とにかく帰ってきて欲しいです。単に行方がわからないだけなんです。死んだなんて思っていませんから葬式も上げません。」と泣きじゃくりながら答えた。まるで記者会見でもするかのように。







まぁ、半分以上は演技なのだよ、ちょうどテレビ報道が来る前日のことだ。

なんとなくだが、学校にいく気分になれなくて家にいると、旅行会社の人が詫びに来た。

「このたびは大変申し訳なく思います。少ないかもしれないが今後の生活費として使ってください。一応、会社の弔辞規定にある限度を越えて付加もして、役員会議の全員一致で了承されたんだ。どうかこれで穏便に願います。」そう言って分厚い封筒を3つ置いて帰っていった。

私は「はぁ。はぃ。」と声をかすらせながら答えるしかなかった。




13時過ぎには保険会社の方と弁護士の方などが大勢来て、「警察の結果次第になるが…」と前置きしてから何やらわけわかんない話が始まった。

要は、両親と父方の祖父母と母方の祖父母の生命保険やら何やらの受取人が私になっていて、その受取りの手続らしい。

たとえ、私が「まだ死んだという確証がないのに」と泣いたところで、法律上の判定によって対応するとのこと。受取用の口座として私のお小遣い用に作っておいた豊北銀行の総合口座を指定した。事務手続きをしながらも一緒に来ていた弁護士のお姉さんが「何かあったら言ってね」と優しく声をかけてくれた。




15時には、役所の方が来られて、保険会社の方たちのような対応をしていった。

17時には、校長先生と学年主任の先生と担任であるキョーちゃんが来て、「今週1週間は、忌引きとして対応するから、落ち着いてから登校しなさい。と声をかけてくれた。

キョーちゃんは、「とりあえず食うもん買ってきたから栄養だけは取るようにな。」と声をかけ、私の好きな弁当とケーキ類と1.5リットルの炭酸ジュースを帰ってきてくれた。

わたしは、その心遣いが嬉しかった。


そしてキョーちゃんが帰り際に「テレビ報道とか来るだろうから、そんときは思いっきり猫かぶって、悲劇のヒロインでもあるかのように大げさに言っとけ!」といった。







まぁなるようにしかならないなと思った翌日の朝、ピンポーンと呼び鈴がなったと思って窓の外を見ると、複数社のテレビカメラがうちの前に陣取って、私が出てくるのを今か今かと待っているようだった。それを寝ぼけ眼で2階の窓からカーテン越しに見てると気づかれたらしく外が騒然となった。



まぁ、近所迷惑になっても悪いので、早々に高校の制服に着替えて玄関を出たところで、取材が始まった。

キョーちゃんの予想通りだったから、それらしく泣きながら答えたのだが、相当キャラが際立ったのか、それからしばらくは私の家の映像がニュースを独占していたようだ。


なかには、「遺産目当てで行かせたんじゃね?」とか心無い発言もあったが、なによりも嫌だったのは「行方不明」や「6人一斉神かくしか!」ではなく、「沈没による死亡、6人の遺体が浮上して来ない理由は?」や「沈没の原因と6人の謎の死」などと、あからさまに死亡説で賑わうワイドショーだった。

私はただ一人家族がまだどこかで生きているような気でいたのだった。




それからしばらくは、買い物をするたびに遠目からでもわかるように、囁かれているような感じを受けつつも登校し、下校時には近所のスーパーに寄って弁当を買って帰る日々になっていった。


毎日、夕食をスーパーの弁当にしているうちにレジのお姉さんと仲良くなったりもした。

別に自炊というか料理をしないわけではない。ただ、まぁ、自分で作ると家族のことを思い出すし、そのせいで憂鬱な気持ちになる自分を発見してからは、専ら弁当である。


正直、さみしいのよ。だから、学校にいく。

学校に入れば友人たちが暖かく迎えてくれるし、キョーちゃんも心配してくれるしね。




そして、テレビにしてもそれまでは、母とドラマを欠かさず見ていたのだけど、見る気しなくなったばかりか最近は電源さえも入れていないため、テレビ自体が雪のように白いホコリに埋もれていくさまを、呆然と眺めていた。







その6ヶ月後、「旅行会社から忘れ物として届いた荷物にも、船の残骸からも何の手がかりがない」と警察から連絡が入り、家族たちの捜索は打ち切られ、保険会社や役所からは「死亡に関しての通知」とともに、様々なものが私の所有物となった。


・6人分の保険金(じーちゃんたちの保険、パネェ。さすが経営者!)

・今住んでいる家(なにげに豪邸らしい)

・父方の祖父母の家と祖父の会社の経営権や土地権利書

・母方の祖父母の家と田畑(〇〇ドーム2つ分)と山3つの土地権利書

・父の会社の経営権と提携企業の父名義の株券(筆頭株主らしい)

そのほか、唖然とするほどの目録ずらり・・・・・・




うん。時価がいくらかわからないけど、働かなくても食べていけるくらいのお金はあるようだし、会社の経営権は父の方は懇意にしている父の部下に引き継ぐとして、株券だけは持っておこう。

んで、祖父の会社は、ちょうどそこに母の再従兄弟の陽兄ちゃんこと、熊澤陽一さんが務めていたから、譲渡手続きしておいたし、もしも私に何かあった時の相続者として、各種保険の方も登録しておいた。


まぁ、まさかほんとに私までもあそこからいなくなるとは思っていなかったんだけどね。

そして、その手続きのために我が家に来た陽兄ちゃんに一晩慰めてもらったのさ。


はじめてだったけど、やはり陽兄ちゃんはやさしかった。


つぎの日は昼ごろまで、陽兄ちゃんの温もりに甘えていた。

ちなみに、ちゃんと紳士でいてくれたんだ。


ただ、手も出さないから却って自分に魅力がないんじゃないかと落ち込んだりもしたのは内緒だけどね。





そんなことを、掻い摘んで説明してたのだけど、気付いたらキョーちゃんは号泣。

そして、「うんうん。大変だったんだね。」って私のことをホント気遣ってくれていたんだってこの時ほど思ったことはなかった。

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