宝船は飛んで行く
今日も平和だにゃ~って思いながら縁側でごろごろしている。
キョーちゃんはというと、さすが元工業の先生だけあって、私が思い付かないようなモノを作り出している。
今日も・・・・・・。
さすが自称エンジニアは・・・
「自称じゃない!列記としたエンジニアなの!」
と反論してくる。
思考を読めるのかなぁキョーちゃん。
やっぱ私とは違うなぁっと考えながら庭で作業しているキョーちゃんを眺めている。
しばらくして・・・
「できたぁ~!!。ナミ、ナ~ミ! 見てよナミィ~、見にきてよぉ~!」
公園の砂場で小さな子供たちが、手や服を泥だらけにしながら泥団子を作って、近くでその様子を眺めながら見守っている母親に、自身の渾身の出来栄えを誉めてもらおうとする無邪気な子供を連想させるような、そんな雰囲気を漂わせながら、キョーちゃんは私の袖をぎゅっとつかんで作業場へと連れて行こうとする。
「ちょ、ちょっとまって、キョーちゃん。何作ってたの?」
強引にでも連れて行こうとするその手を振り払って、ひとまず落ち着かせることにする。
ったく、さすが変人ってとこかな?熱中していると周りが見えなくなるのに、自分の悪口には敏感に反応する。
加えて自分の価値観のズレにまったく気づいてないだけでなくそれを押し付けようとする。
やはり変人というか偏屈だなぁと思うのは私だけだろうか。
そんな私の思いに気づくことなく、キョーちゃんは作品発表会を続けて行く。
「んとね、今回作ってのは、空とぶ帆船です~。どんどん、パフパフ~!」
あぁ、自分で効果音までいいやがったよ、このお姉さま。
毎度のことながらと呆れるのは簡単なので、とりあえず、笑顔のまま聞くことにした。
ちなみに、今までにキョーちゃんが作ったモノを列挙すると
“雨水から飲水精製機”
“熱換気循環型暖房機”
“熱換気循環型冷房機”
“熱換気循環型除湿機”
“湯沸し機”
“横穴掘削機”
“縦穴掘削機”となる。
最後の2つはどうも似てるんだけど、意味合いが異なると言うので気にするのを止めた。
それにまだ動かしているのを見たことがない。ほんとに動くんだろうかって思う。
でもね、鑑定すると面白いんだよコレ。
すべての種別に【神機】って書いて有るんだよね。
やっぱうちらが神格者だからみたい。
普通は“神器”ってなるはずだよね。
でも「“神器”は“神に捧げる器”って意味で、“神が創った機械”だから“神機”で良いと思うんだ。」とキョーちゃんは言ってた。
で、キョーちゃんは今回、“空とぶ帆船”つまり、飛行船らしきモノを作ったようです。
でも、今に有るのは以前作って見せてくれた“浮かぶ模型”が有るだけだったので、まぁ、まだまだ先なんだなと思ったのですが、連れて行かれたのは庭。
たしかにキョーちゃんは庭で何かを作っていましたよ。
で、そこに行くと有るのは居間に有るのと同じようだけどサイズ的に3倍くらい大きめで、さらにあちこちに意匠が組み込まれえたものが置いてありました。
その、庭にぷかぷか浮いてる「きれいな帆船」をツンツンと人差し指でつつきながら
「ねぇ、これって人乗れないよね?」って聞いたら・・・
「見てて、大きくなるから。そして、危ないからちょっと離れてね。」
と言って、徐に長いコードのようなモノのついたラジコンカーのリモコンのようなものを取り出しました。
私は慌ててその場から離脱。
もしかしてと思いながらさっきまで居た場所を見てみると、浮いている帆船の真下に“丸く木質のモノで縁取りされた鏡のような円盤状のシート”とそれにつながるコードのようなものを見つけました。
そして、それを眺めていると一瞬“ピカッ”とその鏡らしきものが光ったと思いました。
次の瞬間、とてつもなくでかい帆船が空に浮かんでいました。
まさか、某青狸の未来の拡大懐中電灯もどきを作っていたことにも驚きでした。
船よりも先に、リモコンと鏡について聞いてみると原案はやはり秘密道具的なアレだったけど、原理は魔法でした。
いろいろ実験しているうちに巨大化の魔法ができたのだとか。
たしかに、ゲーム時代にそんなアイテムがありましたし、逆に小さくするのもあったので、そこから調べて作り上げたとは・・・。
もうついていくのをあきらめました。
だって、 わかんないもん。
「やっぱ、キョーちゃんって天才だね。すごぉ~い!」
ってほめると、大抵デレるのですが、なぜか今回だけは違っていて・・・
「べ、べつにアンタだけのために作ったってわけじゃぬぁいんですからね。そ、こ、これは、私も使うんだから。その点勘違いしないでよね。」
・・・・・ま、まさに、王道とも言うべきツンデレ的解答が還ってくるとは思いもしなかった。そして、やや顔を桃色に染めながら俯くので、逆に食べてしまいたくなる気持ちを抑えるのがやっとでした。って、わたしまで毒されてるよぉ~。
そして、ふと思ったことを口にしてみた。
「ねぇキョーちゃん、あれ、どうやって乗り込むの?」と。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「わすれてたぁ~!!!」そう叫びながら、キョーちゃんは倒れました。
やっぱりどこか抜けてるキョーちゃんでした。
そして、そよ風が吹いてきたので上を見上げると、上空はさらに強い風が吹いているようで、帆をぴんと張った帆船が悠々と雲海を進む姿が見えました。
「ねぇ、あれ、早くしないとどこか行っちゃうよ?」
いまだに倒れているキョーちゃんをつつきながら聞いてみると、
「乗り込む手立てがないのにどうやって止めるのさ。戻ってきたらラッキーと思ってそのまま放置するよ。ボクはもう疲れた。」
そう言い残して、縁側で寝てしまいました。
はたして、戻ってくるのでしょうか・・・?
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翌日王都では、上空を優雅に雲海を進む、帆に「宝」と書かれた帆船に目を奪われ感動した者が多かった。
そして、目の良い商人たちは、帆船のふちに描かれた“七福神”を見て、
「新年早々、縁起の良いものが見れた。今年も商売がんばるぞぉ!」
と士気を高めるのだった。
この日を境に、城下町はさらに活気付いたと言う。




