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異界の神格者  作者: 蓬家 瑚桃
亜空間世界「シュスベークア」
14/23

王宮も大騒動?

その頃王宮では、やはりと言わざるをえない状況となっていた。というか、騒いでいるのは保身しか考えていない貴族たちばかりであった。そう、いつまでもいつまでも、ガヤガヤ、ガヤガヤとココが王の居られる玉座の間だというのに、ただひたすら自分たちの保身のことについて議論するだけであって、公国のことや民のことなど一切気にしないような、そんな感じの議論を、ただの平行線でしか無いつまらない議論を、続けていた。



敢えて言おう、ココは玉座の間だ。部屋の主たる第38代ベルスフィア公国 公王 グラネスト・ロイ・ベルスフィアが、とうの昔から玉座に座っている。この騒然と騒がしい部屋の中で一番偉い立場であるにもかかわらず、その存在を忘れているかのようにいつまでも騒がしい貴族どもに呆れつつ、王は自らの気配を空気のようにわざと殺して、貴族たちの宣う姿を眺めていた。

“まったく、よくやるよ。俺のことを忘れるどころか、視界に入っている奴さえ、無関心にただしゃべる。ったく、この使えない奴らを、どう料理すればうまく首にできるのだろうか。”と心の声が聞こえてくるぐらい、王の呆れている表情が、入口の門の隙間から見えるほどであった。ホント貴族の上の方はナニを考えてるんだか。



と、そこへ後ろから肩を叩かれ振り返ると、僕の従者の一人であるグイン・ケリートが何やら情報を持ってきたらしいので、玉座の間の前から自室のある第2後宮へとやってきた。

もう気付いてるかもしれないけど、僕は第2王子として生を受けた。名をセレスト・フィン・ベルスフィアという。


「どうしたんだい?グイン。何かつかめたか?」

「そのことで、少々相談があります。」

普段なら、すぐに用件を言ってくるグインには珍しく、一呼吸を置いてから話し始めた。

「遺跡などを探しましたが、それらしき形跡はありませんでした。また、我ら近衛隠密隊の中でもサーチ能力の高いもので王都周辺を探しましたが、反応はありませんでした。」

「そうか、王都周辺じゃないか。」

「つきましては、旧王都ジェルガイアへと捜索範囲を広めたいのですが・・・」

「まて、それは待つのだ。もうあそこは、我が国ではないのだ。軽々しくも外交問題になりかねない行為は慎まなければならない。父王様に相談して許可が降りるまでは、近隣諸国に悟られぬように対応するんだ。」

「御意。では、操作範囲は国境程度までとし、入念に捜査し直します。」

「よろしく頼む。」

「はっ。」

グインはそよ風のように、すーっと消えた。まぁ、あれだ、忍者と思えばいいんだと、自分を納得させる王子であった。



「とはいっても、あのアナウンスは全世界ネットなんだよねぇ。どうしようかぁ」

そう、セレストも転生者。また、王も転生者。ただ、セレストにとって気がかりなのは、王としてこの世界に来たのが、地球での双子の兄だったのだ。互いの過去というか前世について語り合った日ほど、セレストは激高してはいない。


あの時だけはひどかった。加えて驚愕の事実としてもたらされたのが、第1王子であるアルカス・ティア・ベルスフィアが元姉だったのだから。元来、王も第1王子も、リアルだとかネトゲだとか転生だとかというその辺の事情には疎い。


たまたま、兄弟揃ってゲーム出来る環境が揃ったので、3人一緒に初めてログインしたその日にこの世界へと飛ばされた。はずだったが、転生の関係上、なぜか時間的誤差が生じてしまい、まぁ、元姉とは兄弟だが元兄の子として転生するとは思はなかった。

その事実を知った日、セレストは混乱ではなく荒れた。ある意味戻れないという事実と、元姉による同性愛的なスキンシップ攻撃に耐えかねたからである。


そんな日々を送る中で、公国は何度か侵略を受けている。ただし、セレストが生を受け10歳になる頃には頭角を現して、軍事面において才能の芽を輝かせていったおかげで、軍備の見直しが図られ、逆に領土を広げつあるようになっていった。

ただ自身だけが危機管理に秀でているがために、忠臣の信頼を受け近衛軍の総帥として軍事面でこの国を支えているのだ。王やアルカスには任せられないという決意で知恵を絞っていくのであった。



そんな時、アルカスは、街で奇妙な薬品を見つけ出す。よくゲームではたまに見かける一品で、男性キャラでないとクリアできないクエストや、その逆とかがある場合に、オフィシャルアイテムとして、課金することによって得られる一種の「性転換薬」である。

それを、アルカスはどんな手段で手に入れたのかは不明だが、王位は弟が継げばいいやと考え、日頃から王にも話をつけていたため、そのアイテムを手に入れるやいなや、ごくんと飲み干してしまった。



よくあるゲームの場合は、一瞬で効果が現れて性が変わったりする。そして特に副作用とかがないのが定番であったが、あくまでもこの世界はゲームに似た世界であって、現実世界である。そうやすやすと性別が変わるわけがない。アルカスはその瓶の中身を飲み干すとその場に倒れ、後宮は一時騒然となるのであった。


アルカスの奇行を聞いたセレストは、「あぁ、とりあえず寝かせといて。何とかするから」とすこし気だるそうに答えつつも、アルカスの寝かされている部屋へと向かうのだった。



倒れたあと、アルカスは目を覚ますが、激痛に目を覚ます。そりゃぁ体の構造が一気に変わろうとしているのだから当たり前で、最初に痛み出したのは足の骨。アルカスの身長は190cmと長身であるが公国民女性の平均身長は160cmであるため30cmも差がある。少なくとも20cmは縮むのだから痛くないはずがない。加えて、筋肉と筋の伸縮や生殖器の変換で、全身を炎の中に包まれたかのような激痛が襲う。



様子を見に来たセレストは、案の定の光景を見て「水風呂を用意して。」と近くでオロオロしていた侍女に指示を飛ばす。そして、心配になって見に来た母上様にも事情を話した。

「そう。やっぱりそうなちゃったのね。あの子、昔から自分の体のことがキライで剣で切ろうとさえしたこともあったのよ。そのときには、切ったらもし女性化しても子ども産めなくなるんじゃないかしら?といって落ち着かせたものよ」という。

「あの、母上様も、その、・・・」

「ん?あら、そういえば、貴女には話していなかったわね。そうよ、外から来た人間よ。でもね、転移者なのよ。それもTSの。」

「へ?、ってことは、??」

「そういうこと、向こうの世界では男の子だったんだけど、男の娘でもあったのよ。女の子になりたかった男の娘だったから、こっちに来て女の子になって、そして、あの人と結ばれて、あなた達を生むことができて、私は今すごく幸せなのよ。」

「そ、そうなんですか・・・」

反応に困った。あんなに優しく僕らに愛情を注いでくれた母上様が、別の世界とはいえ元男だったことにショックを隠せないでいた。

「あらあら、あなた達を生んだのは他のだれでもない私なのよ。お腹を痛めても産みたいと思って頑張ったのに、そんな顔されちゃうと悲しいな。元気をだしてくれる?今はそれよりもアルカスのことよ。いえ、もう“アレスティアちゃん”と呼ぶべきかしら。」

「え?母上様はこうなることを予見して・・・というか、もしかしてあの薬を仕入れたのは母上様なのですか?」

「あら、もうバレちゃうなんて、ホント頭がイイ子ってある意味怖いわね。悪いことできないじゃない。あとは、よろしくね。」




母上様は“オホホホ・・・”と微笑みながら自室へと戻られた。

「やれやれ、それじゃぁ、“アレスティア姉様”のために少しでも痛みが和らぐように動きますか。はぁ。っていうか、ほんとに僕が後継者になるなんて・・・」

まぁ、兄が姉になるのではなく、兄になってしまった人が姉として戻ってくるという方が正しいのかもしれない。

そんな考えをしながら侍女に手伝ってもらいながら兄から姉に変わりつつある微妙に膨らみかけたからだをシーツでくるんで、先程、侍女に用意させた水風呂にシーツごとそれを投げ入れた。


どっぼーん。


まぁ、水風呂というか、深さが1Mくらいあるから微妙に池みたいなんだけど、ソコへ投げ入れて数秒後、ざっば~ん と水しぶきが上がり、ふくよかな胸をぷるんとさせながら全裸で仁王立ちでこちらを睨んできた。

「殺きですか?貴方って人は。」

「あの、姉貴?服着て欲しいかな?自慢のお胸が以前よりも大きいのはわかるけど、そう、押さえつけられると困るんだよね。いろいろと。」

そう言うと、アレスティア姉様は、顔を真赤にしながら脱兎のごとく走り去っていった。



これで昔のような日々が送れるのかと考えながら、姉となったモノが落としていったギルドカードの性別欄も変化していることに気づきながらも、備考欄と称号欄にいつの間にか増えていた「異界の性転神」というところを見つけ、目が点になりながらセレストは思考の海に落ちていくのだった。

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