世界と桃殿
世界の説明と・・・。
亜空間世界「シュスベークア」
ここは、あらゆる銀河に散らばった、地球などを含む科学の発展により栄えた惑星や、魔法の発展により栄えた惑星、魔法と科学の両方が中和するように発展した惑星の、外宇宙とも狭間とも称される場所に存在する。いわゆる亜空間である。
その亜空間の中に作られた世界である。生死の輪廻を司り、輪廻の動きを潤滑にしてゆくために設けられた。生と死の因果を断ち切るのではなく、不具合が起きた時の一時的な仮置き場として作られたのが始まりであった。しかし、幾星霜と時を重ねていくうちに、この世界に導かれたもの同士によって、この世界における新たな生命が芽生えることとなる。
しかし、そもそもが輪廻の調整弁とも言える場所である。
生まれゆくあらたなる生命は、まっさらな命だけではなかったのだ。通常世界からの来訪者が魂のみとなって訪れた時、転生したのが、この世界でのこどもたちに紛れていたのであった。
転生者の多くは、おとぎ話で語られるがごとく、前世の記憶を持って生まれてきたのである。
しかし、その中にもさらに例外が存在した。この世界で生を全うしたものが、その記憶を持って再びこの世界で生を受ける現象が見られ始めた。なかには、死んだはずの者たちが、神殿と呼ばれる泉に蘇るという現象さえも起きて、一時期混乱が世界を飲み込んだ。
そして、誰かが言った。「まるでゲームのようだ。」「まさか、死に戻りか?」と。
故に、この世界の本質は、ゲーム世界のように死の概念がない場所でもある。
そうして幾星霜と時が経ち、ときたま特殊な力を持った者たちが誘われてくることもあった。
そいいう時には、【世界管理機構】というゲーム世界のゲームマネジャーのごとく影で暗躍する何かが、“システムメッセージ”を一斉に放送し、世界システムの有り様を調整していくのだ。
この世界システムの影響を受けるのは「転移者」「転生者」だけで、あとの者たちには影響はない。
この時みな一様に「ぼーー。」っとするので、世間的には“集団風邪”として認識されていくのであった。
そんな亜空間「シュスベークア」には、大小様々な惑星がある。その中でも人類などの生命が暮らして行ける星は、主惑星「シュスベークア」とその衛生「リンドガンド」と「ゲルスタ」、近隣にある惑星「ルクセント」「アルモネカ」「ドミアスケ」「ガルジン」の7つの星であった。この他には、人工的な衛星として「コルモア」「グラスマ」などがある。
これらの星々を移動するためには幾つかの手段が必要とされるが、代表的なのが主惑星「シュスベークア」の大陸「ベルスウィンド」に本拠地を置く“桃殿”という施設が管理する《ゲート》と呼ばれる仕組みである。
コレを利用するためには資金が必要だが、その他の制限が一切不要なため、資金的余裕のある者達からは絶大な信頼を得ている。「安心・安全・ひとっ飛び」だからである。
別に高いわけではない。価格としては、惑星間シャトルと比べると、庶民的とも言えるのだが、その資金を稼ぐためには、桃殿の運営するカジノで儲けないといけなかったりする。
もしも、資金が底をついた場合は、桃殿が桃殿と言われる所以である「遊郭」でご奉仕しないといけない仕組みとなっている。まぁ、それを嫌うあまりに惑星間移動できないというものも居るが、別に普通に生活するのには移動しなくても困らないので、庶民は近寄らない場所とも言える。
その、桃殿の表の顔は、実は銀行だったりする。
“桃殿はお金が集まるところ”、故に世界での資金の流れを調整する役目も担っているのである。
冒険者ギルド・魔導師ギルド・生産師ギルド・流通師ギルド・商業者ギルド・福祉師ギルドという各所方面に至る、あらゆる仕事に発生する労働者の賃金やギルド運営資金などを支えているのも桃殿だったりするのだ。
ある日、桃殿のある一室では、「ぼーっと病が発生!」という号外新聞に目を通しながら、自身も体験した今朝のシステムアナウンスについて考えていた。
コンコン。
「入れ。」
ドアを開けて秘書のメイリス・プルカーという女性が入ってきた。
「あの、ダルカー様?グインド・ダルカー様?及びでしょうか?」
メイリスに“ダルカー様”と呼ばれた青年、桃殿本店を取り仕切る常務取締役でもある彼が、新聞から目をメイリスに向けて質問した。
「たしか、君も転生組だったよね?」
「はい。あー、そうですね、今朝のですよね。」
「そうだ。で、どう思う?」
「えと、どう思うというのは・・・?」
「許す。思うままに、申してみよ。」
「は、はい、あれですね、びっくりしました。」
「うん。俺もびっくりした。それで?」
「それで、何でしたっけ?み、巫女神様と騎士神様でしたっけ?いままで、元勇者のチート崩れの少女だとか、元覇王で無力となったじいさまだとか、元魔神でしゃべる子犬だとか、元幼女のような魔王で魔力の失くなった青年とか、いろいろいましたけど、初めてですよね神格者って。能力あるまま来るとかどんだけ優遇されてるんすかみたいな・・・」
ギロッ
「す、すいません。しゃべりすぎました。」女性はシュンとなって一歩下がる。
「いや、いい。ホントのことだしな。」
そう、この青年こそ、某魔法発展系惑星で幼女でありながら魔王として君臨していたものだったりする。魔力はなくなっても知識や知能、覇気は健在である。
いや、覇気だけは以前より増したようである。
「だが、気にするべきはそれだけではない。たしか、“「ベルスウィンド大陸」全土の土地管理権利書とシュスベークアの衛星「リンドガンド」ならびに、シュスベークアの近隣惑星「ルクセント」「アルモネカ」の惑星管理権利書をお持ち”と言っていた。つまり、この大陸のことだよ。昔から王政が行われており、神殿に認められた王がこの土地の支配者であったはずだ。しかし、今回のことで、王宮が荒れるかもしれない。」
「た、たしかに。“王様が管理しているだけ”ってことになりますもんね。」
一瞬、“静寂が室内を支配した”かのような静けさが二人を包み込む。
「メイリス、この話は外で話してはいけないよ。万が一にも、もし憲兵に聞かれでもしたら・・・」
「わ、わわわわ・・・・・・・・・。」
「大丈夫、安心して。ここは、桃殿の中でも特に重要な機密室。その中でも一番防音の効いた部屋だからね。でも、君の発言もアナウンスがもたらした情報も、どちらも問題なのは変わらないけどね。さて、王宮はどう対応するのやら。あぁ、そういえば、アナウンスの最後に“拝礼をおすすめします。”とあったな。探してみるのもいいかもしれない。その神格者が自ら建てたという神殿とやらを。」
青年は、そんなことを呟きながら、窓の外の王宮を眺めつつ、市井の者達の動きに気をつけながら、独自に動き出すのだった。




