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異界の神格者  作者: 蓬家 瑚桃
プロローグ
1/23

来訪者の末裔

ここに創世神話にも記されていない、不思議な一族の歴史をまとめた一冊の書物がある。

「江波家録相伝書」

門外不出のそれは、代々一族を影から支える者たちによって、加筆され続けてきたという。

これは、その逸話に基づく事実に隠された、謎によって人生を狂わされた一人の少女の物語である。







江波家の歴史は深く、創世記にも恐れられた一派の末裔である。

まれに表の歴史に出てくるも、〇〇文明と言われる建造物が残っている程度で、その歴史をたどることがないように厳重に隠されてきた。


江波をローマ字で表記すると[Enami]これは、[Enemy]を元に捩り合わされたもので、外宇宙からの侵略者であったかのような資料も残されていることから、何らかの知的文明を持った惑星からの来訪者ではないかと推測されている。



その末裔である江波家は、昔から子沢山であり、子孫繁栄が根強い日本においてある意味ステータスのような存在でもあった。これは、単に子孫繁栄のためだけではなく、侵略行為の一環ではと揶揄する者もいたが、それを覆す出来事が数代前から遺伝的に発生していた。いわゆる『忌み子』である。その子どもが悪いわけではなく、先祖返りとも言うべき何らかの能力を発揮するのだ。



あるものは人魚のように変身できたり、あるものは猫へと変わってしまったり、またあるものは女郎蜘蛛となり親類を食い殺してなお、子を成そうとする者もいた。

共通していたのは皆、女性であるということ。

そして、発育段階において、常人を遥かに凌駕する知識欲と身体能力を保持していたのである。そのうち、代を重ねるうちにパタリと忌み子が生まれなくなった。

それが、早期出産行為である。べつに早生まれが良いとかではない。その女娘が二十になる前に婚姻・出産すれば、良いことが長年の研鑽でわかったのである。



しかし、それも何故かたまに効果がない時があった。

これはまだ何も解かってはいない。これ以上は現代では人権無視として大きな騒ぎになりかねないからである。

いくら古より権力の中心的存在であっても、世間の風潮までは操作できないでいた。




そんなある時、不思議な現象が起きたのである。

江波家の老夫婦と内田家の老夫婦、そしてそれぞれの子に当たる若夫婦が、親族が一堂に会する場で「我々は、神の眷属である。」と名乗った。

周りにいた親族たちは、気が触れたのかと思い、近寄ろうとするも光の壁に立ち塞がれて、それこそ手も足も出なかったのである。

そして、「数年後、我らの子として忌み子が生まれる。梨華と名付け育てていく。」という。



まさに予言であった。

「梨華が十六の年に、我らは事故に見せかけて、この世から消える。その翌年には、梨華も友を引き連れてこの地より彼の地へと旅立つであろう。汝らには迷惑をかけぬようにするゆえ、しばし、見守るが良い。」




予言は終わったかのように思えたが、少し間をおいて続いた。

「汝ら、江波の者は、我らの大事な末裔だ。我らは創造神の眷属にして、異界の神の一柱なり。我らの目的は、唯一つ。後継になりうる神を育てること。ようやく願いが成就される。しばし我らの願いが成就する時まで、我らを助けよ。さすれば、未来永劫守護しよう。」




6人の体から光が消え、バタリと倒れた。

慌てて介抱すると、意識の混濁が見られ、体力も消耗しているようであった。

「奇跡」の一言に尽きる光景を見た親族一同は、件の6人に対し厳重に対応しつつも、生まれる子に対して、万全の体制で臨めるよう各方面の責任者を決めていった。






ある年の8月10日「梨華」の誕生である。

時を同じくして、江波銀行には「梨華」名義の口座に10兆円の入金があったという。








数年後、6人が失踪する旅行に出発する日の前夜には、総本家を訪れて「神の宣託が行われる。」と一言だけ残して、旅立っていった。


郵便受けには「梨華には話さないでください。お願いします。来夏」という、梨華の母である来夏による直筆の手紙が残されていたという。






そして、「神と名乗る者の宣託」が実行されたのだった。


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